TOKYO PRO Market(東京プロマーケット) 2024年総括と今後の展望

 2024年におけるTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数は過去最多となる50社となり、グロース市場の新規上場企業数に追いつく勢いで成長していることがわかります。新規上場企業数の推移と分析、トレンド・トピックを、J-Adviserの船井総合研究所が解説。
2025年4月1日

1.はじめに

2024年におけるTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数は50社となり、年間の新規上場企業数が過去最多となりました。2024年のグロース市場への新規上場企業数が64社であり、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)がグロース市場の新規上場企業数に追いつく勢いで成長していることがわかります。
急激に成長するTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)市場と2024年の注目トピックなどを振り返ります。

2.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数の推移

2024年におけるTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数は過去最多の50社となりました。特に2022年以降の伸びが大きく、年間の新規上場企業数は、2021年の13社と比べて、2024年は約3.8倍の規模に成長しています。累計では2024年12月末時点で133社が上場しています。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数の推移
▲TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数の推移
※2024年12月時点における東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数が増加している要因として、たとえば以下が挙げられます。

  • ・TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の認知度向上
  • ・TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)から他市場へのステップアップ上場やファイナンス事例などの実績増加
  • ・J-Adviser数の増加
  • ・一般市場からTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への目標市場変更 など

当社、船井総合研究所はJ-AdviserとしてTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)を目指す企業を支援していますが、当社にも多くのお問い合わせをいただきます。業種・地域・業績規模問わず、お問い合わせは増えており、関心の高まりを実感しています。

3.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業分析

3-1.業績

2021〜2022年は、不動産業をはじめとして、比較的業績規模の大きい企業がTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に複数社上場しました。この2年間は、売上高の中央値が約25億、経常利益の中央値が約2億の水準となりました。2023年は新規上場企業数が増えたことで、業種・地域・業績規模の多様化が進みました。結果的に、売上高10億円未満の業績規模の小さい新規上場企業が増えたため、売上高の中央値が約14億、経常利益の中央値が約1.2億と、2021年・2022年よりも下がっています。2024年に関しては、新規上場企業数が50社まで増え、売上高の中央値は約22億と2023年よりも大幅に上昇、一方で経常利益の中央値は2020年ぶりに1億を下回っています。新規上場企業数の伸びが加速する今は、業績規模の傾向が読みにくい状況と言えます。

2020~2024年の上半期IPO企業数の推移
▲2020~2024年の上半期IPO企業数の推移
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

3-2.上場月

3月に8社(15%)、12月に7社(14%)が上場しており、3月と12月は他の月に比べて比較的上場企業数が多いと言えます。この傾向は一般市場も同様であり、理由は日本企業の決算月にあります。日本企業の決算は3月と12月に多く、一般市場においては、予算の着地が見えてから上場することが多いため、決算月あるいは、決算月を越えての期越え上場(決算後3か月程度で上場すること)が増えると言われています。
TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)市場においても、3月上場は、3月が決算月の企業が1社、12月~2月が決算月の期越え上場企業が4社あり、一般市場と近しい傾向であると言えないこともありません。ただTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の市場コンセプトからして、一般市場ほど予算達成への強いプレッシャーがあるとも言えず、現段階では一般市場と同じ理由で3月と12月上場が増えているとは断言できません。今後、市場がさらなる盛り上がりを見せ、一般市場のように予算達成へのプレッシャーが増す場合には、一般市場と同じく、決算月および期越え上場が増える可能性があるでしょう。

2024年上半期のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業の上場月
▲2024年上半期のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業の上場月
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

3-3.本社所在地

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)は、もともと全国に上場企業が点在しているという特徴がありました。しかし近年は東京都の企業が増加しており、2022年以降は毎年半数近くが東京都の企業です(2022年は47%、2023年も47%、2024年は44%(22社))。一般市場では73%(一般市場の新規上場企業数86社中63社)が東京都であるため、一般市場ほどではないものの、今後もTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)市場において東京都の企業が増える可能性は高いと言えます。

2024年上半期のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業の本社所在地
▲2024年上半期のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業の本社所在地
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

3-4.設立年数

設立年数11年以上の企業が、50社中39社の約8割を占めています。一般市場での設立年数11年以上の企業は約5割のため、一般市場よりも社歴の長い企業が多いことがわかります。

2024年上半期のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業の設立年数
▲2024年上半期のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業の設立年数
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

3-5.業種

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)においては、一般市場と同様にサービス業・情報通信業の割合が高く、併せて全体の4割を占めています。また、不動産業・建設業の割合が併せて約3割であり、一般市場に比べて割合が大きくなっています。もともとは、サービス業や情報通信業に偏らず、様々な業種が上場しているところがTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の特徴でしたが、ここ数年は一般市場の業種構成に近づいています。

2024年TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の業種別構成割合
▲2024年TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の業種別構成割合
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

3-6.監査法人

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の場合、一般市場と比較すると、監査を担当しているのは、ほとんどが中堅・中小監査法人です。
2024年で監査社数最多のコスモス監査法人は、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業133社中29社(約2割)を監査しており、2位の新月監査法人、ひかり監査法人(各6社)を大きく引き離しています。
2024年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業の監査法人の実績
▲2024年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業の監査法人の実績
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

3-7.J-Adviser

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への上場を目指す企業に対して、上場適格性の評価や上場準備のサポートを行うJ-Adviserは、2024年12月末時点で19社あります。2024年では三田証券・佐賀銀行・九州FG証券が新たにJ-Adviserに加わりました。
またJ-Adviserの増加だけでなく、J-Adviser資格を有し、かつ一般市場のIPO支援も可能なJ-Adviserも増えてきています(当社・船井総合研究所もその1社です)。TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)から一般市場へのステップアップまで、継続的なサポートが可能になることで、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への新規上場企業数の増加およびその先の企業成長にも寄与すると考えられます。

■J-Adviser一覧(日本取引所グループより)
https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/outline/02.html

2024年のJ-Adviserの実績
▲2024年のJ-Adviserの実績
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

4.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)のトレンド・トピック

4-1.グロース市場との比較

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業の急増により、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)と東証グロース市場の新規上場企業数の差が縮まってきています。

グロース市場とTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数の比較
▲グロース市場とTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数の比較
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

その理由としては、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の認知度向上、J-Adviserの増加などが挙げられます。また、一般市場においても、地方証券取引所を選択する企業が増えており、グロース市場一択の状況が変わろうとしていることが挙げられます。
また、東証で行われている「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」にて、グロース市場の上場企業において、上場後に高い成長を実現している企業が少数に留まっている現状に言及し、改善への対策が検討されています。グロース市場を目指す際に、成長性の実現をこれまで以上に厳しく問われることは明白であり、2025年3月時点では、高い成長をグロース企業に実現させる具体的な方策が決まっていないことを考えると、まずはTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に上場し、内部管理体制などをしっかり整備してから一般市場に臨むという選択肢も有効であると考えられます。

■グロース市場における今後の対応(東京証券取引所 上場部 2025年2月18日)
https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/um3qrc000000t58p.pdf

4-2.初の特定投資家向け売付け勧誘事例(BABY JOB株式会社)

2024年12月に上場したBABY JOB株式会社(293A)は、特定投資家向け売付け勧誘(特定投資家のみを相手に既存株主の株式を譲渡するスキーム)を実行しました。このファイナンスは、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)史上初めてです。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場時のファイナンス事例
▲TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場時のファイナンス事例
※2024年12月末時点で、東京証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

BABY JOB株式会社が初めて特定投資家向け売付け勧誘を実行できた最大の要因は、同社の事業が魅力的であり、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場によって、内部管理体制なども整備され、会社としてさらなる成長が出来ると期待した投資家がいたからでしょう。それに加えて、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)自体の認知度向上やステップアップ上場などの実績の増加で、VC等の投資家による市場への期待度や安心感が高まったこともあるのではないでしょうか。

4-3.ステップアップ上場

2024年12月末時点で、累計13社がTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)から一般市場へステップアップ上場を実現しています。
ステップアップ先は、13社のうち6社が東証市場、7社が地方証券取引所(地方証券取引所にステップアップ上場後、東証に上場した株式会社ニッソウと株式会社QLSホールディングスも含む)であり、上場を活用した成長戦略を描いたうえで、自社に適した市場を選択していることが見て取れます。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)から一般市場へのステップアップ企業
▲TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)から一般市場へのステップアップ企業
※2024年12月末時点で、各証券取引所のデータを集計し、株式会社船井総合研究所にて作成

また、株式会社QLSホールディングスが2回目のステップアップ上場を実現したことが、2024年のトピックとして挙げられます。同社は、2019年11月にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に上場、2023年6月に名証ネクスト市場に上場、さらに2024年12月に東証グロース市場に上場しました。TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場後に地方証券取引所(名証)と東証一般市場に上場した事例はニッソウ(2018年2月TPM上場)以来2社目です。

4-4.J-Adviser契約から1年未満の短期上場実現事例(BABY JOB株式会社)

BABY JOB株式会社は、2024年5月2日に当社・船井総合研究所とJ-Adviser契約を締結し、約7ヵ月後の2024年12月にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に上場しました。
TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)における上場適格性の調査確認は、通常1年と言われているものの、「申請会社の規模や成熟度に応じた指導及び判断を行う」ことが東証から期待されています(上場ガイドブックより)。具体的には、元々一般市場への上場準備を進めており、内部管理体制などが整備されている企業などが想定されています。同社においても、グロース市場への上場を目指して準備を進めていたことがあり、J-Adviserの当社・船井総合研究所としてもスムーズに上場適格性の調査確認を進めることができたのです。

5.まとめ

2024年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場は過去最高の50社となりました。この勢いはさらに増しており、2025年も上場企業数の増加が予想されます。
当社・船井総合研究所としても、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場を希望される企業様からのお問い合わせが増えており、市場の盛り上がりを感じています。一般市場と異なり、現状はJ-Adviserが足りない、という難民問題は起きていませんが、本コラムを通じて、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)という選択肢も視野に入れる場合は、早急に情報収集をされることをおすすめします。

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