消費税10%・軽減税率
企業が押さえておきたいポイント
消費税改正の概要と、企業が押さえるべきポイントまとめ
消費税の税率は、2019年10月1日より10%への引き上げが予定されております。今回は、税率の引き上げだけでなく、新たな制度として「軽減税率制度」が導入されます。軽減税率は8%ですが、これにより消費税は、標準税率10%、軽減税率8%の「複数税率」になります。
1989年 4月1日以後 |
1997年 4月1日以後 |
2014年 4月1日以後 |
2019年10月1日以後 | ||
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標準税率 | 軽減税率 | ||||
消費税率 | 3.0% | 4.0% | 6.3% | 7.8% | 6.24% |
地方消費税率 | ー | 1.0% | 1.7% | 2.2% | 1.76% |
合計 | 3.0% | 5.0% | 8.0% | 10.0% | 8.0% |
- 複数税率になることによる
会社経理におけるポイント -
請求書や領収書を受領した会社の経理では、その請求書等を見て、消費税が課税の取引か否かを判断し、仕入や経費の計上を行います。
その際、会計ソフトへの仕訳の入力において税区分に気をつけて入力を行っていました。2019年10月からの複数税率制度のもとでは、経理では、課税の取引が標準税率の取引か軽減税率の取引かを判断し、税率ごとに区分して記帳する「区分経理」が求められます。会社の経理においては、今まで以上に請求書等を確認すべき点が増えるので、時間と手間がかかることが想定されます。
また、売上げた会社では、税率ごとに区分した課税取引の合計金額を記載した「区分記載請求書等」の発行が必要となってきます。複数税率制度に対応するためにはまずは、財務会計ソフトが区分経理に対応したものとなっているかどうか検討をしていただく必要があります。さらに、区分記載請求書の発行に対応した販売管理システム、請求書発行システムかを検討をしていく必要があります。
- 2023年からは
インボイス方式が導入される -
そして、複数税率制度が導入されて4年後の2023年10月1日からは、消費税はインボイス方式になります。すべての課税事業者は「適格請求書等」の発行が義務づけられるとともに、適格請求書等に「消費税額」と「適用税率」の記載が必要となります。
適格請求書等を発行するためには、事前に税務署に適格請求書発行事業者の登録を行い、登録番号の通知を受ける必要があります。適格請求書等には、その登録番号を記載していくことが必要になります。なお、適格請求書発行事業者の登録番号は、法人番号を有する課税事業者においては「T+法人番号(13桁)」となります。
- 消費税率の引き上げだけでは
ないということを認識する -
今回の消費税率の引き上げでは、軽減税率制度という新しい制度が導入され、それにより請求書の記載が変わり、さらにインボイス方式の導入により適格請求書等の交付が義務づけられるという、税率の変更だけではないということをしっかり認識していただく必要があります。
さらに、これらの新しい制度の内容を理解していただくとともに、会社や経理においてどのような準備が必要かを充分に検討し、早めに準備を進めていただくことが重要となります。
- 新しい制度のポイント
-
新しくなる制度において確認すべきポイントをまとめてみました。ぜひ、以下のポイントを押さえてはやめの準備や対策を行っていきましょう。
新しい制度 ポイント 軽減税率制度 - 自社の取引に軽減税率の対象となる品目が発生するかの確認を行う財務会計システムは、区分経理の対応ができているかの対応を行う販売管理システム、仕入管理システムは軽減税率制度の対応ができているかの対応を行う
- システム対応後の仕入マスターや売上マスターへの税区分別の登録状況はどうなっているかの確認を行う
- 小売店等においては、レジシステムが軽減税率対応となっているかの確認を行う
区分記載
請求書等- 軽減税率の対象となるものか、それ以外のものであるかが明確になるように、個別の商品名等の記載が行われる必要がある
- 現行の請求書等の内容に加えて次の2点が記載される必要がある
- 軽減税率の対象資産の譲渡等である旨
- 税率の異なるごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)
適格請求書等 - 適格請求書発行事業者の登録を行い「登録番号」を取得する必要がある
- 適格請求書発行事業者の登録は2021年10月1日からである
- 「登録番号」は法人番号を有する課税事業者については、「T+法人番号(13桁)」が予定されている
- 区分記載請求書等の内容に加えて次の2点が記載される必要がある
- 適格請求書発行事業者の「登録番号」
- 税率ごとの消費税額及び適用税率
[本サイトの監修&ワンポイント講座執筆]
アクタス税理士法人 代表社員 税理士加藤 幸人 氏
税理士、公認会計士、社会保険労務士など約150名で構成するアクタスグループの代表を務める。税理士は、「接客・サービス・コンサル業」であるという考えにもとづき、いつもお客様の立場で徹底的に考えた経営視点でのコンサルティングを提供している。セミナー講師も多数行っており、OBC主催の消費税セミナーでも評価が高くわかりやすいと好評を博している。