人事採用や子供の入園・入学など、人の動きが激しくなる春先は、従業員から「在職証明書」を依頼されることが多くなります。
在職証明書は、一部の自治体などで指定用紙を用意しているところもありますが、提出先によって求める項目が変わるため、意外と書類作成に時間がかかりやすいものです。
そこで今回は、在職証明書で求められる記載事項や作成時の注意点、効率よく作成するためのコツについてご紹介します。
目次
在職証明書とは
在職証明書は、法令で定められた書類ではなく、「在籍証明書」「雇用証明書」「就業証明書」など企業によって呼び名も様々です。「従業員が(自社に)在職している」ことを証明することに用いられ、正社員やパート、アルバイトなど雇用形態に関わらず、従業員の希望に応じて企業が作成します。(派遣社員については派遣元となる人材派遣企業が作成します)
従業員から在職証明書を依頼されるケースには、次のような場合があります。
①保育園・保育所、一部私立学校などへの願書申請に
保育園や保育所などに入園・入所を申し込む際、在職証明書の提出を求められます。提出先では、在職証明書により、就労などで家庭保育が難しく日中は保育の必要性があることを確認します。そのため、すでに通園中の場合でも、毎年決まった時期に提出を求められることもあります。中には、母親の在職証明書とあわせて父親の在職証明書も求めるケースもあります。
他にも、一部の私立学校や中学校、高校でも入学願書の申請時に提出を求められることがあります。
②住宅ローンを組む際、賃貸住宅などを借りる際に
住宅ローンを申し込む際、勤務先を確認するため在職証明書を求められることがあります。また、賃貸住宅の場合でも、本人の支払い能力を審査するために契約時に在職証明書の添付が必要になることがあります。
③転職活動や副業活動の際に
例えば、地方公務員の社会人採用枠には「職務経験5年以上」などの要件があり、職務経験の証明として在職証明書の提出を求められることがあります。このように、従業員が転職を希望しており、履歴書や職務経歴書と照合するため転職予定先が在職証明書を求めているケースもあります。
また、副業や兼業をしている従業員からも、副業先・兼業先に提出するために依頼されることがあります。この場合提出先では、本業での能力・労働時間などを確認し、副業での稼働時間や生産性などの検討資料に用いたりします。
ただし、退職した元従業員からの依頼には、退職証明書が適切です。退職証明書は、労働基準法第22条に定められている企業の義務になるため、依頼を受けたら速やかに対応しなければなりません。
※退職証明書については、コラム「従業員の退職に伴う社会保険・雇用保険などの手続きと対応の注意点」も参照ください。
④外国人労働者の就労ビザ申請・更新に
外国人労働者が日本で働くにはビザを申請する必要があり、日本で居住するための在留資格も必要です。在職証明書は、それらの申請に欠かせない書類となります。また、外国人の転職者を雇用する場合も、当事者の就労資格証明書を取得する際に在職証明書が必要になります。
在職証明書を作成する際の注意点
在職証明書は、法令で定められた証明書ではないため決まった様式はありませんが、自由に作成してよいというものでもありません。提出先によって必要とされる情報が異なるため、求めに応じて作成するのが通例です。
そのため、作成の準備段階では次の2点に注意しておきましょう。
1.使用目的と指定フォーマットの有無、記載内容を確認する
例えば保育園や保育所の場合、在職証明書で確認したい内容は、勤務日数や1カ月の労働時間といった「日中の家庭保育が困難」と証明する数字です。自治体の勤務時間条例で定められた最低勤務時間を超えているかどうかも確認します。また、住宅ローンや賃貸住宅の契約では、在職証明書で契約者の月収や年収などを確認します。
このように、提出先によって在職証明書に求める要素は変わるため、在職証明書の発行を依頼されたら、まず従業員に書類の用途を確認することが大切です。
一般的には、次のような記載内容を求められます。
なお、自治体や学校などでは、指定の様式で提出することを求めるケースもあります。提出先に指定の書類があるかどうかも確認して対応しましょう。
2.従業員の人事情報を適切に抽出する
在職証明書は、担当者が従業員の用途を確認して、人事情報から必要な内容に即して記載します。手作業で人事情報を転記する際は、記載もれ、誤字などに注意しなければなりません。
また、在職証明書に記載する内容には、氏名や住所、生年月日など個人情報も多く含まれます。書類作成時には、情報漏洩がないように取り扱いや情報の管理方法にも注意しなければなりません。
在職証明書を手間なく作成するには
OBCのアンケート調査によると、担当者が在職証明書を10枚作成するのに1時間を要することが分かりました。在職証明書の作成は、基本的に従業員ごとの「オーダーメイド対応」になるため、どうしても時間がかかってしまう傾向にあります。その要因には、次の2点が関係していると考えられます。
●人事情報を探すのに時間がかかっている
在職証明書に必要な人事情報は、労働者名簿や住所録の他、雇用条件や給与情報など様々な項目で管理されている情報を、特定人物で抜き出す必要があります。しかし、それぞれの情報が紙の書類で管理されている場合、ファイルごとに一枚一枚書類をめくり、該当する従業員情報を探すことになります。
Excelで管理していれば、検索をかければよいと思われがちですが、複数のファイルを開いて検索するのは、却って効率を下げることにも繋がりやすくなります。
●転記・レイアウトを調整するのに時間がかかっている
提出先から指定された様式がある場合を除き、在職証明書のレイアウトはある意味で自由がききます。そのため、過去に作成した書類をもとに作成したり、インターネット上にある無料テンプレートを利用したりと工夫をする担当者は少なくないでしょう。しかし、提出先が求める項目に修正すると、レイアウトを変更せざるを得ない状況は生じます。
また、手書きであればなおさら、ExcelやWordのデータに手作業で入力する場合でも、記載ミスを0%にはできないため、確認にも時間がかかります。
在職証明書をミスなく効率的に作成するには、人事情報を一元管理する人事管理システムを活用するのが有効です。
例えば、総務人事奉行クラウドでは、従業員の氏名や住所、性別といった基本情報から履歴書、入社承諾書などの提出書類、給与計算のための情報など、1,000を超える従業員の個人情報をクラウドでまとめて管理することができます。
在職証明書のフォーマットも標準搭載されているため、発行したい従業員を選べば従業員情報がフォーマットに自動で入力されます。あとは印刷するだけで、在職証明書が完成します。印字項目を変えたい場合も、設定を切り替えるだけで記載事項を変更することが可能です。
提出先に指定様式がある場合も、ExcelやWordのフォームならシステムに取り込んで作成することができます。
また、奉行Edge労務管理電子化クラウドと併用すれば、従業員からの変更届もクラウドで自動的に更新・蓄積され、常に最新情報の人事情報が管理されているため、スピーディーかつ漏れや入力ミスもなく在職証明書を完成させることができます。
このように、システムを使って在職証明書を発行すると決めておけば、属人的な方法で処理されることはなくなり、担当者が変わる際の引き継ぎもスムーズです。
さらに奉行クラウドは、世界トップレベルのセキュリティで知られるマイクロソフト社の「Microsoft Azure」を採用し、日本の法律に準拠した日本国内のデータセンターのみで管理されています。全てのデータは暗号化して保管されるので、「人事情報の管理にクラウドサービスを利用するのはセキュリティ面で不安」という方にも安心してご利用いただけます。
おわりに
在職証明書が必要になるシーンは限られますが、従業員の母数が増えれば作成頻度も増します。発行依頼が多い春先などは、個別に対応していると通常業務の進行にも影響するかも知れません。
いつ依頼されるか予測しづらいため、いつ依頼がきても慌てないよう、簡単に作業ができる仕組みをあらかじめ検討しておいてはいかがでしょうか。
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