消費税10%・軽減税率
企業が押さえておきたいポイント
消費税改正のシステム対応ポイント
消費税改正対応に向けて、既存システムのバージョンアップもしくは新しいシステムの入れ替えを検討される方も多いかもしれません。
単に消費税対応と言っても新しい税率に対応するだけでは大きな業務負担を抱えてしまうことになりかねません。
そうならないために、本コラムでは消費税改正に向けたシステムの対応ポイントをまとめていきたいと思います。
- 継続性と効率性の両面で
システムを検討すべき -
今回の消費税改正は2019年10月の消費税10%への引き上げからスタートし、適格請求書への対応やその後の経過措置などを考えると非常に長期的な対応が求められます。
そのため、目の前の税率改訂や軽減税率対応だけでシステム対応を考えてしまうと、その後の改正の都度、システムの改修が必要になる可能性があります。
また、軽減税率は取引を行う品目ごとに処理の方法が変わるなど、経理担当者の業務負担が増えることが考えられます。システム対応ではこういった業務負担も軽減できる仕組みを検討してくことが必要だと考えられます。このようなことから、システム改修では、将来まで見据えた継続性と業務負担を軽減できる効率性の両面で検討していくことが重要となります。
では、継続性や効率性が両立できるシステムとはどのようなものか、具体的なポイントを整理していきたいと思います。
- 軽減税率のシステム対応
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消費税率の判定 軽減税率対応では、特に会計システムでどのように対応するかを確認しておくのが重要です。
例えば、軽減税率8%の税率を保持するだけだと、仕訳入力の際に都度税率を判断して入力していく手間が発生します。
また、勘定科目ごとに軽減税率8%を判定するような機能がある場合でも、交際費や会議費などの勘定科目は標準税率10%と軽減税率8%が混在する可能性があるため、10%用の勘定科目と軽減税率8%用の勘定科目と2つの科目を分けて登録しなければならない可能性が出てきます。
そのため、補助科目ごとに軽減税率を設定できるなど、より細かく判定できる仕組みが重要だと考えられます。システムのマスター情報の更新 すでに登録されているシステムのマスター情報をどのように更新するかもシステム対応としては重要となります。
例えば軽減税率対象品目がある企業の場合、販売管理システムの商品マスターを変更する作業が発生します。その際、一つ一つの商品マスターを手動で更新していると非常に手間がかかることはご想像いただけるでしょう。
一括で更新をかけることができるなど、極力手間をかけることなくシステムのマスター情報を更新できる機能があるか確認しておきましょう。
- 区分記載請求書/
適格請求書のシステム対応 -
請求書のレイアウト変更 販売管理システムで一番重要なのが請求書の様式対応です。請求書の様式は2019年10月の区分記載請求書、2023年10月の適格請求書と2段階での対応が必要となります。
まずは区分記載請求書への対応が重要ですが、そのあとの適格請求書への対応も見据えたシステムの改修をしていきましょう。
- ポイントの整理
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いくつか代表的な対応機能について挙げさせていただきましたが、その他の機能も含めてシステムの対応ポイントを整理しました。
継続性 効率性 2019年10月
消費税10%
引き上げ・
軽減税率導入- 軽減税率対象品目と税率の紐づけ
- 取引の入力に合わせた4種類の税率入力・集計
- 経過措置への対応
- 区分記載請求書への対応
- 伝票日付による新・旧税率の自動判定
- 経過措置において指定日から税率の自動判定
2020年3月
消費税申告書
様式変更- 申告書の新様式対応
- 税額計算の対応
- 消費税額の科目別・税区分別集計
- 手入力をした消費税額の検出
- 登録済み伝票の税率・税区分の一括更新
2021年10月
適格請求書発行
事業者登録制度の
申請開始- 自社の登録番号管理
- 仕入先ごとの事業者種別(課税・免税)の管理
- 免税事業者/課税事業者の切替・期間管理
- 自社が免税事業者の場合、適格請求書を発行しないよう制御
- 指定日以降に適格請求書を発行許可
2023年10月
適格請求書等
保存方式の導入
(インボイス
方式導入)- 適格請求書の記載事項への対応
- 免税事業者からの仕入れの別管理
- 仕訳起票時の免税事業者の区分け管理
既存のシステムをバージョンアップするにしても新しいシステムを検討するにしても、税率の変更だけでなく、より具体的にどのようなシステム対応があるかを確認しておきましょう。
[本サイトの監修&ワンポイント講座執筆]
アクタス税理士法人 代表社員 税理士加藤 幸人 氏
税理士、公認会計士、社会保険労務士など約150名で構成するアクタスグループの代表を務める。
税理士は、「接客・サービス・コンサル業」であるという考えにもとづき、いつもお客様の立場で徹底的に考えた経営視点でのコンサルティングを提供している。
セミナー講師も多数行っており、OBC主催の消費税セミナーでも評価が高くわかりやすいと好評を博している。