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昨年10年ぶりに労働基準法が改正され、4月1日に施行されます。この改正は、「働き方改革関連法案」(正式名称:働き方改革を推進する法律案)に関するもので、【長時間労働の是正】【多様で柔軟な働き方の実現】【雇用形態に関わらない公正な待遇の確保】が主軸とされます。
「勤怠管理」は、この法改正を受けて今後ますます重要な業務になります。ですが、実際の業務で具体的に何をどうすればいいのか、今ひとつピンときていない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、法律がどのように変わるのか紐解きながら、今後、勤怠管理業務はどんな影響を受けるのか考察していきます。
目次
改正労働基準法で何が変わる?勤怠管理で注意すべきポイントは?
労働基準法は、これまでも時代に合わせて改正されてきました。
今回の改正は、長時間労働、特に残業に関する問題と労働者の健康問題を受けて見直されるものです。(働き方改革関連法案に関する法改正については、OBC360°記事「<働き方改革関連法>タイムリミット間近!?今すぐ取りかかりたい実務対応とは」も参照ください)
改正される事項のうち、特に勤怠管理に影響するものは以下の4点です。
年次有給休暇の取得義務化
今回の改正により、年間10日以上の有給休暇を付与される従業員(管理監督者等を含む)パート、アルバイトを対象に、企業には「年休を付与した日を基準日として1年以内に5日以上の有給休暇を取得」させることが義務づけられます。また、「年休管理簿」を作成し管理することも義務化されます。
従業員が自らの希望で5日以上取得する場合は問題ではありませんが、有給休暇が5日未満の場合は企業による時季指定が必要になります。ただし、従業員に企業が時季指定する場合は、従業員の意見を聞き取り、その意見を尊重するよう努めなければいけません。
<勤怠管理で注意すべきポイント>
年次有給休暇は、入社日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割出勤した従業員に10日間付与されます。全従業員一律の起算日で年休が付与されるのではないため、そもそも有給休暇の管理は煩雑になりがちです。そのため、今後は勤怠管理において「従業員ひとりひとりの年休消化状況をどう可視化するか」がポイントになります。
「年休管理簿」を軸に年休の取得状況を把握し、計画的に取得できていない従業員には積極的に休暇を取得できるよう勧奨することが求められます。
また、時季指定を行使する場合は、業務との調整も必要です。「年休管理簿」を上長とも共有するなど、上長とともに「年次有給休暇を取得できる環境」を整えることも重要になるでしょう。(年休管理簿は3年の保存が義務づけられています)
残業時間の罰則付き上限規制
労働基準法では、労働時間を1日8時間、週40時間までと定められていますが、これまでは36協定 を結べば月45時間、年間360時間までの法定労働時間外の労働が認められていました。また、「特別条項付き36協定 」を結べば、上限なく残業を延長することもできました。
しかし改正後は、特別条項付き36協定 を結んでも休日労働を含み2〜6ヶ月間の複数月いずれかの平均が80時間超える、もしくは1ヶ月100時間、年間720時間を超える時間外労働はできなくなります。
<勤怠管理で注意すべきポイント>
今後の勤怠管理では、時間外労働の条件を超えないよう、事前確認や残業抑制指導に活用できる仕組みが必要になります。特に今回の改正では、1ヶ月の上限に加え、複数月での平均に対する上限もあります。単純に1ヶ月の合計だけでなく、従業員の2〜6ヶ月間の平均時間も算出しなければなりません。そのうえで労働超過になりつつある従業員を割り出し、労働時間が上限を超える前に指導したり残業を制限したりすることが求められます。
現在、タイムカードや紙の出勤簿、エクセルで勤怠管理を行っている場合、その都度集計をして上限を超えていないかチェックする必要が発生し、これまで以上に手間と時間がかかることが予想されます。勤怠管理システムの中にはアラート機能が付いたものもありますが、改正内容に対応しているか確認が必要です。
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フレックスタイム制の清算期間の延長
フレックスタイム制とは、清算期間で定められた所定労働時間の枠内で、従業員が始業・終業時刻を自由に選べる制度です。この制度を適用された従業員は、本人が始業・終業時刻を自身の裁量によって決め、定められた清算期間中の労働時間に合わせて調整をして働くことになります。
現行では、フレックスタイム制の清算期間が1ヶ月となっており、その月の前半と後半で労働時間の配分を調整することはできても、月をまたいでの調整ができず「繁忙期と閑散期の調整が不便」という意見が多くありました。
今回の改正では、清算期間が3ヶ月まで延長可能となります。
清算期間を3ヶ月とした場合、3ヶ月の平均で週あたりの労働時間が法定労働時間内に収めることができればよくなり、月をまたいでの調整が可能となります。ただし、1ヶ月を超える清算期間を定める場合は、「労使協定の届出」と「月の労働時間の上限設定」が必須となります。
<勤怠管理で注意すべきポイント>
企業にとっても従業員にとっても利便性が上がる改正内容ですが、繁忙期に労働時間が集中すると健康を害するリスクも伴います。そのため、「単月で週50時間以内」という上限が新たに加わります。
改正後の勤怠管理では、3ヶ月分の週平均で労働時間を管理する一方、単月でも週の労働時間が上限を超えないように管理していくことが求められます。
高度プロフェッショナル制度の創設
高度プロフェッショナル制度とは、年収1,075万円以上の一部の専門職に対し、労働時間規制や時間外労働の割増賃金支払い規定の対象外とするという制度です。書面による本人の同意と、労使委員会での決議があり、企業が申請をすれば導入することが可能です。
<勤怠管理で注意すべきポイント>
高度プロフェッショナル制度を適用された従業員は、勤怠管理の対象外となります。
しかし、一定の成果を上げれば早く帰宅できますが、実際には残業に制限がないため長時間労働になりやすく、賃金以上の労働になる可能性も出てきます。
そこで、高度プロフェッショナル制度の対象者には「健康確保措置」が義務化されます。具体的には、年104日の休日取得に加え、以下の4つの中からいずれかを選択することになります。
- ① 働く時間の上限設定
- ② 終業から翌始業まで一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」
- ③ 連続2週間の休日取得
- ④ 残業80時間以上での健康診断
高度プロフェッショナル制度の対象者に対して、企業は成果を求めるとともに彼らの心身の健康管理にも配慮しなければいけません。始業・終業時刻も一般従業員と同一ではないため、「働き過ぎ」にならないよう彼らに対しても勤怠状況を把握しておく必要があります。
ここにも注目!労働基準法と同時に改正される2つの法律
今回、「働き方改革関連法案」の流れを汲んで労働基準法と同時に改正される法律に、「労働安全衛生法」と「労働時間等設定改善法」があります。
これらの中にも、今後の勤怠管理に大きく影響する内容が盛り込まれています。
■労働安全衛生法改正がもたらす影響
労働時間の適正化の義務化
従業員の労働時間の把握について、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)に「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者を除くすべての労働者」を対象とすることが示されています。「勤怠管理の適用外」とされていたのは、管理監督者等の責任者や専門型裁量労働制、企画型裁量労働制、事業外労働に関するみなし労働時間制が適用される従業員となります。
しかし、今回の法改正で以下の条文が追加されます。
第六十六条の八の三
事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。
これにより、ガイドラインでは「勤怠管理の適用外」とされている労働者においても、勤勤怠管理が義務化されることになります。
つまり、法改正以降は、管理監督者等についても一般従業員と同様に記録しなければいけなくなるのです。
ここで明記されている「厚生労働省令で定める方法」とは、前述のガイドラインに記載されている方法で、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録」で勤怠管理を行うよう義務づけられています。4月1日以降は、他の従業員と同様に管理監督者等も同じ方法で労働時間を記録する必要があります。
管理監督者等の勤怠管理が義務づけられる大きな理由は、彼らの「健康管理」という点です。これまで労働時間の把握が必要なかった彼らについても、今後は正確に労働時間を把握し、適度な休憩や休日の取得を勧奨することが求められます。時間外労働の上限規制対象ではなくとも、全ての従業員の「働き過ぎ」に配慮しなければならないということです。
なお、厚労省のガイドラインには、労働時間は「使用者の指導命令下に置かれている時間」と定義づけられています。管理職研修など業務上義務付けられた研修や教育訓練の受講、業務に必要な学習や着替え等の時間についても労働時間としてカウントされますので注意が必要です。
■労働時間等設定改善法改正がもたらす影響
勤務間インターバル制度の促進
「勤務間インターバル」とは、1日の最終的な勤務終了時(時間外労働を含む)から翌日の始業時刻までに、一定時間の休息を確保する制度です。従業員が十分な生活時間や睡眠時間を確保でき、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら健康を維持し、長時間労働を未然に防ぐことを目的としています。
例えば、1日の所定労働時間が9時〜18時で11時間のインターバル設定をしている場合、23時まで残業すると、翌日の勤務時間は10時〜19時になります。
しかし、インターバルの時間に法的な規定はありません。今のところ時間設定は企業の采配に委ねられており、すでに採用している企業では概ね8〜11時間で設定しているケースが多いようです。
勤務間インターバルを導入すると、従業員の残業状況によって毎日始業時刻が違ってくるため、労働時間の算出が難しくなります。この制度を採用するには、あらかじめ従業員に対してインターバルの推奨を通知する仕組みや「設定したインターバルを取得できているか」「働き過ぎてないか」などをチェックする機能が必要となります。
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まとめ
以上のことから、今後の勤怠管理には、今回の法改正によって以下のことが求められるようになります。
これらの根底には、「正確な労働時間をいかに把握するか」という大きな課題があります。
今回の改正では「客観的な記録」が求められているため、勤怠の自己申告制はほぼ認められていません。しかも、朝礼や研修など企業の明示や暗黙の指示で従事する時間も「労働時間」としてカウントすることが明確化されており、「労働時間は1分単位で管理する」という原則論に基づき適正に把握する環境整備が必要となります。このことだけでも、紙や手作業の打刻に頼っている勤怠管理方法は今後「適切」と見なされなくなることは避けられません。
また、法改正が行われると、毎日の労働時間はもちろん、1ヶ月の合計、複数月の平均で上限を超えないように、従業員ひとりひとりの労働時間を細かく管理していかなければなりません。タイムリーな残業抑制・指導に活かすためにも、集計・分析はもとより「打刻内容と実労働が合っているか」「就業規則とズレはないか」などのチェックも、担当者の負担にならない管理方法が求められます。
労働基準法をはじめ各法改正が施行される前に、今一度、自社の勤怠管理が適切に行われているか、見直してみてはいかがでしょうか。
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