コロナ禍のメキシコ現地法人 ~withコロナ時代の企業体制維持及びガバナンス強化の秘訣~
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感染の一途をたどるメキシコ。最悪ともいえる状況で日系企業が打つ手はあるのか?新型コロナウイルスの感染者数が世界6位の約60.6万人、死亡者数は世界4位の約6.5万人となったメキシコ(2020/9/1時点)。収束の兆しは見えないが、貧困層への影響を考慮し、経済活動を再開している。 メキシコは以前から治安の悪さや政情不安の懸念があった。さらに日本から遠く言語、商習慣、時差などにより、メキシコ子会社を持つ日系企業は現地の状況把握に苦労していた。 そこにコロナ禍が起こり、日本に一時帰国した駐在員がメキシコに戻れない、内部監査に行けないことにより、現地は一層ブラックボックス化している。 新型コロナウイルスに翻弄されるメキシコで日系企業は企業活動を続けられるのか? メキシコ子会社の現状と課題、そしてwithコロナ時代に求められる企業活動維持手法及びガバナンス強化手法をメキシコ在住のプロフェッショナルが解説する。
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目次1.メキシコにおける新型コロナウイルスの状況
▲メキシコにおけるコロナウイルスの状況
2020年9月現在、メキシコは感染者数約60.6万人で世界第8位、死亡者数は約6.5万人で世界第4位というかなり厳しい状況です。しかもPCR検査費用が日本円にして約3万円と高額であることから、実は検査数が少ないという現状もあるため、実際の感染者数は公表数値よりもさらに多い、と言われています。
最初の感染者はイタリア渡航をしたメキシコ人でした。その後もヨーロッパから帰国した人の感染が相次ぎ、2020年3月24日に保健省令で「健全な距離確保全国キャンペーン(JNSD)」を開始、3月30日には緊急事態宣言を発令し、医療、食品、輸送、治安維持等の必要不可欠な業務以外を一定期間、停止する措置を発表しました。
感染者数は拡大の一途をたどる中、2020年5月18日には、経済への影響を懸念し自動車産業再開に向けた安全衛生指針を発表、6月1日以降は段階的に経済活動を再開しています。
メキシコ特有の取り組みとして、メキシコ政府は「信号機システム」というものを導入しました。
新型コロナウイルス感染拡大の危険度を色で表すシステムで、最も危険な状況である赤から、オレンジ→黄色→緑と4段階で表現されています。ただし、必要不可欠と認められている業務に関しては色に関係なく活動することが可能です。
必要不可欠ではない業務に関しては、テレワークが推奨されています。また学校も3月から閉鎖されており、現在はオンライン授業が導入されています。2.メキシコ子会社を持つ日系企業からの相談に見る現状と課題メキシコに子会社を持つ日系企業は現在どのような状況なのか、当社にいただくお問い合わせ内容から現状と課題を解説します。
1つ目は、「補助金や支援策」です。
政府調査によると93.2%の企業が新型コロナウイルスにより悪影響が出ていると回答している状況ですが、政府の支援策はほとんどありません。日系企業が使えるとしたら、個人所得税の納付期限延長です。ただこれも納付期限が4月から6月に2か月延長しただけであり、減額はありません。
▲件数の多い問い合わせ、コロナ禍で急激に増えたのはNo3~5
2つ目は「賃金カット、就業規則変更」です。
他社の在宅勤務、給与減額の状況はどうなのか、というお問い合わせを数多くいただいています。在宅で仕事ができる状況であれば減額はしていませんが、工場勤務で出勤が出来ないなどの場合は、従来に比べて75~80%に減額する企業はありました。ただその場合も、労働組合と協議を行った上で、減額を決定する必要があります。
3つ目から5つ目は、コロナ禍で急激に増えたお問い合わせです。
まず3つ目は「財務調査・業務内容調査」です。
現在、外注を依頼している会計事務所作成の財務諸表の数値に疑義があるため財務調査をしてほしい、そもそもメキシコ子会社の業務実態が把握できていないので調べてほしい、と言った内容です。
4つ目は「月次記帳代行・税務申告書作成」で、こちらも依頼している会計事務所作成の財務諸表の数値に疑義があるという理由でした。また、会計事務所への報酬額が高額なため変更したいという、コロナ禍によるコスト削減意識の高まりも理由になっています。
最後に5つ目は「個人所得税の再計算又は過年度申告書の作成」です。
こちらもまた、依頼している会計事務所作成の個人所得税計算に疑義があるという理由が多いようです。
なぜ3つ目以降のお問い合わせが増えたのかを当社なりに推測しました。
今までメイン業務である営業や製造に時間を割いていた日本人管理者の方が、コロナ禍でメイン業務をストップせざるを得なくなり、空いた時間で財務諸表や所得税申告について改めて確認する時間が増えたことで、これまでの財務諸表や税務申告書に疑問をいただいたのではないかと考えています。
上記、5つのお問い合わせから、メキシコ法人が抱える2つの課題が見えてきます。
①財務諸表の正確性と健全性の確保
②社内管理体制や内部統制の構築・強化
メキシコ子会社では、従来から横領や横流しと言った不正が大きな問題になっていました。そして管理体制への懸念もコロナ禍で浮き彫りになってきています。コロナ禍で日本本社の方がメキシコに渡航することできないため、現地を知り会計に精通した当社のようなコンサルティング会社へのアウトソースによって現状を打開しようとお考えの企業が増えています。3.新型コロナウイルスがもたらす環境変化にどう対応すべきかコロナ禍になり、海外子会社を抱える多くの企業が、生産性の向上の必然性と気づきを実感しています。 コロナ禍の影響で、子会社の売上・キャッシュは大幅に落ち込み、コスト削減が急務です。そしてテレワーク等の勤務施策を経て、デジタルトランスフォーメーションの実現が欠かせないことに気づきはじめています。
たとえば当社もメキシコに2拠点オフィスを構えていましたが、この機に1拠点を閉鎖しました。これは業績の悪化が原因というわけではなく、テレワークの普及等推進により、より従業員が多いレオン拠点を残せば十分対応できると考えたからです。
また全世界での会計システム統合を目指す企業も増えています。
これまでは国内主要会社のみの会計システムを統合するにとどまり、国内非主要子会社や海外子会社は後回しにされてきました。その結果、連結パッケージのやり取りはExcelで作成された電子データをメールでやり取りをすることになり、集計に時間がかかる、タイムリーに業績を把握できない、本社側から詳細な内訳がわからないなどの問題が起こっていました。子会社側も本社からの要求に応える手間やストレスがありました。
それら問題を、コロナ禍を機に会計システムの活用で一気に解決しようと踏み出しているのです。
▲今こそ会計システム統合の機会
コロナ禍で外部のコンサルティング会社を活用してメキシコ子会社の実態把握に乗り出す企業が増えていること、会計システム統合でガバナンス強化体制の整備と業績把握を実現しようと踏み出す企業が増えていることなどから、メキシコ子会社が抱える課題を解決する2つの策が見えてきます。
1.外部リソースの活用(アウトソーシング)
2.ボーダレスな情報基盤の整備(DX:デジタルトランスフォーメーション)4.メキシコ現地外部リソース活用(アウトソーシング)事例それではどのような業務をアウトソーシングすることが有効なのか、ご依頼いただくアウトソーシング事例で解説します。
▲メキシコ現地外部リソース活用(アウトソーシング)事例
まずは、「会計記帳代行及び税務申告業務」です。
記帳業務代行、月次税務申告書作成・提出を代行しています。メキシコの場合は、税務申告書の提出を電子データで行う必要があるため、国税庁のホームページにあるクライアント企業のアカウントをお借りし、月次税務申告書を代理で提出しています。
また、「電子インボイスの発行」も承っています。
メキシコでは、電子インボイスが必須で紙のインボイスは使えません。電子インボイスの発行は少々複雑なため、メキシコ人スタッフでもすぐには作成できず当社に依頼いただくケースがあります。
「送金業務」も代行可能です。
日本人管理者は、営業や製造に特化したく、かつ、設立当初のメキシコ人従業員にも会社のメイン事業に従事してほしいため、送金準備業務を依頼させるケースがあります。5.メキシコ現地法人設立アウトソーシング事例メキシコでは、現地法人設立に必要な書類はすべてスペイン語で作成する必要があります。また、外国人社長の場合、労働ビザ取得まで各種書類への署名ができないという実務があります(通常期でも会社設立から労働ビザ取得まで4カ月がかかります)。管理系人材を派遣する余裕もなかったことから、当社にアウトソーシングの依頼をいただきました。
会社設立直後の必要な業務(税務当局、移民局、社会保険庁及び州当局への登録手続き、銀行口座開設等の業務)を当社がサポートすると同時に、当社従業員が同社の法定代理人となり、各種書類に署名できるようにしました。日本本社の方が株主としてメキシコに訪問することなく会社設立が可能であり、かつ設立後も管理業務を当社で代行し、現法管理も実現しました。
▲アウトソーシング事例:現法設立6.ペソ建て・ドル建ての帳簿管理を実現、クラウド会計システム導入事例メキシコでは、政府が用意している税務申告サイトSATと現地会計システムであるCONTPAQiを組み合わせて使うことが一般的です。
しかし、CONTPAQiから出力した会計データはペソ建てかつスペイン語もしくは英語のため 、本社で確認するには、USドル建てかつ日本語に変換する必要があります。そのため、CONTPAQiからExcelに会計データを出力し、Excel上で通貨切り替えや翻訳作業を行ってから、本社のシステムへ連携させていました。
運用が複雑かつタイムリーな業績把握もできていなかったため、CONTPAQiから出力したデータを勘定奉行クラウドGlobal Editionでいったん読み込み、自動的に通貨切り替え・翻訳を行い、さらに直接本社の連結会計システムに連携させる仕組みに変更しました。
その結果、タイムリーな業績把握と決算早期化を実現することができました。メキシコ子会社の会計データを連結会計システムに読み込むまでの業務を、半自動と呼べる状況にまで改善することができたのです。
▲メキシコにおける勘定奉行クラウドGlobal Edition導入効果
コロナ禍が始まって数か月経過しました。当初の混乱は落ち着き、生産性向上の必然性と気づきを感じて動き出す企業が増えています。外部リソースの活用やデジタルトランスフォーメーションを実現し、新常態に適応した筋肉質な企業に生まれ変わるなら今です。この機をチャンスととらえて迅速に動けるか、近い将来の企業の明暗を分ける過渡期なのかもしれません。
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フェアコンサルコンサルティング メキシコ ゼネラルマネージャー /日本国公認会計士 伊東 秀治氏大学卒業後、中南米で7年半を過ごし、日本外務省専門調査員としてコロンビアの日本大使館で政務担当を務めた。メキシコ国立自治大学大学院修了。日本帰国後、大手監査法人で会計監査や、M&Aデューデリジェンスなどに従事。2013年にフェアコンサルティングに参画し、ベトナムのホーチミンで会計・税務・会社設立業務に従事した後、2016年よりメキシコ中央高原で日系企業を精力的にサポートしている。
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株式会社フェアコンサルティング 玉村 健氏大手外資系コンサルティングファームを経て、日本トップシェアの連結会計システムベンダーで製品企画や中西日本地域コンサルティング部門責任者として従事。 フェアコンサルティングでは、日本企業にグローバルソリューションを提案する部門の責任者を務めるとともに、 システムソリューション事業責任者としてグループマネジメントシステムやクラウド型グローバル会計システムのソリューション提供を行っている。
※掲載している情報は記事更新時点のものです。
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