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健康経営とは?メリットや取り組みのポイント

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働き方改革による従来型労働のあり方に変化の兆しがある中、「健康経営」という概念に注目が集まっています。メンタルヘルスの不調を理由とする休職や退職者が大幅に増えており、今では従業員が「元気に働ける」ことは重要な経営戦略の一つとなっています。
2015年からはストレスチェック制度も義務化され、経済産業省が積極的に健康経営に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定し毎年公表するなど、政府も積極的に推進しています。
しかし一方で、「取り組みたくても、何から始めれば良いのか分からない」と戸惑う声も少なくありません。
健康経営は、ポイントをしっかり押さえていれば、難しいものではありません。
今回は、健康経営について、メリットや取り組みのポイントなどをご紹介します。

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目次

「健康経営」の定義

NPO法人健康経営研究会では「健康経営」を商標登録し、以下のように定義しています。

健康経営とは

「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること

出典:NPO法人健康経営研究会「健康経営とは」より

もともとこの考えは、1980年代にアメリカの臨床心理学者であるロバート・ローゼンにより提唱された概念で、「健康な従業員こそが、収益性の高い企業をつくる」という“ヘルシーカンパニー思想”を基にしています。
経済産業省は、企業にとって、従業員の健康維持・増進を行うために必要な経費は単なる「コスト」ではなく、将来に向けた「投資」である、と定義づけています。
企業理念に基づき、従業員等の健康管理を「投資」として経営的な視点で考え、戦略的に実践することで「日本再興戦略」いわゆる「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みにつながる、と期待しています。

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「健康経営」がもたらすメリット

「健康経営」が企業にもたらすメリットは、まとめると以下のようになります。

●健康保険料の負担が軽減する

日本ではメンタルヘルスの不調を訴える社会人が増加しています。厚生労働省の資料によると、医療給付費は2019年予算ベースで39.6兆円に達し、企業が負担する医療費も年々増加する傾向にあります。大企業の従業員とその家族が加入する健康保険組合でも、4割以上の組合が経営赤字と言われているほどです。
企業の医療費負担が増加すれば、企業の経営は厳しくなります。そのうえ、健康保険組合が解散することになれば、組合独自の給付を受けることができなくなるばかりか、協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入すると現健康保険組合の保険料より高くなる恐れもあります。
健康経営では「従業員の健康を守る」ことを第一とするため、従業員の通院・治療の頻度は減少し、企業が負担する医療費の削減につながります。

●従業員1人ひとりの生産性が向上する

従業員が体調不良を起こすと仕事に対するモチベーションや集中力が低下し、欠勤が増えるなど、仕事の生産性に大きく影響を与えます。
企業が従業員の健康的な生活を守る姿勢を示し、実行することが大切です。彼らが健康で働ける状態は、集中力やモチベーションを維持することにつながります。一見遠回りのようですが、健康経営を推進することで欠勤が減り、業務効率が上がることで、結果として生産性が向上し、企業収益の向上を見込めるようになります。

●人材が定着・確保しやすくなる

今、日本では少子化が加速し、人材不足の問題が深刻化しています。国は人手不足対策として、労働力を確保するために従業員の雇用延⻑や、働き方改革を推進しています。しかし、従業員が体調悪化で離職することになると、せっかくの戦力を失うばかりか、「体を壊すまで働かされる」という負の評価によって他の優秀な人材の流出も招きかねません。
一人ひとりの健康に配慮した働き方や職場環境が整備されると、全ての従業員が心身ともに健康な状態で活き活き働くことができます。職場や仕事に対する社員の満足度が向上し、職場への定着化が推進され、離職率の改善にもつながります。

●経営上のトラブルやリスクを回避できる

企業が従業員の体調不良を早期発見することに努めることによって、疾病休暇等による損失を最小化することができます。さらに、従業員の体調不良によるミスや事故を減らすことで、労災発生などのトラブルを事前に回避することにもつながります。

●企業のイメージアップにつなげやすい

従業員が心身共に元気に働く姿は、社内外にポジティブなイメージを与えます。「働きやすい会社」として印象づけることができれば、ホワイト企業として社会的な信頼度も高まり、企業ブランドの価値を上げる効果も期待ができます。

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「健康経営」の取り組み方、基本としてやるべきこと

では具体的に、何にどう取り組めば良いのでしょうか?
経済産業省では、「健康経営を経営課題として戦略的に実践するためには、組織マネジメントの一環として、健康経営を体系的に理解し、その実践手法を検討する必要がある」としています。

※経済産業省PDF「企業の『健康経営』ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)」より

そして、健康経営を実践するには、その取り組みが“経営基盤から現場の施策まで”の様々なレベルで連動・連携していることが重要であり、「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの取り組みが必要とされています。

出典:経済産業省PDF「企業の『健康経営』ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)」第2章健康経営を始めよう より抜粋

「⑤法令遵守・リスクマネジメント」は、労務管理の基礎でもあり健康経営の基盤として実践すべきものです。法令遵守やリスクマネジメントは当然行われるものと前提し、他4つの取り組みについて具体的に何をどのように実施するか整理しましょう。

①経営理念・方針
健康経営理念を定め、社内外に発信する

まず、企業理念に沿って健康に関する基本方針などを決定し、企業のトップが大々的に通知することが肝要です。
健康経営に関する理念(考え方)を明文化することで、健康経営に取り組むことを社内外に宣言し、健康経営をスタートさせましょう。全国健康保険協会や健康保険組合に対して、健康経営に取り組む意思表示である「健康企業宣言」を行うことも効果的です。
発信の際は、健康経営の目的が企業の持続的成長に資することを明らかにし、自社の企業理念や中長期計画に基づいて宣言します。例えば、ヘルスケア機器メーカーを例にすると、「『ヘルスケア機器製造を通じて、社会における信頼と期待に応える』という企業理念に基づき、従業員の健康もヘルス機器メーカーの責任の1つとして捉える」といった具合に宣言します。

②組織体制
健康経営理念に基づき、運営組織体制を整備する

健康経営の実施にあたっては、各部局が一丸となり取り組むよう経営トップ及び経営層全体において、その取組の必要性などが共有されなければなりません。
そこで、推進役となる“実行力のある組織体制”が必要となります。
管轄部門は、専門部署を設置するか、または人事部など既存の部署に整備することもあります。そこには専任または兼任の担当者を配置します。担当者には、健康経営に関する研修を実施したり、専門資格を持つ人材を採用したりすることなども検討しましょう。
従業員の健康保持・増進は、企業、産業医や保健師などの産業保健スタッフ、健康保険組合、労働組合、従業員などがチームとなって取り組む課題です。新たに設置された運営組織を中心として、互いに連携しPDCAサイクルを実施できる体制を整えましょう。

③制度・施策実行
従業員の健康課題を導き出し、施策を実施する

健康経営を実践する上では、自社の従業員の健康状態を把握し、どこに課題があるかを理解しておくことが必須です。
まず、ストレスチェックや健康診断など既存のデータを活用して、長時間労働と特定保健指導の要否や、医療費との相関関係などを分析してみましょう。他にも社内アンケートなどで現在の健康状態や不調を感じていることなどを把握します。そうすることで、「業務に対するプレッシャーで社員のメンタルヘルス不調が多発している」「長時間のデスクワークで腰痛に悩んでいる人が多い」といったボトルネックや課題が見えてくるでしょう。
その上で、具体的に何をどのように実践していくのか、健康経営の目標や取り組み内容を検討・計画し、実施します。実施する施策は、職場環境や働き方、従業員個人の生活などあらゆる側面からアプローチをします。その際、企業が率先して実施できるものからスタートさせましょう。場合によっては、社内ルールとして制度化することも重要です。その他、企業だけで実施できないものは、必要に応じて健康保険組合やフィットネスクラブ等の外部企業などと連携して実施することも検討します。
例えば、職場の禁煙ルールを明確化したり、社内食堂を整備したりするなど、職場環境の改善を図る方法があります。働き方の面では、⻑時間労働の抑制や従業員の休暇取得の促進なども挙げられます。個人の生活改善においては、健康について気軽に相談できる産業医と契約し、健康に関する情報提供やフィットネスクラブ等との法人契約など運動の機会を提供することも良いでしょう。

④評価・改善
定期的に効果検証を繰り返し、改善していく

計画を実行したら、その結果をきちんと把握することも必要です。取り組みの成果を評価したり計画の改善を効果的に行ったりできるように、計画立案の際にあらかじめ評価指標を設定し、成果の目標を立てるようにしましょう。
施策を実行した後は、効果検証を行い改善すべき点は改善し・・・と、PDCAサイクルをまわしながら従業員の健康を維持・管理していきます。
また、日常的な歩数や血圧などのバイタルデータを記録することも、成果の効果測定には効果的です。そうした日常の健康データを蓄積することで、今後の対策に活かすこともできます。

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「健康経営」に取り組む際に注意しておきたいこと

健康経営は、長く、継続して取り組むものになります。いきなり結果を求め大がかりにスタートさせても、関係者の意識が長続きしなければ意味がありません。
そこで、取り組みにあたっては、以下の点に注意しておきましょう。

●コストがかからない対策から手をつける

例えば、生活習慣病を克服するためのダイエットも、毎日の食事管理や運動を地道にこなし、時間をかけることで成果が見えてきます。健康経営も、すぐに成果を求めず⻑期的な活動を展開する必要があります。
特に初めて取り組む場合には、健康情報の収集、分析、管理の面だけでもコストがかかりやすいものです。例えば、定期健康診断以外の取り組みを行っていなかった企業では、その他の情報をアンケート等で補填する必要がありますが、自社内でアンケートを実施・分析するにしても新たな人的コストが発生することは否めません。ましてや、外部ブレーンや専用のシステムを使うことになると、なおさら費用がかさみます。
厚生労働省でも「健康経営ハンドブック2018」で推奨しているよう、まずはコストをかけずにできるところから始めましょう。

出典:経済産業省×東京商工会議所PDF「健康経営ハンドブック2018

●ストレスチェックから見える組織分析を有効活用する

ストレスチェック制度はメンタル不調を未然に防止する事を目的として創設され、2015年から労働者を常時50人以上雇用している企業に義務づけられています。経済産業省が毎年公表する「健康経営銘柄」の選定要件にも、「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」として加えられており、ストレスチェックを始めとするメンタルヘルスケアは健康経営において重要な要素であることが理解できます。
しかし、高ストレス者への対応が分からないことや負担が増えることから、「ストレスチェックは実施しているものの対策ができていない」という企業は多く存在します。
以前OBC360°コラムでご紹介した「専門家に聞く「企業のメンタルヘルスケア対策はどう取り組むべきか?」」にもあるように、ストレスチェックから見える組織分析、組織単位でストレスの発生状況を見える化できたり、ストレスが低い組織の良い取り組みを共有することができたりするので、職場全体の改善に役立てることができます。ストレスチェックは、単に従業員に受検させるだけなど形式的に終わらせず、結果をもとに専門家との連携を図り、高ストレス者を出さないよう活用していくことが重要なのです。

●コミュニケーションが取りやすい環境を創る

細やかな体調変化やメンタル不調の発見には、職場の“風通しの良さ”も大いに影響します。
普段から上司(管理者)と部下のコミュニケーションが密に取られていれば、部下の日常の様子の変化をいち早くキャッチできる可能性があります。また、スタッフ同士の意思疎通が活発になると、メンタルにも良い影響を与え、社内の空気も明るくなります。結果的に、仕事に対するモチベーションも上がり、生産性向上にもつなげられます。

●特定対象者だけのインセンティブ制度は要注意

成果を出した人に何らかの“ご褒美”が受けられるインセンティブ制度は、健康経営の取り組みとしてよく用いられますが、禁煙や減量など、一部の従業員だけが対象となる場合、不公平感や不満などモチベーションを低下させる要因になってしまうことがあります。
健康経営の対象は、全従業員であることが前提です。全ての従業員から充分な理解を得ることなくして、生産性の向上と健康経営の実現は叶いません。
施策を計画する際は、不公平感や不満が出ないよう注意しておきましょう。

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おわりに

従業員を大切にする姿勢や働きやすい環境づくりは、経営者にとって疎かにできない課題です。何も対策を取らないままでいると、休職コストの増加、人材流出リスク、採用コストの増加、訴訟リスク、レピュテーションリスクが高まる・・・など、多大な企業損失にもつながりかねません。
経済産業省が提唱するように、企業は「健康経営」にかかる費用をコストではなく「投資」と捉え、⻑期的な視野に立って継続していくことが重要です。

とはいえ、自社内のスタッフだけで取り組むには限界があります。メンタルヘルスケア対策でも、産業医の面接指導が欠かせないなど、様々な外部ブレーンと連携しながら取り組んでいく必要があります。専用システムなど有効に活用しながら、うまく健康経営を進めてみてはいかがでしょうか。

 

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