競争力強化を狙う「攻めのDX」を推進している企業にとって、情報=データの共有は必要不可欠です。しかしその一方で、多くの企業がシステムやデータの“サイロ化”問題に直面しています。サイロ化は、データ活用やDX実現の障壁となる恐れがあり、大きな損失になる前に早急な対策が必要です。
今回は、サイロ化がもたらす問題やその解決策を、業務担当者の視点でわかりやすく解説します。
目次
- 「サイロ化」とは
- サイロ化によって起こる問題 = サイロ化発生の見極めポイント
- サイロ化解消のカギは「どう効率的にデータ統合できるか」にあり
- データ統合もできるERPシステムでマスター管理を効率的に!
「サイロ化」とは
サイロ化は、企業において部門やシステムが連携しておらず、情報が共有できていないことを指します。
サイロとは、家畜の飼料などを種類別に保管する塔状の建物のことで、内容物が混ざらないようにそれぞれ独立した構造をしています。その独特の構造から「構造や情報が分断された状態」を表す言葉として使われるようになりました。
例えば、各部署がそれぞれに顧客データを管理していると、他の部署でも同一の顧客情報が別のデータとして管理されていることがあります。このような、各部門で使用しているシステムで情報やデータを横断的に把握できない状況のことを、「サイロ化が起きている」と言います。
昨今は、様々な業務でクラウドサービスを利用している企業が増えていますが、サイロ化はオンプレシステム同士だけでなく、オンプレシステムとクラウドサービス、あるいはクラウドサービス同士でも起こります。これは、「データがその部門のみで管理するストレージに保存されている」「システムが連携できていない」などが原因となり、「他部門で管理しているデータを自部門のシステムに取り込めない」ことで露見します。
経済産業省のDXレポートでも、全社でデータを横断的に活用できない状態はDX推進の妨げになると指摘されています。業務のデジタル化・DX化推進が求められている現代において、DXが実現できない事態は、企業としての死活問題にも発展しかねません。そのため、システムのサイロ化が起こっていないかを見逃さず、発生を確認したらできるだけ早く解消するよう対策を講じるのが賢明です。
サイロ化によって起こる問題 = サイロ化発生の見極めポイント
データを部門内で活用するだけなら大きなトラブルは起こりませんが、各部門が共通で活用するデータの場合、共有されていないことで様々な問題が発生している可能性が高くなります。
これらの問題は、日常業務で個別に発生することが多いため、サイロ化が引き起こしている問題だと気づかないことも多くあります。例えば、次のような事象が発生している場合は、サイロ化が原因と考えてよいでしょう。
① 非効率な手作業が発生している
自部門で必要な情報を他部門から共有してもらう際、ExcelやPDF、CSVファイルなど書き出してもらい、自部門のシステムにデータを手作業でインポートしたり手入力したりすることがあります。この状態は、システムのサイロ化が原因と考えられます。
例えば、バックオフィス部門で次図のような手作業が発生している場合は、連携すべき部門間でシステムのサイロ化が起こっていると言えます。
必要な情報をその都度手作業で自部門のシステムにインポートしているのでは、手間や時間がかかり、入力ミスの危険性も高まります。また、収集後に情報が更新されると、手作業でブラッシュアップしなければなりません。このような本来の業務ではない作業が多くなるほど、従業員一人ひとりの労働生産性が低下することにもつながります。
② AIデータ分析ができない・意思決定が遅れる
経営や組織運営では、データ分析を活かすのが通例です。最近は、AIやIoTなど最新テクノロジーを使ったデータ分析も一般化してきていますが、このような分析を行うには統合・整理されたデータが必要になります。
データ統合がされていないと、人的操作でデータを収集・統合することになります。各部門で管理しているデータの形式が異なる場合、統合に時間がかかる上、ヒューマンエラーが起こる可能性があります。また、必要なデータが不足すると、充分に分析できないことで意思決定にも影響を及ぼします。
リアルタイムなデータ分析も難しくなるため、意思決定の遅れからビジネスチャンスを逃す恐れもあります。
③ 顧客満足度やサービスの質が低下している
近年は、カスタマー・エクスペリエンス(CX)やカスタマー・エンゲージメント(CE)の取り組みを重視する企業が増えています。しかし、このような取り組みにも、サイロ化の問題は潜んでいます。
例えば、「顧客ニーズを的確に把握できない」「各部門に届いた問い合わせやクレームなどの情報が共有されていない」などは、サイロ化が原因と言えるでしょう。
このような状況を放置すると、顧客の満足度やサービスの質が低下する恐れがあり、CX・CE推進の妨げとなってしまいます。
④データ管理にかかるコストが高い
部門ごとにデータを管理していると、そのデータ量に見合ったストレージが必要となります。通常、データ量が増えるとストレージにかかる費用も増えるため、全社的に見るとデータの重複管理によって管理コストが余分に発生している可能性があります。
サイロ化解消のカギは「どう効率的にデータ統合できるか」にあり
サイロ化を解消するには、データが適切に統合され、一元管理できるシステム環境を整備する必要があります。まずは、社内のサイロ化状況とそれによる問題を確認・把握し、データ統合を実現するシステムの見直しを図りましょう。
また、組織の「横の連携強化」も重要です。組織構造が縦割りの状態では、部門間の協力・連携・コミュニケーションが希薄になりやすく、横断的な情報共有ができません。業務システムの導入の際も、自部門の業務効率にのみ焦点を置いて設計されることが多く、これがサイロ化を起こす要因にもなります。データ統合にあたってシステムの見直しを図る際は、全社組織の横断的な情報共有も踏まえて検討しましょう。
とはいえ、全社のシステムを改修してデータ統合基盤を構築するのは、相当のコストと時間を要するため効率的とは言えません。また、実際のデータ統合は、システムに運用上の問題がないか確認した後で行われるため、通常のシステム改修よりも余裕を持って導入・運用を進めなければなりません。
さらに、データ統合作業は、各部門のデータを収集すればよいものではなく、次のようなステップで適切に進める必要があります。一般的には、作業そのものは外部の専門家に任せることが多いため、当然その費用も見積っておく必要があるでしょう。
■データ統合のためのステップ
- 統合する対象データを決定する。
- 対象データの加工・整形を行う。
- データのファイル形式や文字コードなどのフォーマットを統一する。
- 欠損値や異常値は一定のルールを定め補正する。
- 重複データについて、削除か名寄せによる関連付けを行うか判断する。
- 加工されたデータを集積する。
最近市場では、ETLツール※をはじめとしたデータ統合ソリューションも数多く提供されており、異なるデータソースからのデータを一貫性のある形式へと変換・統合できるようになっています。このようなデータ統合サービスを活用すれば、各部門のシステムに蓄積されたデータを用途に応じて変換して、幅広い部門で活用することが可能となります。
※ETLツールとは、社内外に散在するデータを活用しやすいように収集・加工できるツールのことで、サイロ化したデータベースを据え置きで、データの抽出(Extract)、変換(Transform)、格納(Load)などを行えます。
また、最近はERPシステムにも、社内の全マスター情報を統合管理するタイプが登場しています。
例えば奉行V ERPクラウドの場合、奉行シリーズはもちろんのこと、他社サービスのあらゆるマスターデータも奉行V ERPクラウドで統合管理することができます。各部門で使用しているシステムと、コードや名称などのマスター情報が統一されていなくても、統合マスターと同期でき、統合データとして管理・運用できます。
各部門で発生したデータは、形式を問わず奉行V ERPクラウドに自動で取り込めるため、各部門とバックオフィス部門のやりとりをシームレス化でき、バックオフィス部門が普段使いしているシステムでデータが自動変換されます。データ統合のための使い方をマスターする必要がなく、大容量のデータも一括処理して奉行V ERPクラウドに蓄積されるため、経営分析や連結業務などに自由に活用できるようになります。
また、各部門のシステムで取引先情報などのマスター情報が変更されると、統合マスターも自動更新されます。各部門のシステムでも利用できるようになるため、顧客情報や得意先情報、従業員といった情報の二重管理からも解放されます。
このように、各部門で使用しているシステムやクラウドサービスと自動連携できるため、全社的にシステムの見直しをかけなくても他部門と“つながる”環境を簡単に構築することができるのです。
※奉行V ERPクラウドのマスターマネジメントサービスは今後対応予定です。
データ統合もできるERPシステムでマスター管理を効率的に!
DX推進が欠かせない現代において、データの活用は企業競争力の生命線といっても過言ではありません。
サイロ化が解消され、データが統合化されることによって、様々な業務が円滑に進められるだけでなく、AIを活用した分析など、さらなる業務効率化や、新たなビジネスチャンスの機会を生み出すことも可能となります。
一方で、データ統合には専門知識や技術が必要であり、統合完了までに相当の費用や時間を要するため、戦略的に取り組まなければなりません。
奉行V ERPクラウドのようなSaaS型ERPなら、アプリケーションだけでなく、サーバー・OSなどのハードウェアも含めて業務に必要な環境が全て提供されるため、すぐに利用を開始することができます。プログラムのアップデートも気にする必要がなく、進化し続けるテクノロジーの活⽤やセキュリティ対策など、あらゆる面で最新の業務環境が整えられます。特に奉行V ERPクラウドの場合は、自動でマスター統合するため、サイロ化を気にすることなく業務に集中できるでしょう。
データ統合には様々な手法があり、どの方法がよいかは企業の特性によって変わりますが、いずれにせよ、統合基盤をどこに置くかをしっかりと見極めておくことが肝心です。変化の激しい時代にスピーディーに対応するためにも、ぜひ一度、自社のデータ管理についてベンダーに相談してみてはいかがでしょうか。
サイロ化でお悩みのご担当者さまへ
奉行V ERPクラウドは、あらゆるサービス・データと「つながる」ために、独自のマネジメントサービスを基盤で提供します。詳しくは、奉行V ERPクラウドご相談フォームからお問い合わせください。
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