- 羅臼漁業協同組合
- 経理課/寺上 雄介氏
検討から導入まで
迫られる労働法令への対応
運用の選択肢が多いことから奉行の導入を決意
2019年4月1日に働き方改革関連法が施行された。これにより企業は「時間外労働の上限規制」や「年休5日取得義務化」などに対応しなければならなくなった。つまり、企業はこれまで以上に労働法令の遵守徹底が求められようになったわけだ。
その時代の変化は漁業協同組合(以下、漁協と表記)にも押し寄せている。羅臼漁協総務部経理課の寺上雄介氏が語る。
「2018年より、働き方改革関連法の成立や世の中の流れから、関係団体の会議で『労働法令への対応』と『働き方改革の実現』が議題にあがるようになりました。このような中で、当組合では具体的な対応策を検討するようになったんです」
当時の羅臼漁協における勤怠管理は紙の出勤簿。打刻はしておらず、出勤時に押印するだけの“出席確認”を目的としてものだった。そのため、職員の労働時間を把握できていなかった。これでは労働法令に適切に対応できない恐れがある。
「勤怠管理の土台がなく暗中模索の状況。そうしたなか、奉行Edge勤怠管理クラウドに出会いました。スマホやPC、ICカードなど、多様な打刻方法が選べて、運用の選択肢が多いことからから導入を決意。また、給与奉行との連携も決め手になりました」
業務時間の削減
市場でもスマホひとつで打刻が可能に
勤怠申請に必要な7段階のスタンプラリーもなくなった
同漁協における働き方は、事務所勤務の内勤者と市場勤務をメインとする外勤者に分けられる。しかし、書き入れ時となる繁忙期(8月から12月)は内勤者も漁獲量の計算業務を行うために早朝から市場勤務となる。そのため、打刻は全職員がスマホで行うことにした。スマホならば就業場所を問わずに打刻が可能となるからだ。そして、スマホ打刻の導入と同時に勤怠申請・承認をWeb化。残業や有休、欠勤の申請を申請書ではなくシステムによって行うことにした。例えば有休を申請する際、これまでは申請書への代筆を同僚などに依頼する必要があった。しかし、現在は自宅からスマホで自ら簡単に行えている。申請に伴う余計な手間がなくなっているわけだ。
承認も劇的に楽になっている。従来は申請書において多数の役職者の承認印が必要だったが、Web化によって回覧の手間が不要になった。
「例えば一日分の有休の承認を得るのでさえ、係長、課長、次長、部長、参事補、参事、専務・・・と、スタンプラリーのようにフロアを回らなければなりませんでした(笑)」
承認に伴うスタンプラリーのほかにも総務担当者の負担軽減につながった事務作業がある。
「毎日10枚程度提出される申請書をチェックして押印するのが日課でした。この作業は結構な手間でしたが、Web化によって不要になりました。また、定期監査への対応も楽になりましたね。出勤簿の押印漏れのチェックのほか、残業などの勤怠実績を別途計算してエクセルに転記する作業がなくなったんです。今ではボタンひとつで定期監査に必要な資料を作成できています。定期監査は3か月に1度行われるので、資料作りは大きな事務負担でした」
スマホ打刻の導入と勤怠申請・承認のWeb化によって業務プロセスの削減や事務作業の軽減を実現しているのだ。
苦労と効果
21時には事務所から人がいなくなり、残業時間が大幅減少
「見える化」で残業マネジメントができる組織へ
現在はスマホ打刻が定着しつつあるが、システム導入当時は「手間が増加した」というネガティブな印象を持つ職員も少なくなかったという。「押印だけのシンプルな“出席確認”から、いきなり打刻による労働時間管理へ切り替えたことは、職員にとって大きな変化だったのでしょう」と寺上氏は言う。
そこで総務部は職員全員に向けて説明会を実施。今後、労働法令に適切に対応することが必要だという旨を職員に説明して理解を得ることに努めた。しばらくの間は出勤簿を併用していたが、現在は完全にシステムへ移行し、次第に打刻も定着していった。こうしたなか、労働時間が可視化されたことで意外な変化があった。
「深夜残業が減ったんです。かつては23時、24時まで残っているのが当然でしたが、今では21時までにほとんどの職員が帰宅しています。ノー残業デーの実施など、これまで行ってきた施策に加え、システム化が仕事の時間管理への意識を高めるきっかけとなったのかもしれません」
さらに、職員の労働時間の実態が露わになるなかで、新たな課題が見てきたという。
「管理職の残業が特に多いことに気づいたんです。もしかすると、キャパシティを超えた仕事量を抱えているのかもしれません。残業抑制のためには職務分担の見直しなどが必要でしょう」
システムを導入することで今までわからなかった職員の労働時間が見えてきた。そこで初めて管理職の残業の多さに気づけたというわけだ。労働時間を「見える化」したことで、残業を「マネジメント」するステップへと踏み出しつつある。
導入効果ダイジェスト
- 北海道の漁協の中ではじめて勤怠管理をクラウド化。申請・承認のWeb化で紙による業務負担がなくなっただけでなく、労働時間の「見える化」で残業マネジメントができる組織へ。
- スマホ打刻によって市場で勤務する従業員の労働時間管理ができるようになった
- 勤怠申請のWeb化で、有休などの申請時に代筆を依頼する必要がなくなった
- 勤怠承認のWeb化で、何名もの承認者のデスクを回る手間がなくなった
- 勤怠実績表がボタンひとつで作成できるようになり、定期監査に迅速に対応できるようになった
- 従業員の時間管理への意識が高まり、退社時刻が全体的に早まった
- 労働時間の可視化で管理職の残業の多さに気づくことができ、残業を「マネジメント」するステップへ踏み出せた
今後の展望
人手不足になりやすい繁忙期の残業抑制が課題
システム化をバネに課題解決に向けて取り組む
漁業は自然を相手にする事業だ。それだけに、特に繁忙期においては労働時間をコントロールしにくい実態がある。「残業規制の上限内に収めようと変形労働時間制のほか、パート・アルバイトを活用していますが、それでも繁忙期は残業が慢性化しています。ほかの地区の漁協も人を常に募集しているなかでパート・アルバイトの確保は年々困難になっています。そのため、職員の残業で対応せざるを得ない現実があります」とはいえ、労働法令への適切な対応や働き方改革の推進は時代の要請だ。
これらは解決の難しい課題だが、奉行Edge勤怠管理クラウドが突破の糸口となりそうだ。同漁協はシステムの導入によって残業抑制を図るための土台を得て、次のステージへと踏み出す。寺上氏は「残業抑制のためには職務分担の見直しなどが必要」と語った。これからは組織全体を巻き込んだ取り組みを行い、課題を乗り越えていくのだろう。乗り越えた先にはどんなステージが待っているのか。羅臼漁協の変革に注目だ。
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企業情報
1949年設立。スケトウダラ、ホッケ、秋鮭などの漁獲や昆布等の加工・販売を手がける。 近年は、うに・ホタテを中心に育てる漁業にも注力。「羅臼昆布」や高級鮭「羅皇」は高級ブランド品として知られる。1999年には羅臼町内に漁協直営店「海鮮工房」をオープン。
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- 会社名
- 羅臼漁業協同組合
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- 業種
- 漁業協同組合
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- エリア
- 北海道目梨郡羅臼町
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- 従業員数
- 63名(2020年1月時点)