タイムカードの電子化とは、従来紙で管理していたタイムカードを電子的に管理することです。タイムカードを電子化することで、事務作業の効率化やペーパーレス化、テレワークなど、柔軟な働き方の推進に役立つでしょう。
ただし、タイムカードの電子化にはデメリットもあり、スムーズな導入にはポイントを押さえる必要があります。
本記事では、タイムカードの電子化を検討したほうがいい企業の特徴や、電子化のメリット・デメリットのほか、スムーズな導入のためのポイントなどをまとめて解説します。
目次
- タイムカードの電子化とは出退勤の管理を電子的に行うこと
- タイムカードの電子化を検討すべき企業
- タイムカード電子化のメリット
- タイムカード電子化のデメリット
- タイムカードを電子化する際のポイント
- タイムカードの電子化で勤怠管理を効率化しよう
タイムカードの電子化とは出退勤の管理を電子的に行うこと
タイムカードの電子化とは、出退勤の記録や管理を電子的に行うことです。かつては、多くの企業が出退勤の管理を紙のタイムカードによる打刻で行っていました。
しかし、紙のタイムカードには、残業時間や出勤日の計算を手動で行わなければいけなかったり、タイムカードの保管に手間とコストがかかったりといった多くの課題があります。
タイムカードを電子化することで、こうした課題を解決できるでしょう。
タイムカードの電子化に役立つ勤怠管理システム
タイムカードの電子化は、勤怠管理システムを利用して行います。勤怠管理システムの主な機能は、下記のとおりです。
<勤怠管理システムの主な機能>
- 打刻機能
- 勤怠の自動集計機能
- 長時間労働へのアラート機能
- 有給や休日出勤などの申請、承認機能
- 有給休暇管理機能
- 給与計算システム等との連携機能
- シフト管理機能
- 出勤簿等の出力機能
勤怠管理システムを導入することで、リアルタイムでの勤怠の自動集計や休暇の管理、申請、承認フローなどのペーパーレス化と効率化が可能です。
勤怠管理システムの種類
勤怠管理システムは、オンプレミス型とクラウド型の2種類に大別できます。
種類 | 特徴 |
オンプレミス型 |
|
クラウド型 |
|
オンプレミス型にもクラウド型にもそれぞれのメリット・デメリットがありますが、中小規模の事業者やコストを抑えて運用を行いたい事業者は、クラウド型の利用がおすすめです。
タイムカードの電子化を検討すべき企業
下記の条件にあてはまる企業は、タイムカードの電子化によって多くのメリットを得られる可能性があります。確認の上、導入を検討してみましょう。
勤怠管理業務の負担を軽減したい
タイムカードを電子化する大きなメリットに、勤怠管理業務の負担軽減が挙げられます。
紙のタイムカードを利用する場合、タイムカードの回収やタイムレコーダーのメンテナンスなどの業務が生じます。しかし、タイムカードを電子化すれば、そのような業務は必要ありません。
<紙のタイムカードに関する業務の例>
- 市販のタイムカードを購入する
- 購入したタイムカードに従業員名や年月を記入する
- ラックにタイムカードをセットする
- 打刻し終えたタイムカードを回収する
- 各従業員の勤怠状況と残業時間を手計算する
- タイムカードを年月順に保管する
- タイムレコーダーの時刻のずれや故障の際のメンテナンス
タイムカードを電子化した場合、物理的にタイムカードを用意する必要がないため、タイムカードの管理者にかかる負担を大きく軽減できます。
また、勤怠状況や残業時間も自動で計算されるため、手計算する手間と時間を削減できます。計算ミスもなくなり、正確な勤怠管理が可能です。
残業がある
勤怠管理を電子化することで、残業時間の管理が容易になります。残業代の割増率は、「通常の残業」「深夜残業」「月60時間以上の残業」「休日出勤」でそれぞれ異なるため、残業時間の集計をする際はそれぞれ区分して算出しなければいけません。
また、労働基準法によって、原則として月45時間を超える残業は禁止されています(特別条項付きの36協定を締結すれば条件付きで可能)。残業が多い企業で紙の勤怠管理を行っていると、リアルタイムでの残業時間の把握が難しく、知らず知らずのうちに45時間を超えてしまうおそれがあります。
タイムカードを電子化することで、残業時間の区分別の自動集計やリアルタイムでの残業時間の集計のほか、残業時間のアラートを発信することもできます。
36協定については、当サイトの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
36協定とは?残業時間の上限規制や罰則、協定届の新様式について解説
直行直帰やテレワークの従業員がいる
タイムカードを電子化すれば、事務所に出向いてタイムカードの打刻をしなくても勤怠の登録が可能です。そのため、直行直帰やテレワークなど、事務所での打刻が難しい従業員の勤怠管理も正確に行えます。
ただし、勤怠管理システムの打刻方法は、商品によって異なります。直行直帰する従業員が打刻できるようにするためには、スマートフォンから出退勤を登録できるシステムがおすすめです。
ペーパーレス化を進めたい
タイムカードを電子化することで、ペーパーレス化が進み、業務の効率化に役立ちます。
紙のタイムカードを保管する必要がなくなり、システム上で勤怠関連の申請や承認ができるようになれば、申請書などもなくせます。また、出勤簿もシステム上に保存できるため、紙で作成してファイリングする手間がかかりません。
勤怠状況をデータで管理していれば、給与計算システムと連携して勤怠状況を自動で反映させることも可能です。紙ベースのデータを転記する必要がなくなり、効率化とミスの軽減につながるでしょう。
複数の拠点がある
タイムカードを電子化すれば、複数拠点の勤怠管理を一元化できます。
複数の支店や工場、営業所などがある企業では、それぞれの場所でタイムカードを取りまとめて本社に送る場合が多いのではないでしょうか。
勤怠管理システムを導入してタイムカードを電子化すると、勤怠の締日にタイムカードや集計表を送る作業がなくなり、効率的に処理できます。
タイムカード電子化のメリット
タイムカードの電子化には、多くのメリットがあります。続いては、電子化によって得られる主なメリットを見ていきましょう。
勤怠実績の自動集計ができる
タイムカードの電子化によって、就業日数や残業時間など勤務実態の自動集計が実現します。手計算する必要がなくなるため、担当者の負担軽減や効率化、人件費の削減、ミスの軽減につながります。
労働時間のリアルタイム把握が可能
勤怠管理システムでは、日々の記録をもとに労働時間をリアルタイムで把握できます。各部署や拠点ごとの残業時間の合計や、従業員別の労働時間などを確認できるため、問題があればすみやかに対処が可能です。
残業が一定時間を超えたり、打刻を忘れたりした従業員に対してアラートを出すこともできるため、結果として労働基準法の遵守にもつながります。
紙のタイムカードを保存するコストが減る
タイムカードを電子化すれば、勤怠情報を電子データとして保存できるため、紙のタイムカードを物理的に保存する必要がありません。紙のタイムカードを保存するためには、保管スペースの確保と管理が必要ですが、電子化によって、このようなコストと手間を省けます。
なお、労働関係に関する書類の保管期間は労働基準法により5年(当分の間は3年)と定められているため、紙のタイムカードの場合、保存義務のある期間のタイムカードを保管できるスペースを用意しなければいけません。
また、保存義務のある期間が経過した後には、適切な形で処分する必要もあります。
出典:厚生労働省「労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号)の概要」
打刻ミスの修正がシステム的にできる
勤怠管理システムでは、打刻ミスがあった際に、システム的に修正を行うことが可能です。紙のタイムカードのように、修正内容を申告し、管理者が手書きで修正する必要はありません。従業員と管理者の手間も軽減でき、手書きの修正によるミスや読み間違いなどもなくせます。
ただし、打刻ミスの修正など、イレギュラーな出来事にも対応できるよう、従業員や管理者に対して勤怠管理システムの操作方法を共有・周知することが必要です。
不正打刻を防止できる
紙のタイムカードの場合、他者でも打刻が可能なため、故意に不正を働いたりタイムカードを取り間違えて他人のカードに打刻してしまったりといったことが起こりえます。
勤怠管理システムでは、「従業員が自分のパソコンやスマートフォンから打刻する」「入退館時に利用するICカードで打刻する」などの方法で勤怠を管理します。システム化を進めることで、不正やトラブルを未然に防ぎ、正確性の高い勤怠管理が可能です。
タイムカード電子化のデメリット
メリットの多いタイムカードの電子化ですが、デメリットも考えられます。デメリットも知った上で、タイムカードの電子化を検討しましょう。
タイムカードを電子化するにあたって考えられるデメリットは、下記のとおりです。
導入までの費用と時間がかかる
タイムカードを電子化するためには、一定の費用と時間がかかります。また、これまでのやり方を一新することになるため、移行期間中は労務担当者の負担が大きくなる可能性は否めません。
ご紹介したメリットを踏まえ、費用や労力が効果に見合うかどうか、検討が必要です。
勤怠管理システムのミスマッチ
勤怠管理システムにはさまざまな種類があるため、現場の従業員に適したものを導入しなければ、利用が進まない可能性もあります。
特に、複数拠点があり、拠点によって異なる働き方をしている場合や、変形労働時間制やフレックスタイム制などを導入している場合などは、すべての従業員が問題なく利用できるか確認が必要です。
勤怠管理システムで対応できない部分を手動で修正する」といった運用をしていると、電子化のメリットが半減してしまいます。適切に運用できるよう、勤怠管理システムのサービスを確認してください。
また、勤怠管理の運用の変更は、従業員にとって多少なりとも負担になります。従業員に対して電子化のメリットを伝えるとともに、操作方法のレクチャーといったフォローを行いましょう。
就業規則の変更が必要な場合がある
タイムカードの電子化で勤怠管理のフローが変わり、打刻に関するルールや、就業規則の変更が必要な場合もあります。就業規則を変更する際は、労働基準監督署への届出や従業員への意見聴取などが必要なため、計画的に準備を進めなければなりません。
タイムカードを電子化する際のポイント
タイムカードを電子化する際は、下記のポイントに注意しましょう。トラブルを招かないためにも、準備を整えてから導入する必要があります。
自社に合ったシステムを選定する
タイムカードを電子化できる勤怠管理システムには、さまざまな種類があります。自社の勤怠管理に関する課題をまとめ、解決するための機能があるかを確認し、システムを選定するようにしてください。
また、現場に合った打刻方法を検討することも大切です。勤怠管理システムの打刻方法には、下記のような種類があります。
<勤怠管理システムの打刻方法の例>
- スマートフォンやパソコンからの打刻
- 入退館時に利用するICカードで打刻
- 指紋などの生体認証での打刻
- 共有パソコンやタブレットからの打刻
- チャットツール上からの打刻
従業員に導入意図や操作方法を周知する
勤怠管理システムの導入は、従業員全員に影響を及ぼすものです。導入意図や操作方法を周知して、理解を得なければいけません。そのため、従業員が前向きに協力してくれるよう、十分な情報の提供を行います。
同時に、勤怠管理を行う担当者に対してもフォローが必要です。不明点などをすぐに確認できる、サポート体制の整ったシステムの利用がおすすめです。
社内ルールを整備する
タイムカードの打刻方法が変わることで、社内ルールにも変更が生じる可能性があります。
「勤怠計算フロー」「勤怠関連の申請フロー」「シフト作成フロー」など、変更が生じる業務とそれに関するルールを確認し、必要に応じて社内ルールを整備します。
前述のとおり、就業規則の変更を伴う場合は、必要な手続きを経て労働基準監督署への届出も行わなければいけません。
導入初期は旧来の方法と並行稼働する
勤怠管理を紙のタイムカードから電子化する際は、一部の部署のみで一定期間のテスト運用を行ったり、一定期間、旧来の方法と並行稼働したりする運用をおすすめします。万が一移行がうまくいかなかった場合、正しい勤怠情報を収集することができず、残業代が支払われないなど、違法な状態となってしまうおそれがあります。「問題なく移行できるか」「並行稼働して予期せぬトラブルが起こらないか」を確認しておくと安心です。
タイムカードの電子化で勤怠管理を効率化しよう
タイムカードを電子化することで、勤怠管理の効率化やミスの軽減、リアルタイムでの一元管理といった多くのメリットを得られます。コストの削減にもつながるため、利用を検討してみましょう。
電子化の方法には、オンプレミス型とクラウド型の2種類がありますが、紙のタイムカードから移行するのであれば、比較的手軽に始められるクラウド型がおすすめです。
OBCの「奉行Edge 勤怠管理クラウド」では、ウェブやアプリからの打刻や各種申請、残業時間や有給休暇の取得状況の確認といった業務をまとめてデジタル化できます。「給与奉行クラウド」との連携により、給与関連業務の効率化も可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
■監修者
山本 喜一
特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。
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