
IPO Forum~IPO審査最前線、審査する側・される側、双方の視点で語る~-IPO Forum 2025/2/21-
IPO(新規上場)とは、Initial Public Offeringの略で未上場企業が、証券取引所で株式を公開し、第三者がその株式を売買できるようにすることです。
一般的に、IPOには以下のメリットがあります。
このようなメリットが有りながらも以下のような先入観から自社には関係ないと、IPOを敬遠してしまう経営者の方が多いことです。
さらに2022年4月に予定されている東京証券取引所の市場再編で、上場基準が変更されることにより、一層IPOへのハードルが高く感じられているのではないでしょうか。
そこで、本稿では2020年に実際に新規上場した企業のデータをもとに、「どの程度の規模ならどの市場に上場可能か?」という点で確認をし、本当にIPOのハードルは高いのかについて解説します。
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上場する市場によって、業績水準をはじめとする要件が異なります。
自社の成長性や、マーケットの動向、資金調達の必要性、上場後の知名度といった、自社の現状と上場目的によって市場を決定する必要があります。また、IPOは最低3~5年間の準備期間を経て上場審査を受けることが望ましいため、3~5年後に自社がどの程度の規模まで成長するのかを見据えながら、目指す市場を決めることも市場選択のポイントです。
では、実際にどのくらいの業績があれば上場を実現することができるのでしょうか。東京証券取引所における本則市場(東証一部・東証二部)ならびに新興市場(ジャスダック・マザーズ)へ、2020年に上場した企業の業績を見ていきます。
※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績
東証一部に直接上場した企業は6社と、全上場企業93社のうち6.4%と割合としては多くありません。
その理由は東証一部への上場は、他市場で上場し、次のステップとして目指されることが多いからです。但し、今後に関しては、2022年4月以降、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」と変更される予定の東京証券取引所の市場再編に伴い、市場を変更する際に必要とされる基準も変更される予定です。
※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績
東証一部と比較して企業規模は小さいものの、マザーズやジャスダックといった新興市場よりは大きくなります。
※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績
売上高が40億円未満の企業が全体の半数以上を占めており、60億円未満の企業を加えた場合、全体の75%を超えます。
経常利益についても、70%を超える企業が3億円未満で上場をしています。
※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」(Edinetにて公開)を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績
マザーズへの上場の場合、売上高20億円未満の上場が過半数を占めます。経常利益についても、2億円未満(赤字で上場含む)で上場した企業が全体の6割を占めます。
マザーズでは、上場時の企業価値より、その後の成長性が特に問われます。上場時には、投資拡大期にあり経常利益を計上していない状況でも上場することが多々あります。典型的な例としては、ウェルスナビです(同社は赤字で上場)。
新規上場というと、ハードルが高いと感じることもあるかもしれませんが、市場によっては上場に必要な業績に到達することが可能です。
また、今回の記事では、東京証券取引所の「市場第一部」、「市場第二部」、「ジャスダック」、「マザーズ」のデータを紹介しましたが、地方市場といわれる札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所への上場や、東京証券取引所の「TOKYO PRO Market(以降、東京プロマーケット)」へ上場を目指す場合は、必要とされる数字も異なってきます。
特に東京プロマーケットに関しては、2020年も10社が上場を果たし、注目を集めています。
東京プロマーケットでは、「実質基準」と呼ばれる上場企業にふさわしい健全性を定める基準を満たしている限り、企業規模の大小関係なく、また創業間もない会社であっても上場を目指すことが可能です。また、通常、最低2年必要とされる監査法人による監査期間も1年で足りるとされています。さらに、3か月ごとの四半期決算の開示や内部統制報告書の開示も任意とされているため、上場時や上場後の負担が軽減されています。
このように様々な市場から会社の今後の成長性を踏まえ、適切な選択をすることが上場実現に近づく第一歩なのです。
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