政府を中心に「働き方改革」が進み、法改正、対策、環境整備の支援も整ってきました。中でも、「長時間労働の是正」については政府も喫緊の課題として挙げており、「時間外労働の上限規制導入」や「勤務間インターバル制度の導入支援」など、現在もさまざまな施策が行われています。そして、今後もさらに取り組みの強化が行われることが予想されます。残業が続くと心身に大きな負担を与え、過労死や健康障害の要因にもなりかねない今、企業にとっても過重労働が招く悪循環を防ぐことは早急の課題といえます。
ところが、その具体的な対策はうまく機能していないケースが多く、理想と現実にギャップが生じています。ノー残業デーやテレワークなど一般的な制度をただ導入するだけでは、現場がついてこないため期待通りの成果に結びつきにくいのです。ましてや、中小企業においては「マンパワーや費用の不足で着手したくてもできない」「現在取り組んではいるものの、なかなか成果が上がらない」という声もあります。
では、どのような過重労働対策を講じればよいのでしょうか。今回は、自社に合った対策方法の見つけ方についてご紹介しましょう。
目次
残業が生まれる「自社の傾向」に、過重労働対策のヒントがある!
民間調査会社の調べによると、残業について「ない」または「させない」と回答した企業は全体の1割未満であり、規模を問わずほとんどの企業で残業が行われていることが分かりました。その理由には「仕事量に対して人手が不足」「仕事量に対して時間が不足」「突発的事態への対応」「顧客からの要望に対応」などが挙げられており、とりわけ中小企業においては取引先との関係による理由が高く、取引関係を維持するためという構造的な問題もあるようです。
しかし、これらの理由から過重労働対策を実践しようとしても困難を極めます。突然業務量が減ることはないでしょうし、お客様との関係の上に発生する突発的業務が理由ならば無下にお断りすることも憚られます。従業員を増員するという対策も、企業に体力があれば可能かもしれませんが、目に見える改善にたどり着くには相当な時間とコストがかかります。
では、どのようにすれば過重労働対策は行っていけるのでしょうか。
ポイントは、残業の理由(事情)でなく、自社で今何が起こっているのかという「自社の傾向」に視点を変えることです。傾向が分かることで、自社に合った対策が見えてきます。まずは自社の現状を把握し、どんな傾向があるかを確認しましょう。
OBC調べでは、企業には下記の5つの傾向が多いことが分かっています。この中に「このタイプに当てはまりそう」というものがあれば、それが「自社の傾向」と言えるでしょう。
企業のよくある5つの傾向
- A)残業の実態が分からない
残業の実態が分からない、正確に把握できない、どの部署がどれだけ残業しているか分からない・・など - B)特定の個人に残業が多い
いつも決まった従業員が残業していて、仕事にメリハリがない・・・など - C)全社または部署単位で残業が多い
特定の従業員ではなく、全社的に残業が多い。または、一部の部署に限って残業が多い - D)特定の時期に残業が発生する
月末や月初、四半期末、決算期など、決まった時期にのみ残業が発生している - E)残業抑制が定着しない
すでに残業抑制の取り組みを行っているにも関わらず、取り組みが定着しない
過重労働を解消する成功のカギは、3つの視点にあり!
自社の傾向を把握したら「その傾向に合った対策を・・・」となりますが、対策を考える際には以下の3つの視点がカギとなります。
1つは「取り組み」。労働時間をコントロールするのは、個人の努力だけでは実現できません。チームや部門といった組織で取り組めるよう制度やルールが必要になります。
しかし、それだけでは取り組み自体が形骸化しやすく、ルールを作ってもうまく運用できず根本的な解決に至らないことも起こり得ます。
制度やルールをうまく運用して過重労働を解消するには、あと2つの視点が欠かせません。それが、「マネジメント」と「システム要件」です。
「マネジメント」とは、単なる労働時間の削減ではなく、生産性の向上を目指して「少ない時間で成果を上げる」=「生産性を高める」ためのものです。労働時間を削減すると、業務処理や生産性の低下、さらには競争力の低下や売上減少などのリスクも伴うのでは・・・という「ジレンマ」も抱きやすいものです。このようなジレンマを解消して取り組みを実現させるためにも、生産性を高める「マネジメント」が必要になるのです。
生産性は、「Output(成果)÷Input(時間)」と表すことができます。「マネジメント」には、最小限のエネルギーで最大のアウトプットを目指すことが求められます。
もう1つの「システム要件」とは、制度やルールなどの運用環境を整えるシステムの選定条件のことです。「取り組み」を実現させるためには、できる限り手作業の業務は廃止し、従来の業務に影響が出ず、かつ現場の従業員にとっても負担なく業務が進められる環境が必要になります。その環境整備に欠かせないのがシステムの活用です。新しい制度やルールを簡単に導入でき、手間なく管理ができるシステムを使って運用することも、過重労働対策を実現するために欠かせないのです。
例えば、いつも特定の従業員に残業が多くなっている場合、必要のない時間を費やしていたり仕事が許容オーバーになっていたりすることが考えられます。このような場合はどうしたらよいか、上記の3つの視点で考えてみましょう。
まず「取り組み」では、残業許可制にして必要なら事前申請する、という方法があります。また、仕事の質が高くスピードの速い従業員に仕事が集中しているケースや、能力以上の仕事量になっている可能性もあるので、部下の適性や能力に応じて仕事を割り振る「マネジメント」も求められます。そうした取り組みやマネジメントを支えるためにも、従業員が事前申請を簡単に行え、かつ上司が部下の当月残業時間を考慮して許可の判断・承認ができる仕組み、そして部下の職務特性や能力を定量的に把握できる仕組みが「システム要件」として必要になります。
単純に「残業許可制を設ける」といった表面だけのルール化をしたり、「部下に早めの帰宅を促すよう上司の指導を徹底させる」といった社内マネジメントをしたりするだけでは、期待通りの成果が出るよう対策を進めることはできません。
「取り組み」「マネジメント」「システム要件」の3つを満たしてこそ、効果的な対策が講じられるのです。
傾向からすぐに分かる!自社に合った「過重労働対策」
ここまでお話してきたように、過重労働の解消を推し進めるためには、自社の傾向から3つの視点を踏まえて対策を講じ、実施することがポイントになります。
OBCでは、前述でご紹介した「企業のよくある5つの傾向」を軸に、人事労務の専門家が解消法を詳しく解説したホワイトペーパー(PDF・全16ページ)を無料でご用意しています。
「これまでの対策で、うまく効果を得られなかった」「自社にあった対策は何か分からない」「何から始めるべきか知りたい」とお悩みの人事担当者は、ぜひこの機会に自社に当てはまるタイプからオススメの解消法を確認してみてください。
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