赤字上場急増、市場が求めた“成長性”~2019年IPOの振り返りと赤字上場企業の特徴~

2019年は赤字上場が多く、全体の約2割を占めました。その理由と特徴は何だったのでしょうか。多くのIPO支援を手掛ける船井総合研究所が解説します。
更新:2022年6月30日
目次
【最新コラム公開中】
 こちらのコラムは2020年2月3日時点の記事です。
 最新記事がこちらでご覧いただけます。

1.2019年IPOは86社で着地、赤字上場が約2割と突出

 2019年は2018年に引き続きIPOが86件と、ここ数年とほぼ同水準ですが、過去10年平均である71.9件を上回った年でした。

IPO企業数
※各証券取引所HPより作成

 2019年のIPO概況で特筆すべき点は赤字上場の多さです。(本稿では、上場承認の申請時点で経常損失を計上していたケースを赤字上場と定義します。)赤字上場は16件(上場企業全体の18.6%)でした。2018年は、12件(上場企業全体の13.3%)、2017年の10件(上場企業全体の11.1%)のように、直近過去3ヵ年と比較し多くの企業が赤字上場したことがうかがえます。

2.赤字上場企業の特徴、成長性・時流・サブスクリプション

 これらの企業に共通している点は成長性です。これらの企業が上場したケースを通じて、市場から評価される点に触れてみましょう。
 例えば、今は赤字でも将来的に黒字化する見込みがある場合があげられます。実際、Sansanやfreeeは約30億円の赤字を計上したものの、上場を果たしています。
■Sansan株式会社 新株式発行並びに株式売出届出目論見書
■フリー株式会社 新規上場申請のための有価証券報告書

 成長性は、上場会社の“外部要因”と“内部要因”の2つに大別されます。
 外部要因の一つに政府による政策期待があります。2019年に赤字上場した株式会社global bridge HOLDINGSを事例として紹介します。同社は保育、介護事業を中心的に行い、東京、千葉、大阪に保育、介護施設を展開しています。少子高齢化の問題を抱えている日本は市場の需要に加え、政府が保育、介護分野に政策投資を行う可能性が大きいです。実際に2019年10月から幼児教育・保育が無償化されました。時流にあった事業を展開する企業は外部要因の後押しにより業績向上の機会が増えやすい傾向にあります。
 次に成長性の内部要因の一つとしては、企業の収益構造があります。同じく2019年に赤字上場したfreeeを挙げます。freeeの会計システムは定額制(サブスクリプション)となっています。この収益構造は当初は開発費や広告費がかさむことで赤字になってしまいます。しかし、製品販売後は継続的に利益を得られるため黒字化しやすいことが特徴なので、従量制と異なり収益の見通しを立てやすく、投資家も投資しやすいです。ちなみに2019年に赤字上場したサブスクリプションモデルをメイン事業としている会社は8社あります。(弊社調査)。

3.IPOに必要なこととは

 それではいざ上場しようとすると何が必要でしょうか。IPOには監査法人、主幹事となる証券会社、証券取引所による審査など様々なステークホルダーが絡みます。それらのステークホルダーにこれまでの業績や今後の事業計画を説明し、成長性があることをしっかり伝えなくてはなりません。IPOにはステークホルダーへいかに説得力を持って成長性を伝えられるかが重要で、準備をしっかりすることが肝になります。
 2019年は日本に限らずベンチャー企業への投資がさかんに行われました。しかし、シェアリングオフィスのウィーワークを運営するウィーカンパニーのように実績と期待があまりにも乖離してしまいIPOを断念せざるを得なくなったケースがありました。また上場前にバリュエーションが付きすぎたことで上場後の評価につながず株価が低迷してしまうケースなどもありました。赤字上場自体には問題はありませんが、その後の成長性を市場は見ています。そして評価されます。そのあたりを踏まえて、事業計画を着実に実現していくことが重要です。


■ IPOを目指したい、検討したい方に耳より情報をお届け 「船井総研IPOコンサルティングコラム」
船井総研IPOコンサルティングコラム

■ IPOを目指す経営者が集まる研究会(IPO分科会)
IPO分科会
関連コラム
IPO準備の検討を始めたはいいものの、IPOできる企業の規模がわからないゆえにハードルの高さを感じてしまい、敬遠してしまう経営者は珍しくありません。実際にIPOを実現した企業のデータをもとに、「どの程度の規模ならどの市場に上場可能か?」を解説します。
IPOに必要な業績とは!市場別にみる売上高・営業利益【2018年版】
更新:2022年6月30日
2019年は米中貿易摩擦や香港デモ等の外的要因に振り回されつつも、後半は株価が底堅い推移を見せ、1年2か月ぶりの高値を付ける局面もありました。IPO市場においては、赤字上場企業が目立ったこと、名古屋地区が全体の1割を占めるなど例年とは違った動きも見えました。2020年のIPO市場はどうなるのか。2019年の状況と2020年の展望を解説します。
IPO 2019年総括と2020年の展望
2020年1月7日
2021年の日本のIPO市場は、新規上場企業数が125社と14年振りに100社を超える高水準となった。なぜ、これほど新規上場企業数が増加したのか?実際にIPOを実現した企業のデータをもとに、船井総合研究所が市場別で解説。
14年ぶりの高水準!新規上場企業数125社の市場別にみる売上高・経常利益【2021年版】
更新:2022年6月30日
執筆

月2回程度、IPO準備に役立つ情報を配信!
IPO Compassメルマガ登録はこちらから!

メルマガ登録
コラム一覧に戻る
《無料》IPOお役立ち資料
この1冊ですべてわかる!経営者のためのIPOバイブル
奉行シリーズは、IPO実現企業の60%に選ばれています。導入のご相談はこちら!
お気軽にご相談ください

製品・サービスの導入のご相談ついて、専任スタッフがあなたの疑問にお応えいたします。

導入のご検討のお客様専用ダイヤル

0120-121-250

10:00〜12:00/13:00〜17:00
(土・日・祝日を除く)