- 株式会社大原商店
- 代表取締役社長/大原 康史 氏
検討のきっかけ
新しい時代に生き残るため
レガシーシステムが抱える3つの課題を解決する必要があった
当社は1931年に創業し、和装小物の製造卸を手がけています。帯締め・半襟・草履・バッグ・髪飾りなど、着物に関わる幅広い小物商品約6,000種類4万点を取り扱っていますが、商品の約9割が当社オリジナル。着物の着用シーンを想定したトータルコーディネートの提案や流行に流されない「古き良きものづくり」を強みにお客さまを獲得してきました。
2021年に三代目として社長に就任しましたが、経営環境は厳しいものでした。時流として着物の着用人口が減少するなかで、コロナ禍がそれに追い打ちをかけ、かつてない売上減に直面しました。「これでは生き残れない」と強い危機感を覚え、経営基盤強化を目的とした業務システム改革に取り組むことにしたのです。
当時の業務システムにはレガシーシステム特有の課題が3つありました。
一つ目が「属人化」です。1988年に導入したオフコンシステムを利用していましたが、システムを使いこなせるのがベテラン社員の一人だけで、「仕事が人についてしまった」状態でした。また長い付き合いだったオフコンベンダーの担当者が高齢のため退職し、相談できる相手もいない状況になりました。組織や業務プロセスを変えたくてもその人に合わせざるを得ず、属人化が業務や組織改革の制約になっていました。逆に言えば、会社がその一人に責を負わせる形になっていたのです。
二つ目は、システムがあるのに、実は紙が中心で運用され「生産性が低い」ことです。オフコンシステムは販売管理と顧客管理が稼働していましたが、実際は商品管理・在庫管理・顧客管理が、すべて紙で行われていました。商品管理については仕入担当が手書きした用紙を、カテゴリごとにファイルにまとめて管理をしていました。約6,000種類4万点もの商品が、各担当者の記憶と紙によって管理されていたのです。顧客から問い合わせを受けた際はファイルを引っ張り出してきて30分以上探すことも珍しくありませんでした。経理も紙の伝票や請求書による処理や突合作業に半日要することもありました。紙で業務を行うことで無駄な作業が発生し、生産性が低下していたのです。
三つ目が、販売管理が請求金額ベースでしか管理できず、「売上・原価・粗利を適時に把握できない」ことです。売上・原価・粗利は経営管理において極めて重要な情報ですが、実態が掴みにくい。年1回の棚卸でやっと把握できるのが実情でした。棚卸しも従業員総出で商品を数え、原価はファイルで調べるという具合で、丸一ヶ月もかかる大仕事でした。
経営環境がますます厳しさを増すなかで、重要なことは会社の強みを活かすことです。当社で言えば、在庫リスクを持つからできる、弊社の世界観に基づくオリジナル商品の職人気質なものづくりです。
これらの強みは従業員の企画力・提案力に頼る部分が大きい。業務システムを改革することで、従業員が無駄な作業にとらわれることなく、本来の業務に集中できるようにしたかったのです。
導入の決め手
業界特有の業務に対応でき
業務スタイルは変えずにデジタル化を実現
検討においては7社のベンダーを比較し、自分で10種類のツールを試しました。そのうえで、2つの理由で商蔵奉行クラウドの導入を決定しました。
一つ目が「業界特有の業務に対応していた」ことです。具体的には商品の貸し出し管理です。和装業界は商品を貸し出すことが多い。弊社も小売店のお得意様からお客様に実物を見せたいのでと、借りられることが多いです。「いつ」「何を」「誰に」貸し出したのかを管理できることが重要でした。
また、得意先ごとに直送先の管理ができたのが商蔵奉行クラウドだけだったのも大きかったですね。当社においては得意先(卸売業者)の販売先(小売店)に商品を直送することも多い。そのため、得意先ごとに直送先を管理できる必要がありました。あるシステムは、得意先から直送先を選ぶと直送先マスタがすべて出てきてしまうために、管理がとても面倒になっていました。商蔵奉行クラウドなら、得意先と直送先が親子関係でひもづいているため、管理を簡単に行えたのです。
二つ目が情報系ツール「kintone」と連携ができ、紙中心の業務をデジタル化することで、生産性向上が見込めたからです。商品管理や顧客管理などの現場業務は「kintone」でシンプルな専用アプリを開発し、商蔵奉行クラウドとデータ連携させることで、従業員の負担が少ない業務のデジタル化が実現できると考えたのです。現場も経理もペーパーレス化や入力作業の削減ができ、従業員は無駄な作業から解放され、本来の業務に集中できます。
検討においてはコスト比較も詳細に行いました。ライセンス料や初期費用、ランニングコストも含めて今後7年間にかかるトータルのコスト比較表を作成。すると、インストール型とクラウド、両者にコストの差はほとんどないことがわかり、導入するだけでテレワークやBCP対策も実現できる商蔵奉行クラウドに決めたのです。
導入効果
業務が標準化され、新入社員でも対応できる体制に
業務時間は月75時間削減
業務の標準化とデジタル化を同時に実現
クラウド型のパッケージシステムである商蔵奉行クラウドを導入したことで、業務の標準化とデジタル化を同時に実現し、3つの課題を解決することができました。
「属人化」という課題については、パッケージシステムに合わせた運用をすることで、今までの業務スタイルを大幅に変えることもなく標準化ができ、さらにデジタル化まで実現することがでました。
業務が標準化されたことで、現在では入社1年未満の新入社員であってもベテラン社員と同じように経理業務ができていて、驚いていますし嬉しいです。このような結果を得られたのは、サポートセンターの存在も大きいですね。
経理の二人は、困ったときはすぐに電話をして、リモートで画面を見てもらいながらサポートを受けています。「オンラインなのに、サポートの方がまるで横に座っている感覚。わからないことがあっても安心して聞ける」と話しており、高く評価をしています。
「生産性が低い」という課題は、ペーパーレス化による業務削減で解決ができました。商品管理については、商蔵奉行クラウドの商品データと連携した「kintone」ですぐに確認できるようになったため、手書きによる紙管理を廃止することができました。現在では、ファイルを引っ張り出してきて調べるという無駄な作業がなくなり、従業員は本来の業務に集中できています。
入力・突合作業にかかる時間が大幅に削減
経理においては、営業担当から回ってくる手書きの販売リストを見ながらの入力作業や、入力ミスや漏れを防ぐための、入力結果の確認作業が大幅に削減できました。具体的には営業が「kintone」で登録した受注情報が、商蔵奉行クラウドに連携されるため、経理が伝票を入力する時間がほぼ0になりました。毎日2時間、月に40時間は削減ができています。
また、従来のシステムでは処理日を翌日にする「更新処理」をすると、修正ができなくなっていました。そのため売上と仕入の原票と、システムの入力結果が合っているかの突合作業が必要でした。今はその作業も不要となり、1日1時間ほど月20時間の削減もできています。
さらに請求書発行時も、データの更新処理がなくなったことでいつでも再発行ができるため、発行前の納品書との突合作業をする必要がなくなりました。これだけでも、月15時間ほど時間削減ができています。合計で月75時間以上の業務時間の削減ができたわけです。
必要な情報がいつでも確認でき、きめ細かな顧客管理の実現へ
「売上・原価・粗利が適時把握できない」という課題については、現場が紙で管理してきた商品情報がデータ化されたことで大幅に改善してきました。
これまでは経理に出力してもらった帳票で、売上情報しか確認することができませんでしたが、現在は商蔵奉行クラウドでほしい情報がすぐに集計でき、簡単にExcelにも出力できるため、営業でも数字を分析することが可能になりました。
今後は販売履歴や仕入履歴もデータ化され、キーワード検索も可能になったため、きめ細かな顧客管理も実現ができると期待しています。
導入効果のダイジェスト
- 業務スタイルを変えずに業務のデジタル化と標準化を同時に実現
- ペーパーレス化により紙管理を廃止
- 伝票入力がほぼ0に。作業時間を、月40時間削減
- 伝票の確認作業がなくなり、月20時間削減
- 経営管理に必要な情報が、いつでも確認できる体制に
- 請求額を確定させるための納品書との突合作業が月15時間削減
今後の展望
在庫管理と貸し出し管理を行い
ECサイト構築に注力したい
今後取り組みを加速化させたいのが「法人向けECサイト」の構築です。現在、バーコードによる商品のデータ化を図っており、商蔵奉行クラウドを在庫管理システムとして活用したいと考えています。在庫管理については商蔵奉行クラウドの本領が発揮できる業務と思います。在庫管理を行うことで、売上・原価・粗利をもっとリアルタイムに把握し、さらなる経営改善につなげることも考えています。
また息の長い取り組みとして、IT化が遅れているこの業界で、自分たちの経験が役立てられればと考えています。
弊社は和装小物の問屋として、和装に関わる全ての商材で、作り手の職人さんたち「川上」から「川下」の小売店さんまで、多くの関係者の間におります。
IT化の効果やノウハウを社員一人一人が実感することで、従来の習慣や常識にとらわれず業界の課題に対して、これも効率化できないか?何か方法があるのでは?と、みんなで考えられるようになってきていると感じています。デジタル化を理解して改めてアナログの良さに気づくこともあります。「和装業界のデジタル化」に向けて、自分たちが実践できるIT化を推進し、結果、着物を着る人に喜んでもらえる環境を提供できるようになっていきたいと考えています。
企業情報
1931年(昭和6年)創業。和装小物の製造卸を手がけ、帯締め・半襟・草履・バッグ・髪飾りなど、着物に関わる幅広い和装小物約6,000種類4万点を取り扱う。商品の約9割がオリジナル商品で時代、顧客に合わせた提案を行っている。
従業員数13名、平均年齢53歳。
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- 会社名
- 株式会社大原商店
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- 住所
- 京都市下京区松原通東洞院東入ル本燈籠町16
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- 業種
- 製造卸売業
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- エリア
- 京都府
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- 従業員数
- 13名
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