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[過労死ライン]20年ぶりの見直しで企業が今すぐ取り組むべき3つのポイント

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2021年に労災認定の基準、いわゆる過労死ラインが見直されました。働き方改革が進められる中、長時間労働による健康被害問題が明らかになったことにより、実に20年ぶりに改定され、同年9月から運用されています。
今回は、過労死ラインについて、変更内容を踏まえて解説しつつ、従業員の健康障害を防ぐために企業が取り組むべきポイントについて紹介します。

奉行ではじめる働き方改革関連法対応ブック 資料

目次

「過労死ライン」とは

「過労死ライン」とは、健康障害に発展する恐れのある時間外労働時間を表した言葉で、労災認定の基準として用いられています。
従業員の業務上発生した病気や怪我に対しては、労働基準監督署が労災に該当するかを認定し、労災保険が適用され給付されることになっています。特に、時間外労働や休日労働など過重労働がもたらす疲労の蓄積は、脳や心疾患との関連性が高いと医学的知見からも分かっています。
例えば、1ヶ月に45時間を超える残業をするとこれらの疾患を発症しやすくなります。また、発症1ヶ月前に100時間を超える時間外労働をしたり、健康障害発症の2〜6ヶ月間で月平均80時間を超える時間外労働をしたりしている場合、健康障害と長時間労働の関連性が強いと判断されます。
過労死ラインが定められる前は、脳血管疾患や心疾患と労働の関係性が不明瞭で、労災認定されにくいことがありました。そのため、厚生労働省が「脳・心臓疾患の認定基準」を提示し、上記のような時間外労働時間を「病気や死亡に至るリスクが高まる時間外労働時間」(いわゆる “過労死ライン”)としたのです。

過労死認定の現状と基準見直しの背景

過労死は、長時間や過重労働による脳や心臓の疾患と、過労やハラスメントによって引き起こる精神疾患の2つに分類され、過労死等防止対策推進法第二条で次のように定義されています。

  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患、心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害

※過労死等防止対策推進法第二条より

なお精神疾患については、2020年5月の認定基準改正で、次の全てを満たすことが要件とされています。

  • 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  • 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヵ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

※厚生労働省 PDF「精神障害の労災認定」より

厚生労働省が発表している「過労死等の労災補償状況」(別添ファイル)によると、例えば2020年の精神疾患にかかる労災の請求件数は2051件(うち死亡は155件)で、そのうち労災の支給が決定したのは608件、請求件数全体の29.6%(死亡81件、52.3%)でした。

厚生労働省 PDF別添資料2「精神障害に関する事案の労災補償状況」

出典:厚生労働省PDF別添資料2「精神障害に関する事案の労災補償状況」

一方、脳・心臓疾患に係る労災の請求件数は784件(死亡205件)で、支給決定は194件(死亡67件)となっており、支給決定割合は24.7%(死亡時の支給決定割合は32.7%)となっています。

PDF別添資料1「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」

出典:厚生労働省PDF別添資料1「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」

支給決定割合はほぼ同水準ですが、脳・心臓疾患と精神障害では請求件数が2.5倍以上も違う上、死亡による支給決定割合にも大きな開きがあることが分かります。

従来の認定基準でも、勤務形態や作業環境なども加味することとされていましたが、2020年度の脳・心臓疾患のうち、残業時間が月80時間未満で労災認定された事例は1割以下という報道もあり、基準の見直しが行われることになりました。

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20年ぶりに見直し!過労死ラインの変更点とは

今回の過労死ラインの見直しは20年ぶりで、その内容は次のように4つあります。

  1. 長期間の過重業務の評価にあたり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化
  2. 長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因の見直し
  3. 業務と発症との関連性が強いと判断できる場合の明確化
  4. 脳・心臓疾患の対象疾病に「重篤な心不全」を追加

1.長期間の過重業務の評価にあたり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

これまでの過労死ラインは、まとめると次のようになります。

  • 発症日の直近1ヵ月で、残業時間が月100時間を超えていること
  • 発症日前2ヵ月〜6ヵ月間の残業時間が月平均80時間を超えていること

この基準そのものは、今後も変更はありません。 ただし、2021年9月以降は、残業などの時間が過労死ラインに達していない場合でも、これに近い残業時間や労働時間以外の負荷要因※がある場合、関連性が強いと評価されるようになりました。つまり、法令で定められた時間外労働の上限規制に達していなくても、過労死等の労災認定を受ける可能性が高くなったことになります。
※「労働時間以外の負荷要因」とは、例えば不規則な勤務や、精神的な緊張が伴う業務が日常的に行われていることを指します。

2.長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因の見直し

これまでの労災の認定基準でも、長期間、短期間の過重業務の他に、「異常な出来事」により業務の過重性を評価することも負荷要因として考慮されていましたが、今回の改正では新たに次の項目(下図赤字)も追加されました。

PDF「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」

出典:厚生労働省PDF「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」

特に表内の★の項目には、次のような判断基準も示されています。

休日のない連続勤務

連続労働日数や連続労働日と発症の近接性、休日数、実労働時間などの観点から判断される。

勤務間インターバルが短い勤務

睡眠時間との心臓疾患の発症との関係について医学的知見などから、勤務間インターバルが11時間未満の勤務であるかどうかも判断基準になる。

身体的負荷を伴う業務

業務量、業務内容、作業環境などを考慮し、職場の同僚たちにとっても特に過重な身体的精神的負荷と認められるかという観点から客観的かつ総合的に判断される。

3.業務と発症との関連性が強いと判断できる場合の明確化

業務と発症との関連性が強いと判断できる場合として、以下のような例が示されました。

PDF「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」

出典:厚生労働省PDF「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」

4.脳・心臓疾患の対象疾病に「重篤な心不全」を追加

これまでは、不整脈が一義的な原因となった心不全症状などは、対象疾病の「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱っていましたが、心不全は心停止とは異なる病態のため、改正後は新たな対象疾病として「重篤な心不全」が追加されました。
※「重篤な心不全」には、不整脈によるものも含まれます。

奉行ではじめる働き方改革関連法対応ブック 資料

企業が過労死・健康被害対策で取り組むべき3つのポイント

今回の見直しで注意しておきたいのは、「過労死ラインを下回る労働時間であっても、心身への負荷が大きい要因があれば労災認定される可能性がある」という点です。実際2021年末には、残業が平均月80時間などの過労死ラインに満たないとして労働基準監督署に退けられたものの、一転して労災と認定されたケースも発生しています。
そのため企業は、従業員の健康と安全を守る立場として、少なくとも次の3点に意識して取り組む必要があるでしょう。

1.これまで以上に適正に労働時間を管理する

労災認定となるような健康被害を防ぐには、長時間労働を防ぐことがもっとも重要です。特に現在は、時間外労働に上限が定められており、企業には労働時間の適正把握が求められています。
しかし、厚生労働省の「令和2年度11月『過重労働解消キャンペーン』の重点監督の実施結果」を見ても、1ヵ月あたり80時間を越えるような違法な長時間労働は減少傾向にあるとはいえ、「違法な長時間労働」と認められる件数は3割以上になっています。また、健康障害を防止する措置が出来ていない件数は、法改正前よりも増加しています。

厚生労働省「令和2年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果」

出典:厚生労働省「令和2年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果」より取りまとめ

今回の改正で、過労死ラインを超えていなくても労災と認定される可能性が生じることになりました。そのため、企業は「これまで以上に過労死ラインに近づけない」適正な勤怠管理を行うことが必須になります。
深夜労働が続いていないか、長時間労働になっていないか、遅刻や早退は増えていないかなどをタイムリーに把握し、心身的負荷のかかる業務になっていないかこまめにチェックしておくことが重要です。

2.勤務間インターバルで適切な休息時間を確保する

今回の改正で新たに追加された「複合的な要因」に関しても、今後は対応していく必要があります。
例えば「休日のない連続勤務」では、連続勤務とならないような休日の確保状況や、勤務間インターバル(勤務と勤務の合間の休息)が11時間未満となっている勤務の有無が判断基準となります。これまでは、「勤務間インターバルの導入は任意」とされてきましたが、今回の過労死ラインの見直しによって欠かせない仕組みとなるでしょう。
年5日の有休取得義務化はもちろん、日々の休息時間の確保についても、できるだけ早急にチェック・指導できる仕組みを整備しましょう。

3.従業員が健康について相談しやすい環境を整備する

健康障害を防ぐためには、従業員自身や周りが不調に気づきやすく、気付いたときにすぐ相談できるような社内環境づくりも必要です。
現在、従業員が50人以上いる企業にはストレスチェックが義務づけられていますが、ストレスチェックは実施するだけでなく結果をしっかり分析し、職場環境の改善に活かすことが大切です。実施義務対象でなくてもこうした制度を利用して職場環境の改善に努めましょう。

メンタル不調や健康障害の予兆を自動検知できる
勤怠管理システムを選ぼう!

長時間労働によるメンタル不調や健康障害は、大きな社会問題の1つです。その目安となる過労死ラインが、事実上、労災認定のボーダーラインではなくなってしまった以上、いかに適切に予兆をキャッチできるかがカギとなります。

そこで、日々従業員の労働時間を管理している勤怠管理システムを有効活用しましょう。
例えば、日々の累積労働時間をタイムリーに把握し、36協定の上限を超えないようにマネジメントをアシストできる機能は、長時間労働を防ぐためにも必須になってくるでしょう。また、勤怠の乱れから健康障害が発生しそうな兆候を事前にキャッチできる機能もあれば、適切な措置を早めに講じることも可能になります。対象者に対して自動的にフォローをすることもできれば、手作業で個別に行う必要もありません。他にも、勤怠状況から休息不足者を把握できれば、該当者に適切な休息を取るよう促しやすくなります。
このように、勤怠管理システムの機能を有効活用することで、スムーズかつ迅速に「安全・安心な労働環境」を実現することができるのです。

例えば奉行Edge勤怠管理クラウドでは、時間外労働を自動集計のうえ、期間別に設定した警告レベルを超過したタイミングで従業員本人やその上司に自動でアラート通知することができます。
勤務間インターバルにも対応しており、前日の退出時刻と翌日の出勤時刻を確認して、充分な休息がとれていない従業員を自動でリスト化することができます。対象者の上司へは、日々の残業時間と合わせて毎月自動送信することもできるため、分析から報告まで一度に完了でき、漏れなく・迅速に健康マネジメントが行えます。

出張や夜勤などの回数も、残業時間や休日出勤日数などと同様に集計できるので、今回新たに追加された「時間外労働以外の付加要因」についてもシステム上で管理できます。

また、奉行Edgeメンタルヘルスケアクラウドと連携すれば、勤怠情報を分析して遅刻・欠勤・早退など勤怠の乱れからメンタル不調の兆候を検知し、本人と総務の双方に自動通知することができます。勤怠管理から従業員のメンタル不調や、身体的負荷のかかる業務の有無を早期に把握することで、予兆を早くに察知し、悪化する前に対処することも容易になります。
奉行Edgeメンタルへするケアクラウドには、メンタルヘルスに精通した専門家による相談窓口サービスもあるため、プライベートを含めたメンタル不調の悩みをいつでも相談できる仕組みが簡単に整備できます。

長時間労働が慢性化していないか、まずは確認を!

企業には、従業員の健康と安全を守る義務があります。「過労死なんてそう多く起こるものではない」と考えがちですが、長時間労働が慢性化していると、いつ労災認定案件になるか分かりません。労災認定となるような事態を避けるためにも、まずは自社の労働環境が適正かどうか、現状をしっかり確認しておくことも重要です。
労働時間の実態を正確に把握することは、その第一歩に過ぎません。過労死や健康障害を未然に防ぐためにも、まずは勤怠管理システムが有効活用できるかを確認しましょう。

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