昨今、時流に乗じて会計システムをオンプレミスからクラウドサービスに乗り換える企業が増えています。
しかし、乗り換えたことで「かえって生産性が落ちた」という声も聞かれ、自社の業務にフィットしたシステムに出会えず苦労している企業もあるようです。
そこで今回は、イマドキの「会計システムの乗り換え」について、検討すべきタイミングや乗り換え時の手順、特にクラウドサービスに乗り換える際に押さえておきたいポイントを紹介します。
目次
- 乗り換え検討のタイミングは?目安となる4つのきっかけ
- 会計システムの乗り換えはいつすべきか?
- データの移行手順
- 初めてクラウドサービスに乗り換えるときは要注意!
- クラウドサービスへの乗り換えで押さえておくべき3つのポイント
- おわりに
乗り換え検討のタイミングは?目安となる4つのきっかけ
会計システムの乗り換えを検討するタイミングは、主に「業務上で現行システムに何らかの不満や不安が生じた場合」となります。とはいえ、使い慣れたシステムであれば、そもそも普段から不便を感じることは少ないかも知れません。このような場合、乗り換えの検討の目安としては、次のような事象が発生した場合を想定しておくとよいでしょう。
●現行システムのサポートが終了するとき
現行システムのサポートが終了するタイミングで、乗り換えを検討するケースは多くあります。サポートが終了すると、なんらかの問題が生じても対応が受けられず、利用し続けることがリスクになります。そのため、サポートが終了する前に代替製品の準備が必要です。
オンプレミスの会計システムがサポート終了を迎える場合、後継ソフトが用意されているのがスタンダードです。ただし、多くの場合、ソフトの購入費用や新たなサポート費用が発生することになります。システムの新規導入費用ほどはかからなくても、比較的高額になるため、サポート終了を機により利便性・生産性の高いシステムに乗り換える企業も多く見られます。
●法律が改正されるとき
法改正が行われると、改正内容に対応するよう機能の追加や更新のためシステムのアップデートが必要になります。昨今の会計システムは、税率の変更など簡単な設定であれば、自社で設定を変えるだけで対応できる場合もありますが、例えばインボイス制度や電子帳簿保存法のような大きな改正になると、プログラム更新は必須です。
オンプレミスの会計システムで制度に対応するには、最新版のソフトを入手し、対象となるパソコン1台ずつに担当者が自ら設定をしていかなければなりません。しかし、クラウドサービスならプログラム更新が自動化され、設定作業や更新コストが発生しないため、法改正を機にオンプレミスからクラウドサービスに乗り換える企業が増えています。
●事業規模が拡大・変化したとき
例えば、経理部門が独立組織になるような組織編成の大幅変更が起こった場合や、上場計画が持ち上がった場合など、企業が成長すると会計システムに求める機能もより高度になっていきます。例えば、事業規模が拡大すれば経営資料を作成する機会が増えますが、その際に要件を満たした資料を作成できないと、何らかの機能アップが必要になります。部門ごとに予算・原価管理が必要になれば、管理会計機能も必要になるでしょう。IPO準備では、財務諸表の開示が求められるため、内部統制や内部管理体制の構築も必要です。
しかし、簡易的なシステムには上場企業に求められる機能が備わっていないことが多いため、管理会計機能が搭載されていないと「必要な機能がない」という事態になります。
他にも、他部門と連携させて売上や仕入データを共有する必要が生じた場合も、他システムと連携できる会計システムに乗り換えるというケースもあります。
このように、事業の成長とともにより高機能のシステムに乗り換えるケースは多々見られます。
●社内環境がデジタル化されたとき
昨今は、DX化の推進やテレワークなど多様な働き方への対応で、デジタル環境に移行する企業が増えています。しかし、オンプレミスの会計システムを利用し続けていると、こうしたデジタル環境への対応が難しくなります。そこで、デジタル化推進を機に、オンプレミスからクラウドサービスに乗り換えるパターンも多くなっています。
会計システムの乗り換えはいつすべきか?
1年を通じて乗り換えの実行に適したタイミングといえば、やはり決算期になるでしょう。 システムを乗り換える際、過去の残高データが確定していることが重要です。例えば、勘定奉行クラウドに乗り換える場合、消費税申告書や資金繰り表などを作成するには、会計期首からの仕訳データが登録されている必要があります。また、元帳などで明細ごとの金額を確認する場合にも、会計期首からの仕訳データが必要です。
期首のタイミングなら、残⾼が一致している状態から運用をスタートさせやすいため、ベストタイミングといえます。
とはいえ、期中の移行でも問題はありません。
例えば、期初に乗り換える場合、前期の決算は旧システムで進めつつ、会計期首からは新システムで仕訳伝票入力をはじめ、残高が旧システムで確定した時点で新システムに移行します。この場合、完全に切り替えが完了するまで2〜3ヵ月は想定しておきます。
一方、期中移行の場合は1ヵ月の短期導入が多く、月次での残高が合っていれば基本的に運用をスタートできます。完全切り替えにも1ヵ月程度あれば充分です。この場合は、稼働開始時点の残高をセットしてスタートするか、期首からの仕訳データを取り込んで稼働させる方法があります。稼働開始時点の残高をセットする場合は、旧システムから稼働前日までの貸借対照表などを用意し、残高がすぐにわかるようにしておくと、スムーズにその後の操作を進められます。
データの移行手順
(例)他社システムから勘定奉行クラウドへ移行する場合
会計システムの乗り換えでは、「自社でできる作業なのか」と不安に感じる担当者は多いでしょう。
一般的な会計システムでは、ベンダーが移行手順書を用意しており、自社でも対応できるようになっています。簡単な操作のものが多いため、情シス担当者でなくても対応しやすいでしょう。
例えば、勘定奉行クラウドでも「データ移行手順書」をご用意しています。他社システムから勘定奉行クラウドに移行する場合は、次の3つのステップで進めるようご案内しています。
1st. 事前準備
- 稼働時期の決定
- 過去の仕訳伝票の移行の有無と範囲の決定
- 旧システムからのデータ取り出し
2nd. 移行
- 経理業務に関わる規定を勘定奉行クラウドに設定
- 勘定科目や部門などを勘定奉行クラウドに設定
3rd. 稼働開始
- 勘定奉行クラウドで会計処理を開始
- 決算終了後の過去データを勘定奉行クラウドに移行し反映させる
1st 事前準備
まずは、新システムの稼働時期を期首にするか、期中にするかを決めます。どの時期に稼働させる場合でも、当期の開始残高は手動で入力するケースが多いため、移行が必要なデータを書き出すとともに、移行時点での貸借対照表も用意しておくとよいでしょう。
また、過去の仕訳伝票データを移行するかどうかも検討します。移行しない場合は、「過去データをPDF保存する」「出力して保存する」「旧システムをそのまま残す」といった保存方法が考えられます。 多くの場合、CSVデータに書き出すことができればインポートは簡単に行えますが、タブの設定などが異なると、正しくコンバート(移行)できない可能性があります。この場合、入力・設定し直さなければならなくなるため、乗り換えの検討時に「データのインポートがどこまでできるか」なども確認しておくことが肝要です。
例えば、勘定奉行クラウドにデータ移行する場合、旧システムから勘定科目・補助科目データ(勘定科目コード、補助科目コードは必須)、部門データ(部門コードは必須)、移行対象期間の仕訳伝票データなどを書き出します。勘定奉行クラウドで過去データも確認したい場合は、該当期間の仕訳伝票データの移行が必要です。また、期中に勘定奉行クラウドに移行して当期の消費税申告書を作成したい場合は、当期の期首日からの仕訳伝票データの移行が必要となります。
2nd 移行
旧システムのデータを移行する前に、新システムに自社の経理業務規定を設定する必要があります。業務規定を確認しながら、導入状況画面から自社の会計基準や経理方式、決算期などを画面に沿って設定していきましょう。また、マスターの桁数などのシステム設定も行います。基本的な設定ができれば、事前に用意した旧システムのデータを新システムに受け入れます。
勘定奉行クラウドの場合、「導入状況の確認」をクリックし、導入に必要な内容が設定しているか確認できます。
旧システムの受け入れは、汎用データ受入画面から受け入れるデータの種類を選択し、後は画面にしたがってセットしていくだけです。
その後、設定したファイルの項目と勘定奉行クラウドの項目を紐づけすれば、データの受入が完了します。この手順で、各データの受け入れ作業を行います。
ただし、勘定奉行クラウドで一度に移行できるデータは、2MB以内となります。 2MBを超える場合はファイルを分けて移行します。
勘定奉行クラウドなら、移行したいCSVデータを用意するだけで、最短1日で確実に移行することができます。特別なツールなどは必要とせず、手順書も揃っているため、手順に沿って進めるだけで簡単に移行作業が行えます。また、サポートセンターやパートナー企業のサポートを受けながら移行を進めることもできるため、困ったときはすぐ確認できます。
3rd 稼働
ここまでできれば、勘定奉行クラウドで仕訳伝票の入力ができるようになります。
あとは、旧システムで決算が終了したら、最終の残高データを移行すれば、全てのデータ移行が完了します。
初めてクラウドサービスに乗り換えるときは要注意!
昨今、法改正やデジタル化・DX化など社会的変化により、会計システムをオンプレミスからクラウド型に乗り換える企業が増えています。しかし、一度クラウドサービスに乗り換えても、「自社の業務に合わない」「使いづらい」と、間をおかず別のサービスに乗り換える事例も多発しています。
多くのクラウドサービスは、最新のIT技術や機能などを強く推していることもあり、高い効果に期待しやすいですが、自社の業務のやり方にマッチしていなければ、逆に生産性が落ちてしまうこともあります。加えて、クラウドサービスには「契約しやすく解約もしやすい」性質があるため、使いづらいシステムを長く使い続けるよりも、より生産性が期待できるサービスに乗り換えるほうが「費用対効果が高い」と判断されるようです。オンプレミスなら稼働までにかかる時間も費用も膨大になりますが、クラウドサービスは手軽に導入・稼働できるため、今後も “再乗り換え”が増加していくと予想されます。
このように、最新機能や操作性が逆に業務遂行のネックになるケースもあるため、クラウドサービス選びでは、自社に合ったシステムをしっかり吟味することが肝心です。
例えば、勘定奉行クラウドユーザーの株式会社div様は、導入したてのクラウド会計システムが業務スタイルに合わず、敢えて勘定奉行クラウドに再乗り換えしました。その結果、ようやく理想の業務スタイルの実現に近づけたそうです。
[事例]
導入した手のクラウド会計システムを敢えて勘定奉行クラウドに刷新した株式会社div様の場合
当社が目指しているのは、起票などの作業時間を徹底的に削減し、管理会計や財務分析のような「人にしかできない業務に時間を投じる」業務スタイルであり、この理想を実現するためのクラウド会計システムを必要としていました。
しかし、最初に導入したクラウド会計システムでは、起票に多くの時間がかかっていました。過去の仕訳データの複写や、明細の並び替えといった工程において、操作性や起票の処理能力が当社の経理業務の実態と合わなかったためです。このことが、月次決算の遅れを招く一因にもなっていました。
そこで、現行のクラウド会計システムで最大のボトルネックだった起票を最重視し、起票の処理能力が高く、「理想の業務スタイル」を実現するための生産性向上を図れるかどうかで選定し直したところ、経理担当者に寄り添った形で作られている勘定奉行クラウドに目が留まりました。
株式会社div様が勘定奉行クラウドを選んだ理由の詳細は・・・こちらをクリック
クラウドサービスへの乗り換えで押さえておくべき3つのポイント
クラウド会計システムに乗り換える際は、対のように「業務目線」「セキュリティ」「サポート体制」の観点から、自社に合ったサービスを選定することが重要です。
1.業務目線での見極め方
クラウドサービスには、サービス向上のため様々な最新デジタル技術が反映されています。クラウド会計システムの「自動化」「業務の効率化」は、もはや“クラウドサービスの定番”として欠かせない機能となっており、法対応はもちろん、業務効率化のために最新機能が次々に開発・搭載されるようになっています。
しかし、サービスによって処理方法や確認方法は異なるため、単なる機能一覧で○╳判定をしただけでは「これまで通りの業務ができるか」は判断できません。「ある」と思っていた機能が実際にはなかったり、機能追加するには別途費用がかかったりして、結果として導入して間もなく再乗り換えが必要になることもあります。
また、オンプレミスの会計システムではキーボード操作が中心ですが、クラウド会計システムにはWebブラウザ仕様とアプリケーションで仕様があり、Webブラウザ仕様のシステムを導入すると、キーボード操作に慣れている担当者には使いづらいことがあります。担当者が従前の操作方法を一気に変えるのは、なかなか難しいものです。いくら高度な機能が備わっているクラウドサービスでも、「従来の業務が遂行できない」「業務効率が落ちた」といった状況に陥るようでは、乗り換える意味がありません。新たなシステムの導入後に生産性が落ちることのないよう、選定時には、必ず実務担当者が実際に画面を確認したり操作したりすることが肝心です。
勘定奉行クラウドは、SaaS型サービスでは珍しいアプリケーション仕様で提供されており、クラウドサービスでありながら、オンプレ時代の処理スピードや操作性を継続できるため、実務担当者にとってストレスなく利用することができます。
2. セキュリティ体制の見極め方
会計システムは、企業経営の根幹となる機密情報を扱うため、情報漏洩やサイバー攻撃などへの具体的な対策を情シス担当者でなくてもしっかりと確認しておく必要があります。
クラウドサービスのセキュリティについては、政府から「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン」をはじめとする様々なセキュリティガイドラインが示されており、各ベンダーはそれらに準じてセキュリティ対策やサポートを行っています。しかし、その対策やサポート方法などについては、ベンダーの判断に委ねられているため、自社の運用に適した対策・サービスが提供されているかどうかを見極めることも重要です。
勘定奉行クラウドの場合、プラットフォームにMicrosoft Azureを採用し、アプリ提供範囲でも独自のセキュリティ対策を講じて万全の体制を構築しています。詳しくは、コラム「クラウドサービスの安全性の見極め方は?中小企業のセキュリティリスクや奉行クラウドの安全対策も紹介」をご参照ください。
3. サポート体制の見極め方
会計システムを乗り換えする際は、予期せぬトラブルに遭遇することも想定しておかなければなりません。頻繁に行う作業ではないため、自社内に情シス担当者がいたとしても移行作業に慣れていないというケースは往々にしてあります。クラウドサービスにもカスタマーサポートが提供されているものの、オンライン対応やチャット対応のみというサービスは多くあります。データ移行についても、「基本的には自社内で対応」が基本のため、問い合わせ方法によっては解決までに時間がかかることもあります。 データ移行や稼働に向けて不安がある場合は、こうしたサポート体制についてもしっかりと検討しておくことが肝心です。
勘定奉行クラウド場合は、チャットボットサポートはもちろんのこと、OBCサポートセンターも完備しており、電話、Fax、Webオンラインでのサポートのほか、リモートで画面越しに確認しながら一緒に会話で解決することもできます。また、全国のパートナー代理店がデータ移行作業を支援することもあり、こうしたさまざまな方法でシステムの有識者のサポートを受けながら移行が行えます。
おわりに
会計システムの乗り換えは、企業にとって重要なステップアップ・イベントとも言えます。しかし、準備と見極めを入念に行わなければ、せっかく乗り換えても上手く成果を上げられず、再度乗り換えすることにもなりかねません。
勘定奉行クラウドのように、企業規模に合わせて会計システムも進化することが出来れば、IPO準備や事業拡大など企業成長に合わせてグレードアップして長く使い続けることもできます。
会計システムを乗り換える際には、今回ご紹介したポイントを参考にしながら、自社に合ったサービスを上手に選び、将来にわたって継続的に利用できる環境を整備しましょう。
勘定奉行クラウドは「経理業務の効率化」を応援します!
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