新型コロナウイルス感染拡大防止の対応として、在宅勤務/テレワークを導入している企業が増えています。緊急措置として導入するケースも多いため、徐々に課題も顕在化するようになりました。その1つが「在宅残業」です。
在宅勤務/テレワーク下での残業管理については、「原則残業禁止」にしていたり「みなし労働時間制」を採用していたりと、企業によって対応はまちまちです。しかし一方で、時間外労働が通常勤務より増えたという調査結果も発表されています。
このような事態に、企業はどのような対策をとるべきなのでしょうか。コロナ禍の在宅勤務/テレワークにおける残業対策について、一緒に考えてみましょう。
目次
在宅勤務/テレワークで増える残業の実態
2020年6月、ある調査結果が公表され話題になりました。労働組合の中央組織である日本労働組合総連合会(連合)が今年4月以降にテレワークを行った人を対象に実施した「テレワークに関する調査2020」で、対象者の半数超(51.5%)が「通常の勤務よりも長時間労働になることがあった」と回答した、というものです。この調査では、対象者の約4割(37.8%)が1日の労働時間が「8時間以上」と回答しており、回答者の6割超(65.1%)が時間外・休日労働をしたにも関わらず「申告していない」という結果でした。
本来、在宅勤務やテレワークであっても、時間外労働・休日労働・深夜労働が認められる場合には、通常の労働者と同じように割増賃金(残業代)が発生します。そのため、あらかじめ「事業場外みなし労働時間制」「フレックスタイム制」などを導入している企業も少なくありません。また、事前に取り決めをしていたとしても、時間内に終わらないような膨大な業務は「残業」として扱わなければなりません。
加えて、以前から残業が「見えない化」するという懸念はありました。管理者や他のスタッフがいない自宅などの場所で働くスタイルのため、進捗状況や問題の発生状況などが確認しづらいためです。実際、在宅勤務/テレワークは「仕事とプライベートとの区別が難しい」という意見も多くあります。
企業には労働者を守る義務があり、在宅勤務/テレワークにおいても長時間労働にならない工夫が求められます。しかし、残業を減らすよう圧力をかける行為は「時短ハラスメント」になりかねません。サービス残業を増やすことにもつながりかねず、生産性の低下や、いわゆる「テレワークうつ」など健康面にも影響が出る可能性も考えられます。
人事労務部門としては、残業について社内ルールを規定するだけでなく、どのように管理していくか、従業員をケアしていくかが重要になってくるのです。
在宅勤務/テレワークに求められる残業管理の[仕組み]
残業抑制対策には様々な方法が上げられますが、在宅勤務/テレワーク下においては、以下の3つの[仕組み]をベースにして検討することが重要です。
- ①残業の実態を正確に把握できる在宅勤務/テレワークに適した勤怠管理体制をとる
- ②在宅勤務/テレワーク下で残業抑制につながる仕組みを導入する
- ③在宅勤務/テレワーク者のメンタルヘルス不調にいち早く気づく仕組みを導入する
①残業の実態を正確に把握できる在宅勤務/テレワークに適した勤怠管理体制をとる
残業抑制対策を行う上では、残業が「誰に」「いつ頃」「どのような状況下で」「どのくらい」発生しているのか実態を知る必要があります。
在宅勤務/テレワーク下では、出社していた頃と同じ方法で勤怠管理を行うことが難しくなります。そのため、自己申告制をとるケースも多くなるでしょう。
厚生労働省が定めた『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』に基づいて、次のような管理を行うことが推奨されています。
在宅勤務/テレワークでは、通常勤務のようにタイムカードやICカードなどで管理することが難しくなります。中には、メールや電話などを使って各自が自己申告した時間で把握している企業もあるようですが、こうした方法では、虚偽のない正確な出退勤を記録するよう従業員に充分説明し、理解してもらう必要があります。ガイドラインでは「必要に応じて実態調査を実施」することも求めており、たとえ事業外みなし労働時間制などを採用していたとしても、みなした時間との整合性はチェックしておく必要があります。
在宅勤務/テレワーク下で残業の実態を把握するには、遠隔地からでも正確な報告ができる勤怠管理方法が適切でしょう。
クラウドサービスの勤怠管理システムなら、インターネットに接続するだけで利用できるので、自宅からでも始業・終業時刻に打刻することが簡単にできます。例えば、奉行Edge勤怠管理クラウドなら、勤務スケジュールと打刻データを基に日々の勤務時間を自動集計します。事前に設定した勤務体系に合わせて、通常の残業時間や深夜残業時間、日またぎの勤務時間など、いつでも把握することができます。
②在宅勤務/テレワーク下で残業抑制につながる仕組みを導入する
「残業の実態を知る」とともに、「残業をさせない」取り組みも重要です。特に2020年4月からは、全ての企業に「時間外労働の上限規制」が法律で規定されています。そのため、実態と対比しながら超過状況を把握し、原則として定められている「月45時間・年360時間」を超えないように抑制する対策も必要になります。
例えば、残業が上限に近づいている従業員に警告する方法があります。規制ラインより厳しい上限時間を設定することで、残業時間が超過することを抑えることができる上、必要以上の残業抑制につなげることもできます。
また、残業の事前申請をルール化するなども効果的です。「いつ」「どのような案件・業務で」「どのくらいの時間」残業が必要かを申請することで、上司は許可するか判断することができます。残業要因を把握しやすくなるため、対策も打ちやすくなるでしょう。
現在市場では、長時間労働抑制対策の機能を兼ね備えている勤怠管理システムが主流になっており、奉行Edge勤怠管理クラウドのように、勤務時間を自動集計して36協定の上限を超えそうな従業員に警告アラートを発する機能や、残業申請もオンラインで行えます。こうしたクラウドサービスを活用すれば、残業管理の業務もラクに行えるでしょう。
ただし、「手続きが面倒」「どうせ却下される」などの理由で従業員が申請しないケースも考えられるため、残業発生状況の早期キャッチ、従業員への適切なフォロー体制も併せて検討しておきましょう。
③在宅勤務/テレワーク者のメンタルヘルス不調にいち早く気づく仕組みを導入する
在宅勤務/テレワーク下では、出社勤務に比べコミュニケーションが圧倒的に不足します。そのため、相談や進捗の確認ができず不安から残業してしまうケースも少なくありません。こうした従業員の危険信号を逃さないようにすることも、残業管理の上では重要になります。
例えば、Web会議ツールなどを利用して、定期的にコミュニケーションをとれる仕組みを導入することも有効です。「チームで仕事をしている感覚」を共有すると、メンバー同士で状況を確認しあえるので、周囲の進捗状況が確認できるとともに安心感をもたらします。また、上司も追い込まれているメンバーがいないか確認することができ、メンタルヘルス不調の予備軍を発見しやすくなります。
また厚生労働省では、労働安全衛生関係法令等に基づき、在宅勤務/テレワークにおいても下記すべての健康確保措置を講じる必要があるとしています。
<安全衛生関係法令に基づく健康確保のための措置>
- ◆ 必要な健康診断とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条から第66条の7まで)
- ◆ 長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置(同法第66条の8及び第66条の9)及び面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第52条の2)
- ◆ ストレスチェックとその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条の10)
出典:厚生労働省パンフレットPDF「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」
「4. 安全衛生法の適用及び留意点」より
この中でも、これからのコロナ対策としても特に注目しておきたいのが、ストレスチェックでしょう。ストレスチェックの主な目的は、従業員自身のストレスへの気づきを促しメンタルヘルス不調を未然に防ぐことにあります。現在ストレスチェックが義務化されているのは「従業員数が50人以上の事業場」となっていますが、在宅勤務/テレワークを実施する上では、企業規模にかかわらず定期的に実施して残業がストレスになっていないかチェックし、適切なケアを行うことも大切になります。
例えば、奉行Edgeメンタルヘルスケアクラウドは、奉行Edge勤怠管理クラウドと連携して日々の勤怠データを監視し、残業超過や勤怠の乱れ、仕事の変化などの不調のサインを自動検知できます。従業員がメンタルヘルス不調に陥る前に未然にキャッチし、本人と総務部門に自動で通知することができます。職場の人間関係や仕事の悩みを把握できる「心の診断アンケート」機能や、個人でストレスに対する対処方法を取得できるセルフケアコンテンツも搭載されており、従業員自身がワークスタイルの見直しを意識しやすくなっています。特にITストレス診断で高ストレスだった者に対しては、自動で受講勧奨のメールを送ることができるため、適切なタイミングでケアを促すこともできます。
おわりに
残業を適切に管理する重要性は、在宅勤務/テレワークであっても変わりません。特に今後の「アフターコロナ」では、在宅勤務/テレワークが当たり前の世界になるはずです。そのため、出社勤務の取り組みと同じように、適正に労働時間を管理する方法が必要です。
また、残業に関わるメンタルヘルス不調のケアでは、これまで以上に産業医や産業カウンセラーなど専門家との連携や不調予備軍を検知するシステムの活用などが求められます。
時間や場所にとらわれずに働ける在宅勤務/テレワークですが、法制度などを踏まえ、残業時間を含めた労働時間の適切な把握・管理の仕組みを整備し、実情に応じて運用していきましょう。
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