従業員に毎月給与を支給するにあたって、労務担当者が毎月必ず行わなければならないのが、給与計算業務です。この業務の効率化を目指すなら「給与計算ソフト」の導入が便利です。とはいえ、給与計算ソフトにはたくさんの種類があり、どれを選べばいいのかわからないという労務担当者の方もいることでしょう。
そこでこの記事では、給与計算ソフトの基本的な機能や選び方、選ぶ際の注意点などをご紹介します。給与計算業務の効率化を目指したい方や給与計算ソフトを比較したい方は、この記事を参考にしてみてください。
目次
- 給与計算ソフトとは、給与計算に関する業務の一部を自動化できるソフトのこと
- 給与計算ソフトの主な機能
- 給与計算ソフトの種類
- 給与計算ソフトを選ぶときのポイント
- 企業のタイプ別・給与計算ソフトの選び方
- 給与計算ソフトの導入成功事例
- 給与計算ソフトを切り替える際の注意点
- 自社に合った給与計算ソフトを見つけよう
給与計算ソフトとは、給与計算に関する業務の一部を自動化できるソフトのこと
給与計算ソフトとは、給与計算に関する機能の一部を自動化できるソフトのことです。「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」」と法律で定められています。そのため、労務担当者は、毎月勤怠の取りまとめと残業代などの計算のほか、雇用保険料や所得税の計算などをしなければなりません。
加えて、社会保険料や住民税に関連する事務、入退社に伴う手続きなど、給与に関連する業務は多岐にわたります。給与計算ソフトを使えば、これらの業務の一部を自動化し、正確な手続きや計算ができるのです。
給与計算ソフトの主な機能
給与計算ソフトでは、どのようなことができるのでしょうか。ここでは、給与計算ソフトの主な機能について解説します。
給与計算に関する機能
多くの給与計算ソフトでは、次のような手順で給与計算を自動で行っています。
<給与計算ソフトを使った給与計算手順>
- 従業員の雇用形態や生年月日などを登録して従業員マスタを作成
- 従業員の基本給や諸手当を登録
- 通勤交通費や住民税、社会保険料、扶養状況といった毎月同一のデータを登録
- 月々の従業員の勤怠状況を登録
- 「4」をベースに、残業代など支給額の計算を自動で行う
- 「5」の結果をもとに、雇用保険料や所得税など控除計算を自動で行う
- 「4」と「5」をもとに、振込額の計算を行う
- 給与明細を出力する
基本給や通勤交通費などに変更があった場合の手続きと、住民税や社会保険料の登録、勤怠状況などの登録を行うだけで、給与額が自動計算される仕組みです。 変動する残業代や税金を手計算する必要がなくなることからミスが起こりにくく、正確な計算ができるようになります。
また、賞与についても賞与支給額を登録するだけで、それまでの給与支払履歴から自動で所得税率を算出し、支給額の計算を行えます。
年末調整時も、控除関連の情報を取りまとめて入力をするだけで、年間支給額と控除額をもとに年税額を算出し、毎月の給与から徴収してきた所得税額との過不足を調整するので、人の手がかかりません。源泉徴収票の発行や賃金台帳の出力も可能です。
給与計算に関連する機能
給与計算ソフトの中には、給与計算に関連する業務も対応可能なソフトもあります。給与計算に関連する業務とは、次のようなものです。
<給与計算と関連する業務>
- 勤怠・労務管理
- 社会保険関連手続き
特に、勤怠・労務管理や社会保険関連手続きは、給与計算と密接に関わる業務です。まとめて処理できるシステムを導入することにより、給与計算関係の業務効率化に大いに役立ちます。勤怠時間を自動で計算し、給与計算ソフトに反映させることができるシステムであれば、勤怠締め日に勤怠時間を取りまとめる必要もなくなるでしょう。
社会保険関連手続きができるソフトでは、標準報酬月額の見直しのための「算定基礎届」と「月額変更届」の自動作成や電子申請、入退社手続きなどもできます。窓口に行くことなく、オフィスで簡単に手続きを終えられるため、業務効率化に貢献します。
働き方改革を推進できる機能
給与計算ソフトの中には、人事評価をはじめ、残業時間が一定レベルを超えるとアラートを出せる機能を有した人材管理に対応できる製品もあります。残業の抑制や、法律による上限規制の遵守にも役立ちます。
さらに、有給休暇管理もできる給与計算ソフトであれば、2019年4月からスタートした有給休暇の取得義務など、働き方改革に向けた取り組みにおいても貢献するでしょう。
給与計算ソフトの種類
給与計算ソフトは、「クラウド型」と「オンプレミス型」の大きく2種類に分けられます。ここでは、給与計算ソフトのそれぞれのタイプについて解説します。
クラウド型給与計算ソフト
クラウド型の給与計算ソフトは、ソフトを自社のサーバーやパソコンにインストールするのではなく、インターネット上からサービスにログインすることで利用できるタイプです。自社でサーバーなどを用意する必要がないことから、手軽に導入できる点が魅力です。クラウド型なら、インターネットにつながっていれば、場所を問わずにデータへのアクセスが可能となります。
さらに、クラウド型の給与計算ソフトには、法改正や社会保険料率、税率の改定などがあった際、自動でプログラムアップデートが行われるというメリットもあります。 サービスを提供している企業が一括管理するため、手動でアップデートをしなくても、自動的に最新の法令に則った給与計算が可能です。
オンプレミス型給与計算ソフト
オンプレミス型の給与計算ソフトは、社内のパソコンやサーバーに給与計算システムを構築するタイプです。インターネット接続の有無にかかわらず、システムを利用できるのが特徴です。
ただし、そのために利用するパソコンを用意したり、複数名で利用する場合にはサーバーを用意したりする必要があるため、クラウド型と比較すると導入時に時間やコストがかかります。さらに、ランニングコストとしてサーバー保守費用などが発生するため、給与計算システムに一定のコストをかけられる企業向けといえるかもしれません。また、法改正などがあった際は、自社でプログラムのアップデートをする必要があります。
給与計算ソフトを選ぶときのポイント
クラウド型の給与計算ソフトには、さまざまな種類があります。ここでは、給与計算ソフトを選ぶ際に、着目すべき5つのポイントをご紹介します。 なお、大前提としてセキュリティの高さも重要となりますので、外部認証の有無やセキュリティ体制について確認するようにしましょう。
運用性
手間をかけずにデジタル化のメリットを得るなら、最初から効率の良い運用ができる設計になっているソフトを選択するのがおすすめです。ソフトに合わせて運用していくだけで生産性の向上につながるでしょう。
利用者側が運用を設計できるタイプのソフトもありますが、このようなタイプは、自社に適した形になるように工夫して運用を設計する必要があるので注意が必要です。
機能性
給与計算ソフトの説明には、「何ができるのか」が必ず明記されています。しかし、単純に機能の有無だけを比較して選ぶのはあまりおすすめできません。同じように「給与計算業務」と書かれていても、細かい機能はソフトによって異なるからです。現在の自社の実務を踏まえ、それを問題なくカバーできるかどうかは、担当者レベルで確認する必要があります。
操作性
ソフトの操作性は、労務担当者がストレスなくスムーズに作業できるかに関わる重要なポイントです。レスポンスの早さや見やすい画面設計、求めている情報を得るまでにかかる操作の手数といった、細かいポイントを意識して設計された給与計算ソフトを選びましょう。それらを意識していない給与計算ソフトでは、実務にかかる手間と時間を思った以上に要することがあります。
拡張性
他業務との連携がとれる給与計算ソフトなら、人事・労務関連業務全体の効率化に貢献します。
勤怠管理や労務管理、年末調整、マイナンバー管理といった業務は、管理項目が重なるものです。すべてを一括管理することで、業務の効率化と確実性の向上が図れるでしょう。
なお、給与計算ソフトのメーカーが提供している業務ソフトであれば、データは完全自動連携できます。拡張性を検討する際には、自社の将来を見据えながら、メーカーごとのサービスラインナップを確認し、自社業務にどこまで対応可能かを見極めてからソフトを選ぶことをおすすめします。
サポート体制
給与計算ソフトのスムーズな乗り換えには、導入時の支援サービスが充実したものを選びましょう。それらが充実した給与計算ソフトなら、不明点をすべて解消した状態で新しい仕組みに移行できます。本格稼働後も、サポート体制が整ったソフト提供会社なら、問題が発生した際にすぐに対応してもらえて安心です。
毎月の給与計算は、遅れるわけにはいかない重要な業務。だからこそ、迅速に問題を解決できる体制が整ったソフトを選びたいところです。
企業のタイプ別・給与計算ソフトの選び方
給与計算ソフトの選び方は、企業のタイプによっても変わります。長く事業を続けてきた中小企業、小規模事業者やスタートアップ企業など、それぞれにおすすめの給与計算ソフトをご紹介します。
長く事業を続けてきた中小企業向けの給与計算ソフト
長く事業を継続していて、総務・人事業務に精通した担当者が常駐している中小企業では、現在の給与計算業務からスムーズに移行しやすい給与計算ソフトを選ぶのがおすすめです。オンプレミス型の給与計算ソフトを利用している企業であれば、同じメーカーのクラウド型のソフトを選ぶと、操作画面などの違和感もなく、移行しやすいといえるでしょう。
また、単純に業務を置き換えるだけでなく、生産性向上につながるかどうかも選定のポイントとなります。業務の自動化やペーパーレス化によるメリットがどの程度得られるのか、試用期間中に確認してみてください。 例えば、OBCの「給与奉行クラウド」では、給与計算の自動化とペーパーレス化によって、業務効率化に貢献します。
小規模事業者やスタートアップ企業向けの給与計算ソフト
経営者自身が給与計算をしているような小規模事業者や、自社の総務・人事業務がまだ確立されていないスタートアップ企業などは、労務担当者の業務知識やITリテラシーに合わせ、使い勝手の良い会計ソフトを選びましょう。まずは体験版を使ってみて、直感的に操作できるかどうかを試してみてください。
特に、総務・人事業務に精通した担当者が常駐していない企業では、直感的な操作で給与計算や給与明細の作成ができるソフトが適しています。
給与計算ソフトの導入成功事例
給与計算ソフトの導入によって、どのような業務効率化が可能になるのでしょうか。給与計算ソフトで業務効率化につながった事例として、OBCの「給与奉行クラウド」導入した企業2社の例をご紹介します。
スローガン株式会社:担当者の待ち時間が発生しないスムーズな業務を実現
スローガン株式会社では、リアルタイムのデータ共有ができ、担当者の待ち時間が発生しないスムーズな業務を目指して、給与計算ソフトの乗り換えを実施しました。
OBCのクラウド給与計算ソフト「給与奉行クラウド」は、複数の人間が同時に分担作業を行えることから待ち時間が発生せず、社会保険労務士や税理士ともリアルタイムで正確な情報共有が行えます。導入によって、業務のスムーズな遂行が可能になりました。
また、「給与奉行クラウド」では、自社の運用を変えずに、これまでどおりの業務を継続できる点も魅力でした。計算ロジックが固定されていないことから、柔軟な計算式の設定が可能になると同時に、ペーパーレス化によるテレワークの実現や、給与処理にかかる工数の半減にも成功しています。
給与計算ソフトを切り替える際の注意点
給与計算ソフトを別のシステムに切り替えるときは、いくつか注意すべきポイントがあります。給与計算は毎月必ず発生する業務。トラブルが起きないよう、切り替えに際しての注意点をご紹介します。
これまで使っていた方法と並行して切り替える
給与計算ソフトの切り替えは、これまで使っていた給与計算の方法と並行して、順次行うようにしてください。
例えば、1月から新しい給与計算ソフトに切り替えたいとします。1月からいきなり新しいソフトに全面的に切り替えると、不具合やミスが起こった際のリカバリーが効かなくなるおそれがあります。
そこで、本格導入前の2、3ヵ月分の給与計算は、これまで行っていた方法と並行して運用するのです。このときに大切なのが、実際の給与支給や明細発行は、従来の計算方法で行った結果にもとづいて実施すること。
その上で、新しいソフトの計算内容と齟齬がないかどうか、数字を照らし合わせます。数ヵ月間、問題がないことが確認できてから、本格的な切り替えを行うようにしてください。
新しいソフトで正しい計算ができなくても、従来の方法を継続していれば、給与支払日直前に慌てる必要もありません。
複数のソフトを比較検討する
給与計算ソフトには、いくつか種類があります。最初からひとつの給与計算ソフトの導入にこだわるのではなく、機能性や拡張性などを比較しながら、導入するソフトの候補を複数選定しましょう。
給与計算ソフトの多くは、無料トライアルサービスの活用やデモンストレーション体験が可能です。実際にソフトを動かしてみないと、操作性やレスポンスの良さはわかりません。労務担当者が、実際に操作した上で検討してください。
導入に不安があるときはサポート体制が手厚いソフトを選ぶ
給与計算ソフトの導入がスムーズにいくかどうか不安な場合は、サポート体制が手厚い給与計算ソフトを選ぶのがおすすめです。
「手軽に導入できる」ことをウリにした給与計算ソフトでも、実際に業務を始めてみようとすると、思わぬところでつまずいてしまうことも。ソフトの導入完了まできちんと支援してくれるサービスがある会社なら、適切なアドバイスをもらえます。
導入のサポート体制を確認する際は、サポートの内容、対応時間のほか、出張サポートやリモートサポートの有無などを確認しておいてください。
併せて、問い合わせをした際の対応も参考になります。質問に丁寧に答えてくれるかどうか、担当者の知識レベルが適切かどうか、信頼できる企業かどうかといった点を確認しましょう。
自社に合った給与計算ソフトを見つけよう
クラウド型の給与計算ソフトは多くの場合、無料トライアルサービスの利用期間を用意しています。自社に合ったサービスを見つけるために、無料トライアルサービスを活用してみてはいかがでしょうか。
ただ、テキストによる説明や動画だけを見ていても、実際の操作感はわかりにくいもの。労務担当者が実際にソフトを動かしてみて、現行業務に対応できるかどうか検討することが大切です。
OBCのクラウド給与計算ソフト「給与奉行クラウド」は、給与業務の生産性向上に貢献する給与計算ソフトです。業務フローを変えることなく、スムーズな自動化が可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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