雇用保険番号は、教育訓練給付金の申請や雇用保険加入手続きなどで必要となるため、適切に管理しておきたい情報の1つです。しかし、手続きのたびに管理ファイルをめくったり預かっている雇用保険被保険者証を探したりするのは手間がかかります。
そこで今回は、雇用保険番号について、業務上知っておきたい基礎知識や確認方法、効率的な管理方法などを紹介します。
目次
- 「雇用保険番号」とは?
- 雇用保険被保険者番号の確認方法
- 雇用保険被保険者番号で押さえておきたいポイント
- 雇用保険関係でもう1つ押さえておきたい番号
〜「雇用保険適用事業所番号」とは - 雇用保険番号の管理は「電子化」がおすすめ!
「雇用保険番号」とは?
「雇用保険番号」と聞いて、まず浮かぶのは「雇用保険被保険者番号」(以下「被保険者番号」)ではないでしょうか。
被保険者番号は、雇用保険に加入している個人に割り振られる「4桁―6桁―1桁」で構成される11桁の番号です。
雇用保険の主な目的は、失業・休業の際に給付を行い、労働者の生活を安定させることです。そうした手続きを行う際に被保険者番号が必要になります。そのため、個人が雇用保険に初めて加入した際に発番され、転職しても番号が変更されることなく、一生使うものとなります。
具体的に、被保険者番号が必要になる手続きには、次のようなものがあります。
- (1)⼊退社の雇⽤保険⼿続き
- (2)雇⽤保険の育児休業給付⾦や介護休業給付⾦の受給申請
- (3)教育訓練給付⾦の申請
- (4)求職者給付(いわゆる失業⼿当)の受給申請
なお、企業で従業員を1人でも雇用していれば、農林水産業の一部事業を除き、業種や規模を問わず雇用保険の適用事業所となり、パート・アルバイト・派遣などの雇用形態を問わず、一定の要件を満たしている従業員は雇用保険に加入する必要があります。
※ 雇用保険の詳細については、コラム「雇用保険とは?失業手当の給付条件や加入条件、手続き方法を解説」を参照ください。
※ 被保険者番号が必要になる各手続きについては、次のコラムも参照ください。
• 「これで安⼼!雇⽤保険被保険者資格取得届の書き⽅と申請時の注意点」
• 「雇⽤保険被保険者資格喪失届の書き⽅・添付書類など提出時の注意点」
• 失業⼿当について:雇⽤保険とは?失業⼿当の給付条件や加⼊条件、⼿続き⽅法を解説」
雇用保険被保険者番号の確認方法
退職した元従業員が転職先の企業へ入社する際や教育訓練給付を受ける際、あるいは失業手当を受ける際などは、従業員側から被保険者番号を慌てて問合せてくるケースがあります。担当者としては、いつでも確認の仕方を説明できるよう手順を把握しておくことが望ましいでしょう。
被保険者番号は、雇用保険被保険者証と離職票で確認することができます。
①雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証(以下「被保険者証」)は、紛失を防ぐため企業で保管するケースが多く見られます。このようなルールになっていると、転職経験のない労働者は退職するまで被保険者証を目にする機会がほぼありません。しかし、被保険者番号は退職後に発生する転職先やハローワークでの手続に必要になるため、返却時には被保険者証の役割や記載内容を簡単に説明しておくとスムーズです。
万が一、被保険者証を紛失してしまったという問い合わせがあった場合は、ハローワークの窓口に「雇用保険被保険者証再交付申請書」を提出すれば基本的に無料で再交付※される旨を伝えましょう。
※ 被保険者証の再交付について:窓口持参の場合は即日交付されます。郵送による手続きも可能ですが、郵送の場合は再発行された雇用保険被保険者証が届くまでに4〜5日かかります。なお、電子申請の場合は被保険者名義の電子証明書が必要となりますが、申込日の翌開庁日には発送されます。
②雇用保険被保険者離職票
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」記入例より抜粋
離職票は、個人が雇用されていた企業を離職したことを証明する書類で、ハローワークでの求職活動や失業手当の受給、教育訓練給付制度の利用時などに必要となります。被保険者でなくなった日の翌日(従業員が退職した日の翌々日)から10日以内にハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出し、手続きが完了したら「離職票-1」「離職票-2」が発行されます。
失業手当の給付手続きは本人が行うため、発行された離職票は速やかに退職者に渡しましょう。(退職後2週間〜1ヶ月ほどで手元に届くのが一般的です)その際、被保険者番号が正しく記載されているかを確認しておくと良いでしょう。
雇用保険被保険者番号で押さえておきたいポイント
従業員の被保険者番号に関して、担当者として押さえておきたいポイントがあります。
●被保険者番号を複数持っていないか確認する
失業手当の給付額は、失業までの雇用保険加入期間などによって決まるため、1社目の企業を退職して失業手当を受けずに1年以内に2社目の企業に就職した場合、2つの企業での加入期間は通算されます。そのため、被保険者番号は1人につき1つだけ発番されることになります。
しかし、転職者の中には、被保険者証を複数枚持っているケースが見られます。被保険者証が複数あるということは「被保険者番号が複数ある」ことを意味し、雇用保険上で同一人物として扱われていない可能性があります。別々の人物として扱われていると、本来受け取れるはずの給付が受けられなくなるため、被保険者番号を統一しなければなりません。
従業員の中途採用時には、被保険者番号が複数発番されていないかも確認しておきましょう。
●アルバイトでも被保険者番号を持っているか確認する
雇用保険は、加入要件を満たしていれば、アルバイト・パートなどの非正規雇用者も加入手続きを行わなければなりません。そのため、自社の正社員をアルバイトやパートとして再雇用する場合や、アルバイト雇用をした人材に過去に雇用保険の加入経験がある場合、雇用契約によって雇用保険の加入要件を満たせば、被保険者番号を引き継ぐ手続きが必要となります。
雇用保険の加入要件は次のとおりです。
- 31⽇以上継続雇⽤の⾒込みがあること
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上であること
- 学⽣ではないこと
※ 雇用保険の加入条件については、コラム「雇用保険とは?失業手当の給付条件や加入条件、手続き方法を解説」を参照ください。
●個人の経歴は被保険者番号からは遡れない
被保険者番号は、失業保険の申請や雇用保険の加入手続きなどで本人を特定するための番号です。そのため、被保険者番号だけで従業員の過去の勤務先を遡って確認することはできません。
ハローワークには、勤務先と雇用保険加入期間の履歴が被保険者番号に紐付けて記録されていますが、その情報が企業側に伝えられることはありません。
●被保険者番号は個人情報とともに慎重に管理する
被保険者番号で個人の経歴は遡れないとはいえ、ハローワークでは勤務先や雇用保険加入期間の履歴が紐付けられているため、個人情報と同等とみなされます。マイナンバーほど秘匿性の高い保管は求められていませんが、人事労務担当者としては被保険者番号も適切な管理方法を検討しておくことが大切です。
雇用保険関係でもう1つ押さえておきたい番号
〜「雇用保険適用事業所番号」とは
雇用保険番号には、「雇用保険適用事業所番号」(以下「適用事業所番号」)を表す場合もあります。
適用事業所番号は、雇用保険に加入している企業に割り振られる番号のことです。次のように「4桁―6桁―1桁」の11桁で構成されており、それぞれ意味があります。
1981年7月6日以前は10桁の事業所番号が採番されていましたが、現在の書類では新たに最後の1桁が付与されています。
雇用保険の加入要件を満たした労働者を初めて雇い入れた際、事業主は「雇用保険適用事業所設置届」や「雇用保険被保険者取得届」などを管轄のハローワークに提出します。書類が受理されると、雇用保険適用事業所として認定され発番されます。
事業主が行う雇用保険関係書類の提出時には、この適用事業所番号が必要となるため、適切に管理しておかなければなりません。
番号は、ハローワークより交付される「雇用保険適用事業所設置届 事業主控」(適用事業所台帳)で確認できます。
その他、資格取得手続きの際に交付された「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」でも適用事業所番号を確認することができます。
なお、厚生年金保険にも5桁の事業所番号がありますが、雇用保険のそれとは全く異なる番号ですので注意が必要です。
雇用保険番号の管理は「電子化」がおすすめ!
従業員の被保険者証を一括管理していると、「被保険者番号を確認するたびに被保険者証を探していると」いうケースも少なくないようです。
被保険者番号を電子化してデジタル管理すれば、被保険者証を自社で管理する必要もなくなります。また、被保険者証をわざわざ確認しなくても、届出書に自動で反映させやすくなり、手続き業務の短縮にもつながります。
行政も、多くの労務手続きで電子申請が可能になっており、現在は特定の法人に対して社会保険・労働保険の電子申請が義務化されています。昨今は業務のDX化も加速していることから、ゆくゆくは全ての企業に対して電子申請が義務化される可能性は高いでしょう。
そうした背景もあり、市場で提供されている労務管理系システムでは、すでに電子申請対応型が主流となっています。
例えば奉⾏Edge労務管理電⼦化クラウドの場合、雇用保険番号など合計1,000個を超える管理項目で雇用保険に関する情報を一元管理できます。電子申請にも対応しているので、申請に必要な情報を反映させた届出書をワンタッチでミスなく自動作成できます。必要な添付書類も簡単に収集・データ化でき、電子申請対応で窓口へ出向く手間や郵送の手間も削減でき、業務時間の大幅な短縮化を図れます。
これからの時代は、業務のデジタル化が標準となっていくことが予想されています。被保険者証を企業が管理することで被る紛失リスクをなくし、労務手続き業務を正確かつスピーディーに遂行するためにも、雇用保険番号を効率的に電子管理できる仕組みを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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