労働保険とは、労災保険と雇用保険の2種類の総称です。労働者を一人でも雇用している企業は、必ず労働保険に加入した「労働保険適用事業場」とならなければいけません。
この記事では、労働保険の種類や加入対象者となる労働者の判定方法のほか、労働保険料の申告・納付方法について解説します。
目次
労働保険とは労災保険と雇用保険の2種類の保険のこと
労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険の、2種類の保険の総称です。労働者を一人でも雇用している企業は、業種や事業の規模を問わず労働保険に加入し、労働保険適用事業場とならなければなりません。まずは、それぞれの保険の特徴を解説します。
労災保険(労働者災害補償保険)
労災保険(労働者災害補償保険)は、労働災害が起こった際に備える保険です。業務中の転倒や物の落下によるケガ・病気などのほか、通勤時に発生した事故も労災であり、労災保険の対象となります。
雇用保険
雇用保険は、企業に雇用されて働く労働者が、働けなくなったり失業したりしたときに備えるための保険です。一般に「失業保険」と呼ばれる基本手当のほか、スキルアップに利用できる教育訓練支援給付金や再就職した際の就業手当といった給付金が受け取れます。
労災保険の加入対象者と保険料
労災保険の対象となるのは、どんな労働者なのでしょうか。ここでは、労働保険のひとつである労災保険について、加入対象となる労働者と保険料を紹介します。
労災保険の加入対象者
労災保険は、企業に雇用されて働くすべての労働者が加入する保険です。企業は、パートやアルバイトを含めたすべての労働者を、労災保険に加入させなければなりません。ただし、労働者を雇用するたびに個別の手続きをする必要はないので、労務担当者は注意が必要です。
労災保険の保険料
労災保険の保険料は、全額を企業が負担します。
保険料率は業種によって細かく分類されており、最も低い「電気機械器具製造業」などの2.5/1,000から、最も高い「金属鉱業、非金属鉱業(石灰石鉱業又はドロマイト鉱業を除く。)又は石炭鉱業」の88/1,000まで、保険料率は大きく幅があるので注意が必要です。
保険料の計算は、企業が労働者に対して年間に支払った賃金総額(通勤手当などを含む)に保険料率を掛けて行います。労働者ごとに計算するわけではありません。
雇用保険の加入対象者と保険料
同じ労働保険でも、雇用保険は労災保険と加入対象者や保険料率が異なります。続いては、雇用保険の加入対象者と保険料について見ていきましょう。
雇用保険の加入対象者
雇用保険は、企業に雇用されている労働者のうち、下記の2つの条件を満たす人が加入します。
<雇用保険加入の条件>
・31日以上継続雇用の見込みがあること
・1週間あたりの所定労働時間が20時間以上であること
労働者の雇用期間が31日以上である場合はもちろん、雇用期間の定めがない場合や、雇用契約に更新規定があって31日未満での雇い止めが明示されていない場合でも、雇用保険の加入対象です。注意したいのは、労働者雇用のたびに雇用保険の個別手続きが必要なことで、労災保険とはその点が異なります。労務担当者は労働者の入社日の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出するようにしてください。
雇用保険の保険料
雇用保険の保険料は、企業と労働者がそれぞれの負担割合に応じた額を支払います。労働者負担分については、企業が月々の労働者の給与から徴収します。
保険料率は業種によって異なり、定期的に見直しがされています。2022年(令和4年)度の雇用保険料率は下記のとおりです。
雇用保険の保険料の計算も、企業が労働者に対して年間に支払った賃金総額に保険料率を掛けて行います。
■2022(令和4)年度の雇用保険料率
労働保険料の申告・納付方法
労働保険の保険料は、あらかじめ前年度の賃金総額をもとに計算した見込み額の申告と納付をしておいて、後から過不足の精算を行います。この過不足の精算は、翌年の見込み額の申告と納付と同時に行われるもので、「年度更新」といわれています。
なお、年度更新では、労災保険と雇用保険の労働者負担分と企業負担分を、まとめて申告・納付します。
年度更新を行う時期は、原則として毎年6月1日~7月10日です。この期間中に、所轄の労働局または労働基準監督署に「労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書」を提出します。
■様式第6号 労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(継続事業用)見本
労働保険料の計算はシステムで自動化しよう
労働保険料を手計算するのは手間がかかりますし、ミスやトラブルの元となります。最新の保険料率に合わせてくれるシステムがあれば、労災保険と雇用保険の計算が自動で計算できます。
「給与奉行クラウド」なら、労働保険年度更新の時間を大幅に削減でき、電子申請も可能です。労働保険料に関する事務手続きをミスなく簡単に行えますので、ぜひご活用ください。
■監修者
山本 喜一
特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。
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