- JA共済ビジネスサポート株式会社
- 総務人事部 次長
北阪 朋子氏
- JA共済ビジネスサポート株式会社
- 総務人事部 部長
黛 弥生氏
- JA共済ビジネスサポート株式会社
- 総務人事部 副主事
前田 佳子氏
- JA共済ビジネスサポート株式会社
- 総務人事部 主任
神崎 絢子氏
検討のきっかけ
DXによって日常業務に追われる体制を脱却し
その成果を全従業員に還元することを目指しました
給与奉行と人事奉行は以前から利用していましたが、実際は人事労務業務の多くを紙で処理しており、目の前の仕事をこなすのが精一杯でした。毎月給与計算の時期が訪れるたび、「年度末」というレベルの忙しさでした。奉行と他社の勤怠管理システムとの連携がとれておらず、データを取り込むまでの過程で手計算や手入力が発生していたのです。
そんななか、2020年から事業計画に基づく業務効率化をスタートさせました。奉行クラウドHR DX Suiteによって既存の給与奉行や人事奉行をクラウド化したほか、勤怠管理クラウドを導入して勤怠集計から給与計算まで連携される環境を構築しました。さらに、労務管理や給与明細、年末調整も含め、人事労務業務すべてをDX化し、あらゆるデータがつながるようにしたのです。
総務人事のDXは私たちにとってだけでなく、従業員にとっても必要な取り組みだととらえていました。“総務人事のDXを成功させることが全従業員の利益につながる”と考えていたからです。総務人事は営業などと異なり、直接利益を生むわけではありませんが、さまざまな業務を通して全従業員と関わる部署。つまり、総務人事のDXの成功は会社全体を変えることにつながると思うのです。目指したのは「総務人事のDXで得た成果を全従業員に還元する」ことでした。DXで削減できた時間を業務改善などに充てることで、全従業員が働きやすいと感じられる環境の構築を目指しました。
導入効果①
DXによってあらゆる人事労務業務の時間削減に成功
入社手続き
入社手続きはすべて紙で行っていました。各種手当の申請書や入社誓約書などを郵送し、返送を待ちますが、やりとりに1か月程度かかることも多く、この待機時間をもったいないと感じていました。そのなかでも労働条件通知書の作成については、10種類以上ある契約内容のパターンに応じて個人情報を転記しなければならず、ミスが発生しないかという不安も大きかったです。資格取得などの社会保険申請では、年金事務所に送る分は、郵便局に出向き書留で送っていました。雇用保険についてはハローワークに行って手続きをするのですが、4月だと受付で100人以上待っていることも。それだけで半日使ってしまうことも珍しくありませんでした。
今では、労務管理電子化クラウドを使って、Web上で入社予定者に個人情報を入力してもらっています。労働条件通知書の作成は、あらかじめ登録してある契約内容のパターンを選択するだけでよくなり、電子交付しています。入社予定者に通知してから2~3日で対応してくれることが多く、書類への押印待ちの時間がなくなり、やりとりがとてもスピーディーになりましたね。入社前に情報が集まるため、入社後の準備に早く取り組めています。また、社会保険申請は電子申請で行うことで、郵便局や役所へ出向く必要もなくなりました。現在では、1人当たり1か月かかることもあった入社手続きが1日で済んでいます。
勤怠管理
勤怠管理に10日かかっていました。特に時間がかかっていたのが給与奉行との連携作業です。他社の勤怠管理システムを利用していたため、CSVファイルでデータ連携していました。しかしながら、データはそのまま使えるわけではなく、連携可能な形式に変換するために手入力や手計算が必要で、多大な労力とストレスがかかっていたんです。また、勤務実績が確認しづらく、従業員からも「使いづらい」という声があがっていました。
勤怠管理クラウドから給与奉行クラウドにデータが自動連携できるようになったことで、勤怠締め後のチェック作業だけでよくなり、業務時間が5日まで短縮されました。さらに、従業員が手間なく勤務実績を確認できるようになり、従業員からは「見やすいし、とても使いやすいね」と評判です。また、これを機にExcelで行っていた有給休暇や特別休暇の管理を奉行に移行し、従業員が自分で確認できるようにしたところ、今まで受けていた有休残に関する問い合わせがほとんどなくなりました。新たに導入した積立休暇の管理も簡単にできるのでとても助かっています。
給与明細配付
給与明細の印刷や封入、郵送などの業務は3名でトータル30分かかっていました。各拠点で従業員に手渡しをしていたため、拠点長あてに支給日の前日までに届くように送付しなければならず、時間的制約があるなかで業務を行うことに心理的な負担もありました。
現在は、給与明細電子化クラウドで明細をWeb公開しています。公開の予約だけで済んでおり、業務時間はゼロになりました。
年末調整申告
毎年、税務署主催のセミナーに参加し、3種類の用紙を全従業員分、つまり約150名分もらって帰ってきていました。税務署の説明を受けたその日に準備を開始し、翌日の発送を心がけていました。確実に送り返してもらうために、個人名を付した封筒に入れて発送するのですが、発送準備も回収も手間に感じていました。最も時間を要していたのがチェック作業です。回収書類はダブルチェックを行っていましたが、記入箇所や配偶者名などの基本的な部分に誤りが多数見つかり、付箋にコメントを書いて差し戻していました。年末調整申告は給与に絡む業務であるため、12月初旬には確認を終えなければならず、時間に追われ、毎年憂鬱な気分になっていました。業務時間は35時間かかっていました。
年末調整申告書クラウドによるWeb申告に切り替えてから2年が経過しました。保険料控除申告書や住宅借入金等控除申告書では前年の情報が複写されるため、入力の手間が省け、従業員からは「使いやすい」と好評です。「もう小さな記入欄に書かなくていい」と喜ぶ従業員も。業務時間は14時間に短縮でき、6割削減することに成功しました。
導入効果②
DXで手作業がなくなり精度向上とリスクマネジメントを実現
削減した時間を業務改善に活用し従業員へ還元
DXによって、情報のやり取りや取り込みがデータでできるようになったことで、データの段階でチェックをかけるだけでよくなりました。手入力や転記が必要になる紙中心の業務では何度もチェックが必要になり、ミスの発生頻度も高くなります。それと比較して、今ではミスが起きにくい体制になり、業務の精度が上がりました。
また、従業員とのやりとりがメールに変わったことで、書類送付の記録を確実に残すことができ、追跡確認も可能になったのでリスクマネジメントにつながっています。以前は、労働条件通知書を郵送する際、送付した履歴が残らないため、「住所や名前を間違えていないだろか」と内心“びくびく”していました。紙で書類を作成したり、取り扱うことは誤記や紛失を招きやすく、そうならないように神経をすり減らしていたのです。もちろん、奉行が入った今ではシステムで履歴が残るので、“びくびく”することもなくなり、精神的な余裕があります。
手作業の多くがなくなり、業務効率化を果たせたことで、時間に余裕ができ、業務改善に取り組めています。奉行によるDXをきっかけに、メンバー全員が「手作業をどうすればなくせるか」と考えるようになり、名刺発注申請をワークフローでWeb化するなど、具体的な成果が出ています。総務人事のDXが進むことで、従業員の間接業務もどんどん削減できています。研修の策定や規定の改定、複合機の入れ替え検討などにも着手しており「総務人事のDXで得た成果を全従業員に還元する」という目的の達成に向けて、鋭意取り組んでいるところです。
導入効果
- 入社手続き業務:業務時間が最大1カ月→1日に短縮!
- 勤怠管理業務:勤怠集計にかかる時間が10日から5日に!
- 給与明細配付業務:業務時間が0日に!
- 年末調整業務:業務時間を6割削減!
- DXで手作業がなくなり、業務の精度向上とリスクマネジメントを実現!
今後の展望
総務人事がDXの起点となり、全社の意識を高めることで
DXによる成長が当たり前の企業に
総務人事は営業などと異なり、直接利益を生むわけではないため、DX投資の対象となりにくいと聞きます。しかし、総務人事のDXの成功は全社にまで広く及ぶものなので、総務人事からDXを始めるとその成果を実感しやすいのではないでしょうか。実際、総務人事のDXの成果を多くの従業員が享受しており、喜びの声も届いています。今後はこれまでの知見を活かしながら、ハンコレスなど必要な変化に対応していきたいですね。
多くの従業員がDXの成果を感じ始めたなかで、総務人事から始まったDXの波が全社に広がっていく日はそう遠くないかもしれません。しかし、DXに精通した人材は多くありません。そこで、全社でスキルアップに取り組み、デジタル世代の採用を重ねながら、DXを全従業員により身近なものにして、全社変革を促進していきたいと考えています。
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企業情報
1966年設立。ビルマネジメント事業や貸会議施設事業、損害保険代理店事業のほか、JA共済事業の発展に関わるJA共済関連支援事業を手がける。事業所は本社、石岡事業所、幕張事業所、大阪事業所、豊洲事業所。従業員数は152名、平均年齢46歳(2022年3月31日現在)。
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- 会社名
- JA共済ビジネスサポート株式会社
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- 業種
- その他
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- エリア
- 東京都
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- 従業員数
- 152名(2022年3月31日現在)