IPOとCFO人材について
2019年10月4日
目次
1.昨今のIPOにおける傾向
「企業を興して成功したい」「更に成長させたい」というCEO(Chief Executive Officer、この文中においては経営者の意)にとってIPO(Initial Public Offering)というアルファベット3文字を知らないという方は少数派だと思います。しかし事業自体は成長していてもなかなかこのIPOまで辿り着けずに逡巡している企業が日本国中で散見されます。
アベノミクス以降株式市場は活況を取り戻し、日経平均株価はリーマンショック以前の2万円以上で安定し、この水準であれば本来ならば年間に150社以上のIPOが生まれて欲しいところですが、株式市場の回復基調にあっても2015年以降のIPOは90社前後と残念ながら低水準で安定しています。
巷間では、新規IPOに際し引き受ける監査法人が不足していることがこの低水準で推移していることの最大の原因として指摘されており、確かにIPO準備受嘱可能な監査法人においては人員不足の問題や委嘱する企業の不祥事が監査法人に与えるリスクが大きいことから、積極的に監査を受嘱していない傾向があることは否定できません。しかし監査法人も自分たちの成長を望んでいる民間のエンティティですので、リスクが大なり小なり全くないという企業はこの世に存在はしませんが、リスクが極限まで抑えられており、かつ適切にリスクアセスメントして防衛策を講じている企業は、監査法人にとってもクライアントとしたい存在であり、このような企業についてもどこの監査法人も受嘱しないというのは基本的にはないと考えることが適切です。
IPOのそもそもの意味は「初めての(Initial)自社株式の不特定多数の投資家への販売(Public Offering)」であり、企業が自社株式を証券取引所に上場するときにはこの‘IPO’を行うこととなるため、IPOという言葉自体が新規株式上場の意味として使われていますが、IPO以降は自社の株式が証券取引所という市場で流通することとなるため、市場で扱われるということは魚市場や青果市場と同様に、流通品である株式は粗悪品であってはいけません。従って成長著しくともIPOが出来ないという企業は、魚市場で例えると、高級魚であっても毒が適切に処理されていないトラフグと例えると良くご理解いただけると思いますが、市場で取り扱うにはリスクがある、そしてそれは昨今は監査法人も契約前の早い段階でIPOを希望する企業のリスクから鑑みた市場性適否を判断していますので、リスクを押さえていない企業はどの監査法人にも受嘱してもらえない可能性が高いということも言えます。
では真にIPOを通じて自社の事業にドライブを掛けていきたいCEOが押さえるべきポイントは何か?筆者は有能なCFOの登用・確保を通じたコーポレートガバナンスの確立を挙げたいと思います。
アベノミクス以降株式市場は活況を取り戻し、日経平均株価はリーマンショック以前の2万円以上で安定し、この水準であれば本来ならば年間に150社以上のIPOが生まれて欲しいところですが、株式市場の回復基調にあっても2015年以降のIPOは90社前後と残念ながら低水準で安定しています。
巷間では、新規IPOに際し引き受ける監査法人が不足していることがこの低水準で推移していることの最大の原因として指摘されており、確かにIPO準備受嘱可能な監査法人においては人員不足の問題や委嘱する企業の不祥事が監査法人に与えるリスクが大きいことから、積極的に監査を受嘱していない傾向があることは否定できません。しかし監査法人も自分たちの成長を望んでいる民間のエンティティですので、リスクが大なり小なり全くないという企業はこの世に存在はしませんが、リスクが極限まで抑えられており、かつ適切にリスクアセスメントして防衛策を講じている企業は、監査法人にとってもクライアントとしたい存在であり、このような企業についてもどこの監査法人も受嘱しないというのは基本的にはないと考えることが適切です。
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IPOのそもそもの意味は「初めての(Initial)自社株式の不特定多数の投資家への販売(Public Offering)」であり、企業が自社株式を証券取引所に上場するときにはこの‘IPO’を行うこととなるため、IPOという言葉自体が新規株式上場の意味として使われていますが、IPO以降は自社の株式が証券取引所という市場で流通することとなるため、市場で扱われるということは魚市場や青果市場と同様に、流通品である株式は粗悪品であってはいけません。従って成長著しくともIPOが出来ないという企業は、魚市場で例えると、高級魚であっても毒が適切に処理されていないトラフグと例えると良くご理解いただけると思いますが、市場で取り扱うにはリスクがある、そしてそれは昨今は監査法人も契約前の早い段階でIPOを希望する企業のリスクから鑑みた市場性適否を判断していますので、リスクを押さえていない企業はどの監査法人にも受嘱してもらえない可能性が高いということも言えます。
では真にIPOを通じて自社の事業にドライブを掛けていきたいCEOが押さえるべきポイントは何か?筆者は有能なCFOの登用・確保を通じたコーポレートガバナンスの確立を挙げたいと思います。
2.IPOにおけるCFOの重要性と定着しない理由
CFO(Chief Financial Officer)は直訳すると最高財務責任者となり、一般的には企業における財務戦略の立案、執行を行う責任者となります。
今後IPOを目指す企業においては、事業が成長基調で推移すると、それまでの経営環境とは大きく異なる環境が待ち受けています。しかし多くのCEOの皆様はCFOの役割を単なる経理部長、財務部長のようなポストとしての認識しかしていない傾向が見受けられます。シードステージならいざ知らず、成長ステージにおいてCFOは単なる経理プロフェッショナルやコスト管理だけに留まらず、会社経営やビジネスの成長に貢献するまでの経営戦略の作成をCEOとシェアしながら対外的に説明するためにペーパーに纏めるなど、経営陣の一人としての役割が求められることになります。これはすなわち経理や財務は当然抑える必要があり、その上でマーケティングに関する知識も必要になります。海外ではそのような背景から、CFOは単にファイナンスに関する知識・トラックレコードを持っているレベルではなく、公認会計士やMBAなどのタイトルを持った人材が多く登用されています。ただ残念ながら日本ではその必要性が多くのCEOでなかなか理解されていません。
企業にとってIPOはゴールではなく成長過程における通過点・イベントである、このことを筆者は支援企業に訴えていますが、企業規模を拡大していく中でCFOの必要性を感じていないCEOは、実は自分自身のCEOとしての役割が創業当時の何でも自分で取り纏めていた時期から全く抜け出せておらず、組織的経営を蔑ろにし、その結果として企業の成長に見合った経営管理体制を構築できずに頓挫するという傾向もみられます。
CFOの解説と同時に、IPOを目指す企業におけるCEOの在り方、役割について考えてみましょう。企業がシードステージにある時はCEOは「何でも屋」にならざるを得ませんが、企業が成長ステージに入るとこの時期は変革の時期にあると言え、この変革を推し進めることがリーダーたるCEOの一番の役割でなければなりません。このような中でCEOの役割は具体的には以下の役割が求められます。
私がこれまで支援してきたIPO準備において、IPO出来なかった企業で一番見受けられたのが、CEOが自分自身を変革できなかったというものでした。組織的経営に移行せざるを得ないにもかかわらず変革を拒否している傾向が見受けられるのです。CEOがそのようではIPOにおいてCFOが必要ということを外部から助言を受けて登用するに際しても経理や財務部門で経験がある人材を昇格させるレベルに留まり、先述のような経営陣の一人という扱いをさらに酷い場合はCFOの必要を感じつつもIPO準備における便利屋(自社のIPOが達成された暁にはCFOには辞めてもらう、とまで言ってのけたCEOまでおられました)としか考えてなく、その重要性が広く認識されていないのが現状です。
今後IPOを目指す企業においては、事業が成長基調で推移すると、それまでの経営環境とは大きく異なる環境が待ち受けています。しかし多くのCEOの皆様はCFOの役割を単なる経理部長、財務部長のようなポストとしての認識しかしていない傾向が見受けられます。シードステージならいざ知らず、成長ステージにおいてCFOは単なる経理プロフェッショナルやコスト管理だけに留まらず、会社経営やビジネスの成長に貢献するまでの経営戦略の作成をCEOとシェアしながら対外的に説明するためにペーパーに纏めるなど、経営陣の一人としての役割が求められることになります。これはすなわち経理や財務は当然抑える必要があり、その上でマーケティングに関する知識も必要になります。海外ではそのような背景から、CFOは単にファイナンスに関する知識・トラックレコードを持っているレベルではなく、公認会計士やMBAなどのタイトルを持った人材が多く登用されています。ただ残念ながら日本ではその必要性が多くのCEOでなかなか理解されていません。
企業にとってIPOはゴールではなく成長過程における通過点・イベントである、このことを筆者は支援企業に訴えていますが、企業規模を拡大していく中でCFOの必要性を感じていないCEOは、実は自分自身のCEOとしての役割が創業当時の何でも自分で取り纏めていた時期から全く抜け出せておらず、組織的経営を蔑ろにし、その結果として企業の成長に見合った経営管理体制を構築できずに頓挫するという傾向もみられます。
CFOの解説と同時に、IPOを目指す企業におけるCEOの在り方、役割について考えてみましょう。企業がシードステージにある時はCEOは「何でも屋」にならざるを得ませんが、企業が成長ステージに入るとこの時期は変革の時期にあると言え、この変革を推し進めることがリーダーたるCEOの一番の役割でなければなりません。このような中でCEOの役割は具体的には以下の役割が求められます。
(1)
企業規模(売上高、総資産、従業員数等)に見合ったコーポレートガバナンスの確立
企業を客船に例えると、一人で操縦できる小型客船からクルーを適材適所に配置すべき大型客船となります。すなわち組織的運営を行う必要があることからそれぞれの現場で責任者を配置してオペレーションの監視を任せることになります。
(2)
(1)に際しての有能なCFO(Chief Financial Officer)の登用・確保
大型客船を進めるに当たっては、積んでいる燃料や食料、天候状況など大事な情報をキャッチする必要があります。その際に必要な情報を取りまとめる参謀的人材が必要になります。
(3)
CEO自身の役割の再考
大型化し組織的に運営をしていかなければならなくなった客船では、船長たるCEOは操縦桿を握りながら進むべき航路を辿っていかなければなりません。それを忘れて甲板掃除に口を出していては、船は航路を外れ座礁してしまうことはご理解いただけると思います。私がこれまで支援してきたIPO準備において、IPO出来なかった企業で一番見受けられたのが、CEOが自分自身を変革できなかったというものでした。組織的経営に移行せざるを得ないにもかかわらず変革を拒否している傾向が見受けられるのです。CEOがそのようではIPOにおいてCFOが必要ということを外部から助言を受けて登用するに際しても経理や財務部門で経験がある人材を昇格させるレベルに留まり、先述のような経営陣の一人という扱いをさらに酷い場合はCFOの必要を感じつつもIPO準備における便利屋(自社のIPOが達成された暁にはCFOには辞めてもらう、とまで言ってのけたCEOまでおられました)としか考えてなく、その重要性が広く認識されていないのが現状です。
3.不足するCFO人材の解決手段
IPO準備を進めるうえで、鍵を握るCFOですが、CEOと二人三脚で企業の成長を永続的に支える人材として望ましいCFOは転職予備軍としては多くは存在せず、いたとしても争奪戦になります。必要な要件を満たすCFO登用の方法は以下、3つが一般的です。
まず「1. 公認会計士やIPO経験のあるCFOを招聘する」ですが、公認会計士や金融機関出身者をCFOとして採用し登用するケースが昨今増えてきてはいますが、残念ながらこれらの方々が出身監査法人や金融機関ではプロフェッショナルであったとしても、事業会社におけるCFOの素養を身に着けて来ていないという傾向もみられます。また過去にIPOを経験していたとしても、現在のIPOトレンドをキャッチアップしていないという方もおり、過去の実績がそのままスムーズなIPO準備に繋がるかは不透明です。
次に、「2.社内人材をCFOとして育成する」ですが、前述したように単なる経理部長、財務部長といったポストになってしまっているケースが多く、CEOとして経営戦略をまとめ、マーケティング、ファイナンスなど多岐にわたる知識を駆使して参謀としてIPOを実現するレベルに達することは相当の学習期間とコストが必要です。
最後に「3.IPOコンサルタントにアウトソースする」ですが、こちらはIPOトレンドをよく理解したIPOコンサルタントの協力を得ることが出来ますが、コンサルタントが外部である以上は日常的に企業活動をウォッチすることは困難であり、またコンサルタントのノウハウを社内に落とし込んで実行に移す必要があるため、やはり社内に常駐でのCFO相当の人材が必要となってきます。
以上のように、上記3つの解決策のいずれを以てしても一筋縄では解決せず、内部昇格・外部からの採用いずれにおいてもCFO人材の育成のための仕組み・インフラストラクチャーを構築する必要があります。
当社では特にCFO人材の育成を目的として令和2年よりスクール形式でのセミナーを開催致します。成長企業を経営陣として支えられるCFO人材が増えることは、冒頭に述べた、リスクが極限まで抑えられており、かつ適切にリスクアセスメントして防衛策を講じている企業、すなわちIPO準備を滞りなく進めていける企業が増えていくことに繋がり、成長ステージにおいて企業が正しい航路を通るための羅針盤という武器が増えます。成長のためのキーマンであるCFO人材の活用により、更に多くの成長企業がIPOを達成して頂きたいと心から願っております。
◆ CFO人材・管理部門人材育成セミナー
- 1. 公認会計士やIPO経験のあるCFOを招聘する
- 2. 社内人材をCFOとして育成する
- 3. IPOコンサルタントにアウトソースする
まず「1. 公認会計士やIPO経験のあるCFOを招聘する」ですが、公認会計士や金融機関出身者をCFOとして採用し登用するケースが昨今増えてきてはいますが、残念ながらこれらの方々が出身監査法人や金融機関ではプロフェッショナルであったとしても、事業会社におけるCFOの素養を身に着けて来ていないという傾向もみられます。また過去にIPOを経験していたとしても、現在のIPOトレンドをキャッチアップしていないという方もおり、過去の実績がそのままスムーズなIPO準備に繋がるかは不透明です。
次に、「2.社内人材をCFOとして育成する」ですが、前述したように単なる経理部長、財務部長といったポストになってしまっているケースが多く、CEOとして経営戦略をまとめ、マーケティング、ファイナンスなど多岐にわたる知識を駆使して参謀としてIPOを実現するレベルに達することは相当の学習期間とコストが必要です。
最後に「3.IPOコンサルタントにアウトソースする」ですが、こちらはIPOトレンドをよく理解したIPOコンサルタントの協力を得ることが出来ますが、コンサルタントが外部である以上は日常的に企業活動をウォッチすることは困難であり、またコンサルタントのノウハウを社内に落とし込んで実行に移す必要があるため、やはり社内に常駐でのCFO相当の人材が必要となってきます。
以上のように、上記3つの解決策のいずれを以てしても一筋縄では解決せず、内部昇格・外部からの採用いずれにおいてもCFO人材の育成のための仕組み・インフラストラクチャーを構築する必要があります。
当社では特にCFO人材の育成を目的として令和2年よりスクール形式でのセミナーを開催致します。成長企業を経営陣として支えられるCFO人材が増えることは、冒頭に述べた、リスクが極限まで抑えられており、かつ適切にリスクアセスメントして防衛策を講じている企業、すなわちIPO準備を滞りなく進めていける企業が増えていくことに繋がり、成長ステージにおいて企業が正しい航路を通るための羅針盤という武器が増えます。成長のためのキーマンであるCFO人材の活用により、更に多くの成長企業がIPOを達成して頂きたいと心から願っております。
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執筆
株式会社サンライトコンサルティング
代表取締役CEO、公認会計士・税理士
重見 亘彦氏
代表取締役CEO、公認会計士・税理士
重見 亘彦氏
昭和45年 福岡県出身
平成 4年 公認会計士第二次試験合格、監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)入所
平成5年 青山学院大学経営学部卒業
平成22年 重見公認会計士事務所開設
平成23年 ㈱ミズホメディー(現在東証二部)社外監査役就任(現任)
平成24年 九州大学大学院非常勤講師就任(現任)
平成29年 北九州市女性起業家支援ひなの会アドバイザー
令和1年 ㈱サンライトコンサルティング設立 代表取締役CEO就任(現任)
令和3年 北九州野球㈱監査役就任(現任)
その他IPO準備中の企業の社外役員、顧問、中小監査法人のパートナーを務める。
主な著書(共著) 会計が分かる事典(日本実業出版社)、7ステップで分かる株式上場マニュアル(中央経済社)
セミナー 名古屋・札幌・福岡各証券取引所のIPOセミナーを中心に講演多数
株式会社サンライトコンサルティング ホームページ
平成 4年 公認会計士第二次試験合格、監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)入所
平成5年 青山学院大学経営学部卒業
平成22年 重見公認会計士事務所開設
平成23年 ㈱ミズホメディー(現在東証二部)社外監査役就任(現任)
平成24年 九州大学大学院非常勤講師就任(現任)
平成29年 北九州市女性起業家支援ひなの会アドバイザー
令和1年 ㈱サンライトコンサルティング設立 代表取締役CEO就任(現任)
令和3年 北九州野球㈱監査役就任(現任)
その他IPO準備中の企業の社外役員、顧問、中小監査法人のパートナーを務める。
主な著書(共著) 会計が分かる事典(日本実業出版社)、7ステップで分かる株式上場マニュアル(中央経済社)
セミナー 名古屋・札幌・福岡各証券取引所のIPOセミナーを中心に講演多数
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