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雇用保険被保険者離職証明書とは?記入例や提出時の注意点を解説

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雇用主は従業員が退職した際、原則として雇用保険被保険者離職証明書を作成します。通称「離職証明書」と呼ばれ、退職者が基本手当(以下、失業給付)を受け取るために欠かせない重要な書類です。ただし、雇用保険被保険者離職証明書はすべての退職者に作成するわけではありません。

本記事では、離職証明書を作成するケースと作成しないケース、具体的な記載内容、作成する際の注意点などをわかりやすく解説します。

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目次

雇用保険被保険者離職証明書とは離職票の請求に必要な書類のこと

雇用保険被保険者離職証明書(以下、離職証明書)とは、従業員が退職する際、失業給付の手続きに必要な「離職票」を希望したときなどに雇用主が作成する書類のことです。雇用主は、退職日の翌々日から10日以内に、離職証明書をハローワークに提出します。

離職証明書は、3枚つづりの複写式です。1枚目が事業主控え、2枚目がハローワーク提出用、3枚目が退職者に交付する「離職票-2」となります。
離職証明書は複写式のため、用紙をインターネット上などからダウンロードすることはできません。ハローワークの窓口で用紙を受け取って記載・提出するか、電子申請(e-Gov)で申請をします。

雇用保険被保険者離職証明書の作成が必要な場合

退職者が希望するときや退職者の年齢が59歳以上のときは、離職証明書の作成が義務付けられています。それぞれのケースの詳細は下記のとおりです。

退職者が離職票を請求したとき

退職者が離職票を請求したとき、雇用主は離職証明書を作成する義務があります。
離職票とは、離職証明書3枚目の「離職票-2」に該当する書類のことです。雇用主が離職証明書をハローワークに提出することで、離職票が交付されます。
退職者が失業給付を受給するためには、離職票が必要です。そのため、退職が決まった従業員には、離職票が必要かどうか確認しましょう。

雇用主は、退職者の退職日の翌々日から10日以内に、離職証明書と「雇用保険被保険者資格喪失届」を所轄のハローワークに提出します。

雇用保険被保険者資格喪失届については、当サイトの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
雇用保険被保険者資格喪失届の書き方・添付書類など提出時の注意点

退職者の年齢が59歳以上のとき

退職者の年齢が59歳以上の場合は、本人が希望しなくてもハローワークに離職票を交付してもらわなければなりません。
60歳から64歳までの人が仕事に就く場合、「高年齢雇用継続給付」の手続きが必要です。その際、離職票を提出する必要があるためです。
59歳で退職すると再就職のときに60歳を迎えている可能性があることから、退職者が59歳以上の場合は、離職証明書を作成し、ハローワークに離職票を交付してもらう必要があります。

雇用保険被保険者離職証明書の作成が不要な場合

下記に該当する場合は、離職証明書を作成する必要はありません。作成しても特に問題はありませんが、必ずしも必要ではないケースについて確認しておきましょう。

退職者が離職票を請求しないとき

退職者が離職票を請求しない場合は、離職証明書の作成も不要です。雇用保険被保険者資格喪失届のみ所轄のハローワークに提出してください。

なお、退職者が離職票を請求しないケースは、転職先がすでに決まっていて失業給付の対象にならない場合などです。

従業員が死亡したとき

従業員が死亡した場合は、離職票は必要ありません。そのため、離職証明書の作成も不要です。ただし、雇用保険被保険者資格喪失届は提出する必要があるため、注意しましょう。

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雇用保険被保険者離職証明書の書き方

離職証明書の書き方について、記入欄の項目ごとに解説します。
なお、離職証明書を紙でハローワークに提出する場合と電子申請(e-Gov)で手続きする場合、どちらも記載内容に違いはありません。

■雇用保険被保険者離職証明書の記入例
出典:ハローワークインターネットサービス「記入例:雇用保険被保険者離職票−2」(様式第6号)

■雇用保険被保険者離職証明書の記載事項

記入欄 記載事項
(1)被保険者番号 退職者の雇用保険被保険者番号
(退職者が1981年7月6日以前に雇用保険に加入していて被保険者番号が16桁になっているため、下段の10桁の数字を記載し、残りの一枠は空欄にする)
(2)事業所番号 自社の事業所番号
(3)離職者氏名 退職者の氏名
(4)離職年月日 退職者が離職した日
(原則として「雇用保険被保険者資格喪失届」に記載した離職年月日と同じ日となる)
(5)事業所名、所在地、電話番号 自社の事業所名、住所、電話番号
(6)離職者の住所または居所 退職者の退職時点での住所または居所
(住所変更が決定しており退職者が希望するのであれば、変更後の住所を記載。本人が退職後に住所変更手続きをすることも可能)
(7)離職理由欄(用紙2枚目)
  • 離職理由に該当するものを1つ選択
  • 「具体的事情記載欄」に具体的な内容を記載(「自己都合による退職」など)
(8)被保険者期間算定対象期間 離職日からさかのぼり、賃金支払基礎日数11日以上の月が12ヵ月以上含まれる時点までの被保険者期間
(一般被保険者と高年齢被保険者はA欄、短期雇用特例被保険者はB欄に記載)
(9)被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数 「(8)被保険者期間算定対象期間」のうち、賃金支払いの対象になる日数
  • 完全月給制:1ヵ月の全日数(欠勤を含む歴日)
  • 日給月給制:欠勤時の給与控除割合に応じて記載
  • 時給制または日給制:実働日数
    (出産、傷病などの理由で30日以上賃金を支払っていない期間がある場合は記載しない。別途、備考欄に該当の期間と傷病名などの理由を記載)
(10)賃金支払対象期間 賃金の支払いを行った期間
(給料の締め日を基準に、退職日からさかのぼって、基礎日数11日以上の月が6ヵ月分以上含まれるように記載)
(11)賃金支払対象期間における基礎日数 「(10)賃金支払対象期間」における賃金支払いの基礎日数
  • 月給制:1ヵ月の全日数(一番上の行は該当期間の日数)
  • 時給制または日給制:実働日数
(12)賃金額 「(10)賃金支払対象期間」における賃金額
(正社員など決まった賃金がある場合はA欄、時給や日給または出来高払い制などはB欄に記載。定額の手当がある場合は固定的賃金のみA欄に記載して「計」に合計を記載)
(13)備考 未払い賃金の有無と金額など、そのほかの記載事項
(14)賃金に関する特記事項 毎月の賃金以外に3ヵ月以内の期間ごとに支払われている手当などがある場合の、支払日、名称、支給額

上記のうち、「(7)離職理由欄」の内容は、失業給付の金額に関わります。例えば、倒産や解雇などによって突然の退職を余儀なくされた退職者は「特定受給資格者」に、期間の定めがある労働契約が更新されなかったことなどによるやむをえない退職をした人は「特定理由離職者」に該当します。失業給付の給付制限期間がなくなるほか、所定給付日数が変わる可能性もあるため、正確に記入しましょう。

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雇用保険被保険者離職証明書の作成時に注意が必要なケース

離職証明書の作成時には、注意が必要なケースがあります。下記に該当する場合、記入方法などに注意しましょう。

退職者に休業手当を支払った期間がある場合

離職証明書に記載する「(10)賃金支払対象期間」において、休業手当を支払っていた場合は、その旨を記載しなければいけません。記入例は下記のとおりです。

<休業手当の支払いがあった場合の記入例>

  • 連続しない休業があった場合:休業◯日、所定休日0日、休業手当◯◯円
  • 連続した休業があった場合:休業◯日、所定休日◯日、休業手当◯◯円
  • 全期間休業の場合:全休業(休業日数などの記載は不要)

なお、時短休業があった場合、時短の日の賃金額が通常の60%以上のときは、休業しなかったものとみなします。60%未満のときは、労働賃金と休業手当の合計額を休業手当として記載してください。

■時短休業の記載方法
※厚生労働省「休業手当がある場合の離職証明書等記載の注意点

退職者に育児・介護等で時短勤務をしていた期間がある場合

時短勤務をしていた従業員が退職した際は、時短勤務中の賃金額をもとに離職証明書を作成します。

ただし、倒産や解雇などの理由で退職した「特定受給資格者」で、なおかつ育児や介護のための休業、もしくは時短による給料の減少や喪失がある退職者は、特例によって時短勤務前の賃金日額によって失業給付の計算を行います。時短の開始日と終了日を備考欄に記載しましょう。併せて、「雇用保険被保険者短縮措置等適用時賃金証明書」を提出する必要もあります。

賃金支払状況等を1枚の離職証明書に記載しきれない場合

賃金支払状況等の欄が不足していて1枚に記載しきれない場合は、もう1枚用紙を用意して、右上に「続紙」と記載して続きを記入しましょう。電子申請(e-Gov)で手続きをするときは、画面をスクロールすると続紙が表示されます。

なお、賃金支払状況等の欄が不足するのは、賃金支払基礎日数が11日未満の月が生じた場合です。離職証明書には、退職日からさかのぼって2年以内のあいだで、賃金支払基礎日数が11日以上の月を12ヵ月分記入しなければいけません。下回る月についても記載は必要なため、賃金支払基礎日数の少ない月が複数ある従業員は記入欄が不足します。

退職者が「短期雇用特例被保険者」に該当する場合

退職者が「短期雇用特例被保険者」に該当する場合は、離職証明書の「(8)被保険者期間算定対象期間」欄に、離職日を含む月から短期雇用特例被保険者になった時点までさかのぼって、期間を記載しましょう。

なお、短期雇用特例被保険者は、季節雇用の従業員のうち下記のいずれにも該当する人を指します。

<短期雇用特例被保険者に該当する人>

  • 4ヵ月以上の期間を定めて雇用されている
  • 1週間の所定労働時間が30時間以上

退職者が「高年齢被保険者」に該当する場合

退職者が「高年齢被保険者」に該当する場合は、退職前6ヵ月分の「(8)被保険者期間算定対象期間」と「(9)被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数」を記入すれば、それ以降は省略しても問題ありません。

なお、高年齢被保険者とは、65歳以上で雇用保険に加入している人のことです。ただし、短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者に該当する人は含みません。

雇用保険被保険者離職証明書の提出時の注意点

離職証明書は作成時以外に、提出する際にも注意するポイントがあります。提出時は、下記の点に気をつけましょう。

離職証明書の提出期限を守らないと罰則が科せられる可能性がある

離職証明書の提出期限は、退職日の翌々日から10日以内です。提出する必要があるにもかかわらず、提出期限を過ぎてしまうと、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。 また、退職者から離職票を希望されたにもかかわらず応じなかった場合も、同様の罰則が科せられる可能性があります。

離職理由によって添付書類が変わる

離職証明書を提出する際は、離職理由を確認するための添付書類が必要です。離職理由に応じて、下記の書類を添付しましょう。

■離職証明書に添付する書類

退職理由 添付書類
自己都合 退職願
解雇・退職勧奨 解雇通知書、退職証明書、労働者名簿
契約期間満了 雇用契約書
定年退職 就業規則
再雇用満了 就業規則、再雇用規定、再雇用期間の契約書
重責解雇 「解雇予告除外認定申請書」の写し(ない場合は、就業規則、懲罰委員会議事録、本人署名付きの顛末書)
休職期間満了 就業規則、休職の開始日と終了日がわかる通知書
週20時間未満 変更前および変更後の雇用契約書

雇用保険被保険者離職証明書と離職票の違い

離職証明書と離職票は、混同しやすい書類ですが、目的が明確に異なります。
離職証明書は、離職票を交付してもらうために雇用主が作成し、ハローワークに提出する書類であることに対し、離職票は、失業給付を受給するために退職者がハローワークに提出する書類です。

前述のとおり、離職証明書は3枚複写になっていて、離職票は3枚目の「離職票-2」に該当します。雇用主が離職証明書を記入してハローワークへの提出を済ませると、離職証明書1枚目の「離職票-1」と「離職票-2」が交付されます。雇用主は、退職者へ離職票を渡しましょう。

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雇用保険被保険者離職証明書と退職証明書の違い

離職証明書と退職証明書も混合されやすいですが、退職証明書は該当の人物が確かに退職したことを証明する書類です。離職証明書が公文書であるのに対し、退職証明書は私文書となり、雇用主が独自に作成して退職者に発行します。そのため、決まったフォーマットなどもありません。

退職証明書は、国民健康保険や国民年金の手続き時のほか、退職者の転職先企業への提出が必要になる場合があるため、希望があれば必ず作成しましょう。

退職証明書については、当サイトの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
退職証明書の書き方とは?記載事項と注意点をわかりやすく解説

従業員の退職時に企業が行う手続き

従業員が退職した際は、離職証明書の作成以外にもさまざまな手続きをしなければなりません。従業員の退職時に必要となる手続きについて確認していきましょう。

■従業員の退職時における手続き

手続き 期限 提出書類 提出先
雇用保険 退職日の翌々日から10日以内
  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書
ハローワーク
健康保険
厚生年金保険
退職日の翌日から5日以内
  • 健康保険、厚生年金被保険者資格喪失届
  • 健康保険証
年金事務所
住民税 退職日の翌月10日
  • 特別徴収に係る給与所得者異動届出書(退職者に渡す場合を除く)
退職者の居住地の区市町村

なお、加入している健康保険が協会けんぽ以外の場合は、健康保険の資格喪失手続きを健康保険組合に提出する必要があります。手続き方法や期限については、加入している健康保険組合の案内を参照してください。

従業員の退職時に企業が渡す書類

雇用主から退職者に渡す書類は、離職票以外にも複数あります。状況によって渡す書類の種類が変わるため、どの書類を用意しなければならないのか確認しておきましょう。

<企業から退職者に渡す書類の例>

  • 離職票
  • 源泉徴収票
  • 退職証明書
  • 雇用保険被保険者証(会社が預かっていた場合のみ)
  • 健康保険資格喪失証明書(作成義務はない)
  • 特別徴収に係る給与所得者異動届出書(転職先に本人が持参する場合のみ)

退職にまつわる手続きをスムーズに行おう

従業員が退職する際は、離職証明書をはじめとしたさまざまな書類を作成しなければいけません。作成が漏れてしまったり提出が遅れたりしないように、必要な手続きをリストアップして進めましょう。

効率良く正確な手続きを行うためには、労務管理システムの活用が便利です。OBCの「奉行Edge 労務管理電子化クラウド 」なら、必要な手続きをリスト化してチェックしながら進められるため、手続き漏れの心配がありません。離職証明書に記載しなければならない賃金情報や勤怠情報も、「給与奉行クラウド 」と連携することで、自動収集できます。作成した離職証明書や資格喪失届をシステム上から電子申請で提出することも可能です。退職手続きの効率化にご活用ください。

よくある質問

雇用保険被保険者離職証明書とは何ですか?
雇用保険被保険者離職証明書とは、退職者が失業給付を受給するための手続きで必要な離職票をハローワークから交付してもらうための書類のことです。従業員が退職した際に、雇用主が管轄のハローワークに提出します。
雇用保険被保険者離職証明書は、通称「離職証明書」と呼ばれています。
雇用保険被保険者離職証明書の作成は義務?
退職者が希望した場合や退職者が59歳以上の場合は、雇用保険被保険者離職証明書を作成する義務があります。従業員が希望せず、59歳未満であれば作成しなくても問題ありません。
山本 喜一

■監修者
山本 喜一

特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。

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