労働安全衛生法 とは
OBC360°用語集
労働安全衛生法とは、企業が労働災害防止のための措置を徹底し、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を行うことを目的として定められた法律です。元は労働基準法第5条で「安全及び衛生」として規定されていた内容でしたが、1972年(昭和47年)に分離、独立して制定されました。
企業は、従業員の安全と健康を確保することが責務とされています。その手段として、以下3つの対策が規定されています。
(1)労働災害の防止のための危害防止基準の確立
- 従業員の危険または健康障害の防止
- 機械、危険物や有害物等の製造や取り扱いにかかる危険防止基準の遵守
- 作業環境測定、および健康診断等の実施
(2)責任体制の明確化
- 労働者50人以上の事業所ごとに各種管理者を選任
・安全管理者の選任
・衛生管理者の選任 - 労働者50人以上の事業所ごとに産業医等を選任
- 事業所の規模、業種に応じて安全衛生管理者を選任
※選任の要件については、厚生労働省 東京労働局のパンフレット:「総括安全衛生管理者」 「安全管理者」 「衛生管理者」 「産業医」の選任と職務のあらましを参照ください。
(3)自主的活動の促進の措置
- 安全衛生委員会等の設置
また、2014年には化学物質による健康被害、精神障害を原因とする労災認定の増加が問題視され、従業員の安全と健康をより一層確保する目的で「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律第82号)が公布されました。その際の改正項目は以下の7つです。
(ⅰ)化学物質におけるリスクアセスメント実施の義務化
一定の危険性・有害性が確認されている化学物質に対し、危険性や有害性の調査(リスクアセスメント)の実施が義務となりました。
(ⅱ)ストレスチェック等実施の義務化
常時50人以上の従業員を抱える事業場において、1年に1回、従業員(1週間の労働時間が所定労働時間の3/4以上となるパート、アルバイトを含む)に対し、医師・保健師等による心理的負担を把握するための検査(ストレスチェック)の実施および労働基準監督署への報告が義務化されました。(従業員が50人未満の場合は努力義務)
また、検査の結果を踏まえ本人が希望する場合、企業は医師による面接指導を実施し、必要に応じて就業上の措置を講じることも義務づけられました。
(ⅲ)受動喫煙防止措置の努力義務化
従業員への受動喫煙による健康被害防止を目的に、喫煙所の設置や全面禁煙などを実施することが努力義務となりました。
(ⅳ)厚生労働大臣による指示、勧告、公表を行う制度の導入
重大な労災被害を繰り返す企業に対し、厚生労働大臣が「特別安全衛生改善計画」の作成を指示することができるようになりました。
(ⅴ)機械等の規制届出の廃止
大規模工事において、建設物や機械等の設置・移動を行う場合の事前届出が廃止されました。
(ⅵ)電動ファン付き呼吸用保護具の型式検定、譲渡制限の対象化
譲渡制限の対象に、電動ファン付き呼吸用保護具が追加されました。
(ⅶ)外国に立地する機関も検査・検定機関として登録可能
ボイラーなど、特に危険な機械等の検査・検定を行う機関は、日本国内に事務所のない機関も登録可能になりました。外国立地機関の検査・検定を受けた機械等は、日本国内での検査・検定の対象からは外れます。
加えて、「働き方改革関連法」の成立において、労働安全衛生法では以下の2項目が2019年4月に改正されることになりました。
(Ⅰ)産業医・産業保健機能の強化
企業による産業医に対する健康診断実施結果等の報告、産業医による勧告とそれに対する企業の対応、従業員に対する産業医の業務内容の周知・共有、医師の面接指導の義務化
(Ⅱ)労働時間の適正把握の義務化
労働者の健康確保の観点から、企業側での現認や客観的な方法により、労働時間の状況を適正に把握することを義務づける
なお、労働安全衛生法に違反すると、損害賠償の支払いや刑事罰に課せられる等の罰則を受けることになります。
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