一定期間の取引についてまとめて発行された請求書をもとに、指定日に入金する方法を「請求書払い」と言います。企業間取引の決済手段としては一般的な方法ですが、毎月の受領締日から支払日までの間、支払処理の業務に追われる担当者も多いことでしょう。インボイス制度が始まると、業務負担はさらに増大すると懸念されており、準備期間のうちに効率化を図っておきたいと考える企業も少なくないでしょう。
そこで今回は、請求書の支払処理業務を効率化する方法について、根本的な原因から探っていきます。
目次
- 請求書受領後の基本的な業務の流れ
- 効率化に向けた最大の課題は「繰り返される転記・確認作業」
- 支払処理業務の効率化ポイント①「入力作業の自動化」
- 支払処理業務の効率化ポイント②「業務プロセスの自動化」
- おわりに
請求書受領後の基本的な業務の流れ
請求書を受領した後は、次のような流れで処理を進めるのが一般的です。経理担当者が行う業務について、5つのフェーズに分けて確認していきましょう。
1.請求書を回収し記載内容を確認する(経理部承認)
請求書を受領した担当者から申請され、上長承認を受けた請求書が経理部門に届いたら、次の項目について確認します。請求書払いの場合、先に受領している納品書や会計システムに登録した買掛金などとも、整合性が取れているか確認する必要があります。
<確認する記載内容>
- 取引部門(請求書の宛先)
- 発行事業者名(取引先の名称)
- 発行日
- 取引年月日
- 取引内容と金額
- 消費税
- 支払期限
- 振込先(口座、手数料の取り扱いなど)
2.請求一覧・支払予定表を作成する
請求内容の確認が終わったら、請求情報をリスト化し支払日別に支払予定表を作成します。一覧にまとめることで、請求書の情報や契約内容、振込先情報、支払日を確認しやすくし、漏れなく支払が行えるようにしておきます。手作業で一覧にまとめる場合は、入力ミスが起こらないよう、複数名で慎重にチェックすることも必要です。
3.支払額を確定し振込作業(FBデータ作成)を行う
支払予定表にまとめられた取引先からの請求額と、自社で認識している支払額が一致していることを確認し、取引先と契約した支払サイトに応じて振込手続きを行います。
振込作業については、従来の「銀行に出向いて振込を行う」方法の他に、ファームバンキングやインターネットバンキングなどを使ってオンラインで振込をする方法もあります。ファームバンキングを利用する場合は、FBデータを作成し、銀行のシステムにアップロードして期日に間に合うよう支払を実行する必要があります。
※ファームバンキングについては、コラム「ファームバンキング(FB)とは?インターネットバンキングとの違いやメリット、導入時に押さえておきたいポイントを解説」も参照ください。
4.会計システムに仕訳を入力する(支払計上)
振込が完了したら、取引に関する情報を出金伝票にし、振込結果を仕訳します。手作業で入力する場合は、ミスが起こらないよう、複数名でチェックすることも必要になります。
また、既に登録済みの買掛金や未払い金と相殺されているかの確認も必要です。
5.請求書の原本を保管する
支払処理が完了した請求書を取りまとめ、法令で定められた期間(最低7年間)保管します。紙の書類の場合は、ファイリング作業や保管スペースの確保が必要になります。昨今は、電子データで受領する場合もあり、電子データの請求書は紙の書類と分けて、法令で定められた条件下で適正に保管する必要があります。
効率化に向けた最大の課題は「繰り返される転記・確認作業」
支払処理業務の流れを見ると、支払予定表の作成や仕訳入力など、各段階で情報をデータ化する作業が発生していることがわかります。また、転記作業の後には必ず確認作業も発生しており、結果として、支払処理業務は転記作業と確認作業の繰り返しになっています。
転記作業を人力で行っている場合、取引数の増加に伴って転記ミスや転記漏れなどのヒューマンエラーの危険性が高まります。ミスが起こると、取引先への未払などトラブルに発展する恐れもあるため、複数人でのチェック体制が必要になり、時間と手間がさらにかかることになります。
また、支払予定表からFBデータの作成まで、どの工程でも必要とされる情報はほぼ同じです。にもかかわらず、支払管理業務がシステム化されておらずExcel等で行っていると、入力の二度手間・三度手間が発生しています。紙の請求書であれば、手作業が発生することは致し方ないものの、電子データの請求書でも同様のプロセスで処理しているケースが多く見られます。
このような繰り返しの作業がなくなれば、業務時間を大幅に短縮することができます。そのためには、まず人力で行っている作業を「自動化」し、何度も同じ手作業を発生させないようにする仕組みが必要です。
支払処理業務の効率化ポイント①「入力作業の自動化」
まず検討したいのは、手間と時間がもっともかかっている「転記作業をなくす」ことです。人力で入力作業をしなくて済めば、作業にかかっていた時間を短縮することができます。自動作成されたデータの精度が高ければ、確認作業も効率的に行うことができます。
入力作業の自動化には、OCRやAI-OCRの活用がもっとも有効です。
OCRとは、主に紙の請求書をスキャンまたはアップロードし、請求書に記載された請求日・請求者・金額などの情報をデータ化する方法です。取引先ごとに異なるフォーマットでも必要な情報を高精度にデータ化することができます。AI-OCR は、AI(人工知能)技術を取り入れたOCRで、利用するごとにAIが学習するため読み取り精度が上がります。最近は、手書きにも対応するAI-OCRや、紙・電子データに関わらず必要な情報を簡単にデータ化できるAI-OCRも登場し、さらに進化が続いています。
市場でも、奉行Edge 受領請求書DXクラウド※のような読み取り精度の高いシステムが数多く提供されており、業務効率と品質の向上を目的に導入を検討する企業が増えています。
例えば奉⾏Edge 受領請求書DXクラウドの場合、紙の請求書も電子データで受領した請求書も、AI-OCRによって95%以上の精度で情報のデータ化が可能です。現場が提出した請求書内容を確認し、支払対象として確定させることで、支払いのための精算データを自動生成します。
このような読み取り精度の高いシステムがあれば、手作業で転記していた作業は、読み取った情報の確認と微細な修正のみとなります
支払処理業務の効率化ポイント②「業務プロセスの自動化」
入力作業を自動化しても、「何度も転記しないで済む」状態にならなければ、転記・確認作業はなくなりません。一度データ化した情報を一連の流れで活用し続け、業務プロセスを丸ごと自動化することも重要です。請求書の受領から支払処理まで業務全体をデジタル化できれば、1つの精算データですべての業務を完結することができます。
市場で提供されているサービスは、搭載されている機能や対応する業務範囲なども様々で、様々なタイプがあります。どのタイプも一長一短がありますが、1つのシステムでできるだけ多くの業務を自動化できれば、工程ごとに専用サービスを導入する必要もなく、一気通貫で処理業務を完結できるでしょう。
また、会計処理や債務管理といった支払処理後の業務まで自動化を考えるなら、現有の会計システムや債務管理システムなどの基幹システムとの連携も重要です。多くのサービスは、取り込んだ精算データをCSVファイルに出力できるため、会計システム等に取り込んで活用できます。しかし、CSVファイルの取り込みは手作業になるため、なるべく手間をかけずに現有システムに取り込めるほうがより効率的です。
例えば、奉⾏Edge 受領請求書DXクラウドの場合、AI-OCRによってデータ化された精算伝票をもとに、支払予定表や振込データを自動作成します。
紙の請求書も電子データで受領した請求書も、同じフローで運用でき、請求書を素早く確実に収集できます。FBデータなどの振込データも、ボタン1つで作成できるため、ファームバンキングシステムに連携するだけでよく、支払完了後は支払予定情報を消込むことで支払データを自動作成します。
支払い漏れなども自動検知して通知するため、自動化で懸念されやすい「未払発生リスク」にも対応できて安心です。
各部門の担当者に届いた請求書の回収から証憑保管まで、奉⾏Edge 受領請求書DXクラウドで完結できるため、業務プロセスは次のように6回の操作だけになります。
また、金融機関や会計システムともAPI連携・CSV連携ができるため、振込や仕訳入力にも支払データを活用することが可能です。勘定奉行クラウドとなら自動連携して支払データのインポートから仕訳まで自動化できるため、担当者は仕訳結果を確認するだけで済みます。また、勘定奉行クラウドと連携する場合は、請求書以外の証憑類も収集することができます。
さらに奉⾏Edge 受領請求書DXクラウドは、債務奉行クラウドのような債務処理システムとも連携できるため、債務ベースから請求書での精算プロセスまで統合でき、支払管理業務の一元化も可能になります。
※債務奉行クラウドもインボイス制度に対応しているため、マスターで取引先が適格請求書発行事業者かどうかを判定し、適正に処理できます。
おわりに
インボイス制度や電子帳簿保存法など、2023年の経理業務は「業務効率化」が急務な状態です。特に支払処理業務は、何一つ省略できる業務がなく、支払期限までに終わらせるという制約の中で正確性も問われる重要な業務でもあります。
日々の業務の流れに慣れてしまうと、どこに手間が発生しているか気付けないかもしれません。しかし、もし受領締め後支払サイトまでの間、大量の請求書の支払処理にかかりきりになっているようなら、支払処理業務の効率化を進めるチャンスです。奉⾏Edge 受領請求書DXクラウドのような、受領から証憑保管まで丸ごとデジタル運用できるシステムやサービスを上手く活用して、業務のやり方を見直してみませんか。
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