保険料控除申告書(給与所得者の保険料控除申告書)は、年末調整の際に企業の従業員に提出してもらう書類です。これは、生命保険料や地震保険料、社会保険料など、従業員が支払った各種保険料を年末調整で申告するときに必要となります。
記入事項に誤りがないかなど、労務担当者が保険料控除申告書の内容を確認する際のポイントについて解説します。
目次
保険料控除申告書受け取り時に確認すべきこと
労務担当者が企業に勤める従業員から保険料控除申告書を受け取ったら、最初に下記の3点をチェックする必要があります。
- 生命保険の保険料控除証明書が添付されているか(2011年12月31日以前に締結した旧契約の「一般の生命保険料」のうち、9,000円以下の契約を除く)
- 保険料控除申告書と保険料控除証明書の内容に相違はないか
- 保険料控除申告書の計算に間違いはないか
保険料控除申告書には、従業員自身が数字を書き入れたり、計算をしたりする項目があります。従業員の書き間違いに気づかず処理してしまうと、正確な所得税額が算出できなくなるおそれがあるのです。ヒューマンエラーは誰にも起こりうると考えて、従業員の申告内容を鵜呑みにせず、必ず確認してください。
保険料控除申告書でチェックすべき4つのポイント
保険料控除申告書には、大きく分けて4つの控除に関する記入欄があります。従業員には、控除証明書などの内容を、それぞれの欄に正しく記入してもらう必要があります。
ここでは、労務担当者が保険料控除申告書の記入内容で、チェックすべきポイントを解説していきましょう。
出典:国税庁「令和6年分 給与所得者の保険料控除申告書」
生命保険料控除のチェックポイント
生命保険料控除は、本年中に支払った生命保険料の所得控除です。その記入欄は、「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3種類に分けられます。添付された保険料控除証明書で保険会社名や種類などを照合しながら、記入された数字が適切な欄に正しく記入されているかチェックしましょう。
労務担当者が注意したいのは、一般の生命保険料と個人年金保険料には2011年12月31日以前の契約である「旧契約」と、2012年1月1日以降の契約日の「新契約」という区分があること。計算方法がそれぞれ異なる点にも注意してください。
また、それぞれの計算式にあてはめて算出した控除額についても、記入漏れや計算ミスがないか、また定められている限度額を超えた金額が記入されていないかなどを確認しましょう。
地震保険料控除のチェックポイント
従業員は損害保険会社に地震保険料を本年中に支払った場合、一定の金額の所得控除(地震保険料控除)を受けられます。地震保険料控除の記入欄は「地震保険料」と、2006年12月31日以前に契約締結されて一定条件を満たす「旧長期損害保険料」の2種類です。従業員がどちらで契約をしているのかは、添付された保険料控除証明書に記載されています。同一契約で地震保険・旧長期損害保険の保険料を支払っている場合は、有利な控除額が適用されます(別個の契約は両者合算)。
なお、地震保険は、従業員本人やその家族といっしょに暮らしている家のみが対象です。例えば、投資用物件など「他者に貸している家」の保険は対象外なので、労務担当者は物件住所と従業員本人の住所が合致するかについても確認してください。
社会保険料控除のチェックポイント
従業員本人や家族の社会保険料(国民年金や国民健康保険など)を納めたときの所得控除が、社会保険料控除です。給与天引きされている従業員の社会保険料については従業員や労務担当者があらためて記入する必要はなく、企業で把握している数字を年末調整計算に反映させてください。
この欄に記入するのは、従業員本人が家族の国民年金や国民健康保険料などを負担している場合です。記入欄には、国民年金や国民健康保険などの支払い額を記入します。この際、労務担当者は提出された国民年金控除証明書との照合が必要です。ただし、国民健康保険や介護保険など、控除証明書添付の必要がないものもあるため、注意しましょう。
小規模企業共済等掛金控除のチェックポイント
小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業の経営者や役員などのための積み立て式退職金制度に掛金を支払っている場合の所得控除です。
確定拠出年金の中でも企業型確定拠出年金(企業型DC)は従業員側で記入せず、企業側で確認の上、反映します。個人型確定拠出年金(iDeCo)に従業員が加入している場合、「個人型確定拠出年金」欄に記入してもらう必要がありますが、申告できるのは従業員本人分のみで、配偶者の拠出金等は対象外です。
「奉行Edge 年末調整申告書クラウド」で保険料控除申告書の回収と
チェックをスムーズに
保険料控除申告書の回収とチェックには、多くの手間がかかります。また、記入する従業員にとっても、年に一度のことでどこに何を書けばいいのかわかりにくく、頭を悩ませることの多い書類といえるでしょう。
こうした問題を解決するには、保険料控除申告書のデジタル化が効果的です。「奉行Edge 年末調整申告書クラウド」なら、前年のデータがそのまま引き継がれるため、毎年頭を悩ませる必要がなくなります。控除額計算も自動で行われるため、計算ミスの心配もありません。年末調整業務の効率化に、「奉行Edge 年末調整申告書クラウド」をぜひご活用ください。
■監修者
石割 由紀人
公認会計士・税理士、資本政策コンサルタント。PwC監査法人・税理士法人にて監査、株式上場支援、税務業務に従事し、外資系通信スタートアップのCFOや、大手ベンチャーキャピタルの会社役員などを経て、スタートアップ支援に特化した「Gemstone税理士法人」を設立し、運営している。
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