2019年4月には「時間外労働の上限規制」をはじめとした働き方改革関連法の施行が予定されており、企業は今以上に長時間労働の是正が強く求められることになります。一方で、OBCが昨年1,400社の企業を対象に調査を行ったところ、約半数の企業はすでに長時間労働の是正に取り組んでいるものの、残業時間の削減に成功していたのはそのうちの4割であるという実態が明らかになっています。
※ 「業務担当者の皆様に聞く!企業と業務の実態調査分析レポート」2018年6月29日~8月3日、全回答数:1,453
そこで今回は、「働き方改革に取り組んでいるもののなかなか上手くいかない」と悩んでいる方向けに、成功する働き方改革の見つけ方をご紹介します。
目次
1.制度の導入だけではうまくいかないのが働き方改革
多くの企業で働き方改革の取り組みが進んでいるものの、成果が出ていないのはなぜなのでしょうか。考えられる原因は、「定時退社の徹底」や「ノー残業デー」など、労働時間を“制限”する制度や仕組みの導入にとどまってしまっているということです。たしかに、「定時退社の徹底」や「ノー残業デー」などは、従業員の残業に対する意識を変えるのに有効な取り組みであるといえます。しかしながら、これらの制度や仕組みは、働く時間に制限を設けるだけで業務自体を改善するわけではないので、結局は次の日に朝早く出社したり残業したりすることになるケースが多くあります。
確実に長時間労働を是正するためには、日常行っている業務の時間を削減することが不可欠です。「業務の時間を削減する」と聞くと、当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、意外と簡単に取り組めないのが現実です。なぜならば、業務改善にはプロセスの洗い出しなどの現状分析から改善計画の策定を行わなければならず、専門家やコンサルタントの力を借りなければ着手するのが難しいためです。では、働き方改革を成功させるには、コストをかけて外部の力に頼るしかないのでしょうか?答えは「いいえ」です。実は、どの企業でも実現できる業務時間の削減手法が存在します。それが「固定業務の時間削減」です。
2.業務時間の削減をするなら「固定業務」から!
従業員が行う業務は「固定業務」と「変動業務」で構成されます。「固定業務」とは、入力や集計、作成などの成果が固定的な業務のことです。一方、「変動業務」とは、提案や企画、製造といった、成果が変動する業務のことを指します。なぜ「固定業務の時間削減」であればどの企業でも実現可能かというと、定例的に行われる「固定業務」は手段や方法がパターン化されており、個別に現状分析をしなくても、時間がかかる原因や問題点の特定が可能なためです。さらに、「固定業務の時間削減」は、抜本的な制度改革や個人の意識改革を伴わないことから、働き方改革の取り組みとして実現性が高いのも特徴です。それだけでなく、「固定業務」の成果は決まっているため、時間削減に取り組んでも従来の成果を維持することができ、失敗することがありません。増えた時間を「変動業務」にあてれば、さらに生産性を向上することが可能です。
そこでOBCでは、56万社の導入事例から、77種類の「固定業務」について時間がかかる原因と問題点を特定し、時間削減手法をモデル化しました。77種類の取り組みモデルは、大きく4つに分類されます。次の章では、自社の現状やニーズといった着眼点から、自社に合った取り組みモデルの見つけ方を解説していきます。
3.自社の現状やニーズに合った着眼点から取り組みモデルを選んでみよう
77種類の取り組みモデルは、現在から未来まで、全体的から部分的までの業務を網羅しており、「部門単位」「業務単位」「リスク・法制度対策」「生産性向上」の4つの着眼点から選択することができます。働き方改革を成功させるには、それぞれの着眼点の特性やメリットを把握して、自社に合った取り組みモデルを見つけることが大切です。まずは、どの着眼点から取り組むべきかを検討しましょう。
■着眼点1:部門単位
部門単位で固定業務の時間削減に取り組むという着眼点です。部門ごとに区切られた固定業務はプロセスで構成されています。部門単位では、プロセスの改善によって固定業務の時間削減を行うことになるため、高い削減効果が見込め、会社全体で抜本的な業務改善が可能です。また、プロセスを標準化することにもつながるため、人に依存しない業務体制を構築することもできます。
部門単位の着眼点は以下のような企業にオススメです。
<こんな企業にオススメ>
- 特定の部門や会社全体で長時間労働の傾向がある
- 部門内で業務が属人化している
■着眼点2:業務単位
業務単位で固定業務の時間削減に取り組むという着眼点です。日常的に行われる固定業務は入力業務や出力業務が大半を占めており、手作業で行われている場合に時間がかかりやすくなります。業務単位では、手作業をなくすことで、固定業務の時間を削減します。また、担当者レベルで取り組むことができるため、すぐに実践して、短期間で削減効果を出すことができます。部分的な業務にフォーカスすることで、段階的に業務時間の削減に取り組めることもメリットです。
<こんな企業にオススメ>
- 特定の個人で業務時間が多い
- 紙やExcelなどの手段から早く脱却したい
■着眼点3:リスク・法制度対策
企業が経営を続けていく中で、安全配慮義務違反や残業削減による生産性低下のリスクを予防し、改正労働基準法をはじめとした法律によって定められる罰則・規制に対応できる体制が不可欠となります。しかしながら、リスク予防や法制度対策のために新たな固定業務が増えてしまえば、働き方改革を継続していくことは難しくなります。そこで、リスク・法制度対策の着眼点では、健康障害の兆候把握、残業時間の監視や有休取得の促進などのマネジメントを自動化することで、リスクの未然防止と法制度改正への対応を確実にし、将来にわたって時間削減を維持できるようにします。
<こんな企業にオススメ>
- 常に疲弊した状態で働いている従業員がおり、健康障害や生産性低下のおそれがある
- 2019年4月に施行される改正労働基準法への準備がまったく進められていない
■着眼点4:生産性向上
生産性向上の着眼点では、マネジメントに必要な現状把握・原因分析のためのデータ収集や報告資料の作成などにかかる固定業務時間を削減することで、時間をかけないマネジメント業務を実現します。マネジメント業務のスピードを上げることで、成果を出しやすい環境を整えられます。また、勘や経験に頼らなくても、誰でもマネジメント業務ができるようになることもこの着眼点の特徴です。
<こんな企業にオススメ>
- 時間がなくてマネジメント業務には手が伸ばせない
- 投資対効果を示さないと会社内で取り組みに対する理解を得られない
さいごに
これまで「固定業務の時間削減」に取り組むための4つの着眼点について紹介をしてきましたが、自社の状況にあった働き方改革の糸口は見つかりましたでしょうか?働き方改革の成功に近道はなく、目の前の業務時間を確実に削減することが重要です。まずは、自社に合った着眼点を見つけて、働き方改革成功の第一歩を踏み出してみてください。
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