今、DX(Digital Transformation)が注目を集めています。政府にもデジタル庁が新設され、国を挙げてDX推進に取り組んでおり、様々な行政手続き、申告手続きが電子化されています。
しかし、DX自体はまだ「大手企業を中心とした社会運動」のイメージが拭いきれず、コロナ禍で企業がテレワークをせざるを得ない状況に置かれたことで、「DX=ペーパーレス化」という誤った認識があることも報告されています。
そこで今回は、DX推進とペーパーレス化の関係について理解を深めるとともに、まず始めに取り組んでおきたいバックオフィス部門でのDX・ペーパーレス化のポイントをご紹介します。
目次
- ペーパーレス化はDX推進の第1歩
- ペーパーレス化・DX推進はバックオフィス部門から始めよう!
- バックオフィスのDX化・ペーパーレス化がもたらすメリット
- ビジネスプロセスを一貫してデジタル化できるサービスを選ぼう!
- おわりに
ペーパーレス化はDX推進の第1歩
ペーパーレス化とは、紙の書類・資料を電子データとして活用・保存することです。書類の出力・発送・管理によるコストが削減できるほか、そこにかかる人的リソースも削減できるため、企業にとって導入するメリットは非常に大きいとされています。
これまで日本では、多くの業務でペーパーレス化が課題とされてきたものの、なかなか定着できませんでした。その理由には、「電子化が難しい」「セキュリティが不安」「慣習を変えたくない」「社内に浸透しない」など、多くの要因が挙げられています。会社法や商法、法人税法などの法令でも、長年、国税関係帳簿・書類を始めとする多くの書類は「紙での保管」が義務づけられていたため、ペーパーレス化を企業課題と捉えつつも、その対策は後回しになりがちでした。
しかし今、そうした流れがDXの推進によって一変しようとしています。
もともとDX推進が求められるようになったきっかけは、経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」にあります。このレポートで、日本企業のデジタル変革が遅れることで、2025年以降、最大年12兆円の経済損失となる可能性が指摘されました。
その後発表された「DXレポート2」では、DXがコロナ禍対策としても「直ちに取り組むべきアクション」であることが示唆され、その1つとして「クラウドストレージを用いたペーパーレス化」が掲げられました。
DXは、データやデジタル技術を使って顧客視点で新たな価値を創出していくことです。そのためには、企業が有するあらゆる情報がデータ化していなければなりません。つまり、ペーパーレス化はDX推進の大前提になる取り組みと言えるのです。
ただし、ここでいうペーパーレス化は、単に「紙の書類をデータ化すればよい」というものではありません。紙に手書きして管理していた情報をExcelなどでデータ管理するだけでは、DXは成立しないからです。
DXが必要とする「ペーパーレス化」は、業務そのものが手作業からデジタルにシフトする「ビジネスプロセスの変革」を実現することを指します。DXに着手する際には、「プロセスの削減・手作業の削減」という観点でペーパーレス化に取り組む必要があることを理解しておきましょう。
ペーパーレス化・DX推進はバックオフィス部門から始めよう!
DX推進のために、全社の仕組みを一気にペーパーレス化するのは簡単ではありません。
DX化には、「社内のITリテラシーやIT技術の仕組みが整っていなければ難しい」といわれます。これまで報告されているペーパーレス化の失敗例でも、これらの重要性が指摘されています。
しかし、この課題をクリアするにはIT教育の実施やIT人材の確保、システム等の環境整備などの投資が必要になり、コストも時間もかかることになるでしょう。
全社DXをできるだけ早期に実現したいなら、「できるところから」「スモールスタートで」取り組むのがよいとされています。そこでオススメしたいのは、企業の屋台骨であるバックオフィス部門から業務プロセスの変革=ペーパーレス化に取り組むことです。
バックオフィス業務には、入力・集計・出力など、誰が行っても同じ結果を出すことが求められる業務が数多くあります。こうした業務から自動化することで、ビジネスプロセスと時間を大幅に削減することができ、特定の業務だけでなく、関連する業務でもペーパーレス化が進みます。
特に、バックオフィス業務は、法改正の影響を大きく受けます。改正電帳法やインボイス制度(デジタルインボイスの導入)などは、バックオフィスのビジネスプロセスそのものをDX化することが目的といえます。こうした変化への対応が遅れると、法令違反・制度違反になってしまうため、施行までにはペーパーレス化を実現する仕組みに切り替えなければなりません。
また、DX推進の目的は「顧客視点で新たな価値を創出していくこと」にあるため、とかくフロントオフィス部門での推進に関心が集まりやすいですが、バックオフィス部門で取り扱う情報がデータ化され、フロントオフィス業務とデータ連携できる環境が整っていなければ、顧客対応のスピードアップを図ることも難しくなります。
バックオフィス部門が取り扱う経理業務、人事労務業務、販売管理業務は、すべて経営資源となる情報でつながっています。バックオフィス一丸となってDXを進めることは、全社的なペーパーレス化環境を形成することにもなるのです。
バックオフィスのDX化・ペーパーレス化がもたらすメリット
これまでも、ペーパーレス化のメリットには、業務の効率化やコスト削減、紙資源の削減など様々あることが知られていますが、バックオフィスのDX化でペーパーレスが進むと、次のような効果が期待できます。
●業務の生産性向上
DXによってビジネスプロセスが手作業からデジタルに置き換わることで、業務の処理速度が圧倒的に短縮されます。人が行う手作業のプロセス自体が削減されるため、担当者は空いた時間を経営分析や経営判断に役立つ指標の抽出、人材育成など、本来取り組むべき業務に打ち込むことができるようになります。
●業務の精度アップ
定型業務がデジタルで自動化されることで、手作業によるミスやエラーも減り、業務の精度が上がります。また、業務手順も標準化されるため、業務の属人化も解消し、慢性的な人手不足でも品質を維持することができます。
●コスト削減
ペーパーレスが進むと、紙への出力・保管・郵送等にかかるコストが削減できることはよく知られていますが、業務が自動化することで、さらに人件費・時間コストも削減できます。DXに必要なITツールの導入費用はかかりますが、長期的に見れば高い費用対効果が見込めます。
●多様な働き方の実現
DXを進めると、オフィス外でもインターネットを介して全ての業務に対応することができます。どんな場所にいても働けるため、介護や育児など家庭の事情を抱える従業員の離職抑止にもなります。また、働き方が多様化することで就職希望者の好感度も上がり、人材確保につながりやすくなります。
●BCP対策
昨今は災害や非常事態も増えていることから、DX化はBCP対策にもなります。ペーパーレス化していれば、出社が困難な状況下でも業務を滞りなく進めることができるため、事業継続の面でも大きな効果をもたらします。
●環境保護、SDGs対応
今、SDGsを始め、世界的にサステナブルなビジネスが求められています。バックオフィス部門は紙の書類が多くなりやすいため、DX化することでペーパーレス範囲がどんどん広がり、資源を無駄にしないサステナブルでエコロジーな企業体質に変容できます。
このように、DXは長年取り組んできた経営課題を解決できる環境が整備できます。バックオフィスのDX化を足がかりに全社的にDXを発展させることで、組織、文化、働き方といった内部エコシステムの変革につなげることができるのです。
ビジネスプロセスを一貫してデジタル化できるサービスを選ぼう!
今市場では、様々な業務のアシストを行うクラウドサービスが数多く提供されています。その中から、自社にとって最適なサービスを選ぶのに、四苦八苦していないでしょうか。
キャッチコピーで「ペーパーレス化」「DXを実現」と銘打っていても、ベンダーごとにそれぞれ実現の方法や特徴は異なります。企業が求める機能も業務内容によって変わるため、自社の現状をしっかり把握し、「何を優先すべきか」に従って選定することが大切です。
ただ1つ、どの企業にも共通して言えるのは、「単一作業だけをペーパーレス化してもDXは実現しない」ということです。
総務省の「情報通信白書 令和3年版」でも指摘されているように、デジタル技術を用いた単純な省人化や効率化、自動化だけではDXとは言えません。継続的かつ横断的にビジネスプロセスをデジタル化することで、ビジネスが発展できる状態を作ることが、DXの真の定義なのです。
そのため、バックオフィスにDXサービスを導入する際は、特定業務のデジタル化だけに留まらず、データの多角的活用と一貫したデジタル運用を実現するITツールを選ぶことが肝心です。
例えば、経理業務の場合、奉行クラウド 経理 DX Suiteのように証憑収集・承認フローからデータ管理まで、一連の経理業務をデジタル化するサービスがオススメです。
奉行クラウド 経理 DX Suiteでは、紙の証憑類はスマートフォンで撮影して、電子取引データはそのままで、PCやスマートフォンから自動アップロードするだけでAIが自動仕訳するため、紙の証憑を回収する必要も、紙の証憑を見ながら手入力する必要もありません。データの保管も、電子帳簿保存法の要件に沿ってクラウド上で自動的に一括管理します。また、金融機関から入出金データを自動取得して仕訳を自動起票したり、社内で作成したExcelの経費データなどを取り込んで自動起票したりすることもできます。さらには、仕訳から自動作成した支払予定表をもとに支払消込を行うだけで、FBデータ作成や支払伝票の起票も自動化でき、証憑収集から支払業務まで一連の流れで紙の書類を扱う作業がなくなります。
このように、紙ベースのビジネスプロセスを一貫して電子データで処理できるプロセスに置き換えることができれば、経理業務のビジネスプロセスも大幅に削減することが可能になります。
●奉行クラウド 経理 DX Suite 電帳法対応後のビジネスプロセス
また、奉行クラウド 経理 DX Suiteは、経営指標の抽出にも長けています。分析帳票をワンクリックでグラフ化し、実績推移や昨年対比で多角化に分析できる機能が標準搭載されているため、最速で正確に経営成果を確認できます。リアルタイムで経営状況を把握できるため、経営者は要因分析や経営課題の顕在化も迅速に行え、経営判断をよりスピーディに下すことが可能です。
●奉行クラウド 経理 DX Suite すぐに経営判断に活用できる50の分析視点
人事労務業務においても、社会保険申請や年末調整業務などの電子申請・電子申告だけでなく、人事データベースをどのように活用できるか、管理できるかがカギとなります。
奉行クラウド HR DX Suiteのように、総務・人事・労務の広い範囲をデジタル化するサービスなら、多くの業務を効率化することが可能です。奉行クラウド HR DX Suiteは、50種類・約1,100個の人事情報項目を完備し、人事労務業務に必要な人事情報項目があらかじめ全て用意されています。70の定型・非定型業務を網羅しており、標準的な業務プロセスで運用している企業であれば、次のような業務でペーパーレス化が一気に実現できます。
●奉行クラウド HR DX Suite 70の対応業務
おわりに
バックオフィス部門は、経営戦略に欠かせない「ヒト・モノ・カネ」情報が集結する部門です。これらの情報をデジタルデータで収集することができれば、取り扱う業務プロセスは全てデジタル化することができ、生産性を上げ、ミスのない精度の高い業務を実現することができます。そして、経営判断の迅速化を実現し、企業の未来を大きく飛躍させることも容易になります。
将来の経営力強化のために、自社に合った最適なDXサービスを導入し、バックオフィスからビジネスプロセスの変革を始めてみませんか。
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