2022年度のIT導入補助金は、企業間取引のデジタル化を促すため、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に向けた支援が手厚く拡充されています。バックオフィスのDXを進めるなら今年が最大のチャンスと言えるでしょう。
一方で、新設されたデジタル化基盤導入類型は、補助率・補助額が2段構えになっているなど、一見して理解するのは難しい構造になっています。
今回は、2022年度のIT導入補助金の拡充内容からデジタル化基盤導入類型の計算方法ついて、奉行クラウドシリーズを例に詳しく解説します。
目次
- 「企業間取引のデジタル化促進」が狙い!
2022年度IT導入補助金の5つのメリット - 「デジタル基盤導入類型」が対象とする業務課題とITツール要件
- 「通常枠」の業務課題と対象ITツール要件
- ちょっと複雑なデジタル化基盤導入類型の計算方法
- [奉行クラウドで試算してみた]
IT導入補助金を活用した際の自己負担額は? - バックオフィスの“丸ごとDX化”を進めるなら今!
IT導入補助金で賢く業務改革を進めよう!
「企業間取引のデジタル化促進」が狙い!
2022年度IT導入補助金の5つのメリット
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズを解決するためITツールを導入する際、その費用に充てることができる人気の補助金制度です。
補助金が適用されるITツールは何でもいいというわけではなく、事務局に登録されているIT導入支援事業者提供のITツールで、「自社の生産性向上に貢献できる」ことが条件です。そのため、類型ごとに業務課題や対象となるITツールの要件が設けられています。
2022年度に新しく追加されたデジタル化基盤導入類型は、企業間取引のデジタル化を一挙に推進することを目的としており、電子取引のデータ保存義務化に伴う電子帳簿保存法への対応や、2023年から始まるインボイス制度への対応などに活用できます。
対象となるITツールは限定されますが、補助率が最大3/4と通常枠より拡充されています。また、PC・タブレット等のハードウェア購入費や2年分のクラウド利用料、セットアップや導入指導サービスなども補助対象になっており、導入に必要な費用にまとめて活用することができます。さらに、デジタル化基盤導入類型は通常枠との併用も可能なため、バックオフィスのDXをまとめて実現できます。
IT導入補助金制度は、補助金交付が決定してから購入するためリスクがありません。不採択になっても次回以降に何度でも再申請できるのも魅力です。補助金は、通常なら実績報告後1~2ヵ月後に還付されます。つまり、採択後に導入・支払いが早ければ早いほど補助金の還付も早まることになります。
2022年度IT導入補助金の「お得」ポイント
ただし、対象企業は、次のような中小企業・小規模事業者に限られます。中小企業および小規模事業者であっても、「対象外」となるケースがあるため注意しておきましょう。
■対象外となる主な中小企業者・小規模事業者
- ① 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者・小規模事業者等
- ② 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者・小規模事業者等
- ③ 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者・小規模事業者等
- ④ 発行済株式の総数又は出資価格の総額を①~③に該当する中小企業者・小規模事業者等が所有している中小企業者・小規模事業者等
- ⑤ ①~③に該当する中小企業者・小規模事業者等の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業者・小規模事業者等
- ⑥ 確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額15億円を超える中小企業者・小規模事業者等
その他の対象外となる事業者については、こちらを参照ください。
※ 2022年度は、複数企業が連携してITツール等を導入する取り組みを支援する「複数社連携IT導入類型」も新設されています。詳しくは、コラム「[IT導入補助金2022]インボイス導入を見据え国が企業のDX推進を強力支援!2年分のクラウドサービス利用料が対象に」を参照ください。
「デジタル基盤導入類型」が対象とする業務課題とITツール要件
新設されたデジタル基盤導入類型が対象とする業務課題は、「企業間取引のデジタル化」です。具体的には、インボイス制度や改正電子帳簿保存法への対応や、経理DX推進による経理業務の効率化などの課題が挙げられます。
そのため、補助対象となるITツールは、会計・受発注・決済・EC機能のうち必ず1種類以上含んでいることが条件となっています。この条件を満たすソフトウェア製品・SaaS型のクラウドサービスであれば、関連するオプションや役務※を含む導入費用が補助対象になります。クラウドサービスの場合、最大2年分の利用料も補助対象になります。
※役務とは、導入コンサルティング、導入設定・マニュアル作成、導入研修・保守サポートなどの付帯サービスを指します。
ただし、会計・受発注・決済・EC機能搭載のソフトウェアであっても、単純計算やグラフ・表作成など単一機能しかないものや、すでに購入済みのソフトウェアに対する増台・アップデート費用、リビジョンアップ費用などは対象外となるので注意が必要です。 また、対象ソフトウェアと同時導入に限り、PCやタブレット、プリンター、スキャナー、POSレジなどのハードウェア購入費も対象になります。
「通常枠」の業務課題と対象ITツール要件
通常枠にはA類型・B類型の2種類があり、例年通り、次のようなプロセスで発生している業務課題を改善するITツールが補助対象となります。
業務課題には、業務の効率化・業務時間の削減や人材不足の補填などが挙げられ、具体的には次のような問題の解決に適用できます。
- 年末調整業務や給与の支払調書作成業務を効率化したい
- 勤務シフトが複雑で、シフト表の作成に時間がかかるのを何とかしたい
- 勤怠管理を改善して長時間労働を是正し、従業員の健康を守りたい
- 人事労務DXを導入して人材管理を徹底し、適材配置でビジネスモデルの変革につなげたい
- 在庫状況を随時確認できるようにして、すぐ契約・請求できる仕組みを作り、売上機会の損失を防ぎたい
A類型は、業務プロセスの6領域において1つ以上、B類型は業務プロセス・汎用プロセスの全領域で4つ以上に対応するソフトウェアを対象とします。この条件を満たすソフトウェア製品・SaaS型クラウドサービスであれば、関連するオプションや役務を含む導入費用が補助対象になります。ただし、通常枠でのクラウドサービスの利用料は、最大1年分が補助対象です。
B類型の要件を満たしていても、補助対象経費から算出した交付申請額(補助対象経費の1/2以内)が150万円を下回る場合は、B類型でなくA類型で申請することになります。また、自主的にA類型の補助額の範囲内(30万円以上150万円未満)で申請することも可能です。
なお、通常枠には「賃上げ目標」が設定されています。B類型は必須となっていますので、注意しましょう。
ちょっと複雑なデジタル化基盤導入類型の計算方法
「通常枠とデジタル化基盤導入類型のどちらで申請するのがよいか」は、導入するソフトウェアが1つの目安になります。
会計・受発注・決済・EC機能に該当するソフトウェアであれば、デジタル化基盤導入類型を、それ以外であれば通常枠(A類型・B類型)を考えます。会計・受発注・決済・EC機能のソフトウェアであっても通常枠で申請することは可能ですが、補助率が1/2以内になるので、よりお得なデジタル化基盤導入類型を選ぶのが得策でしょう。
デジタル化基盤導入類型は、該当するソフトウェアの機能数に応じて申請できる補助額が変わります。
1機能の場合は、対象経費のうち最大3/4が補助され、実質負担は1/4となります。ただし、上限が50万円となっているので、対象経費が上限を超える場合は、超過分は自己負担となります。
2機能以上ある場合は、少し計算が複雑になります。この場合の補助額は、次のような計算式で、1機能分に該当する最大50万円に1機能分の補助対象経費を超える費用(=約66.6万円)の最大2/3が追加されることになります。
2022年度は、デジタル化基盤導入類型と通常枠の両方に申請できるため、これを機にバックオフィス全体のデジタル化を一気に進めることができます。ただし、同じITツールを両方に適用することはできません。「どの類型が適用できるか」「自己負担額はいくらになるか」などは、IT導入支援事業者が事業課題などから解説してくれるので、しっかり話し合うといいでしょう。
[奉行クラウドで試算してみた]
IT導入補助金を活用した際の自己負担額は?
では、具体的にIT導入補助金を活用すれば自己負担額はどうなるか、奉行クラウドシリーズを例に計算してみましょう。
◎会計業務の課題に活用する場合
例えば「電子帳簿保存法対応に伴い会計業務全体を改善したい」など、会計業務の業務課題にはデジタル化基盤導入類型が適用できます。
デジタル化基盤導入類型は、会計・受発注・決済・EC機能搭載のソフトウェアが対象になります。奉行クラウド 経理 DX Suiteを導入することになった場合、機能要件のうち「会計」「受発注」を満たすことになるため、1機能分の補助額50万円に超過分にあたる補助額が上乗せできます。
対象経費には2年分のサービス利用料が含まれるので、通常であれば合計2,574,800円(税抜)ですが、デジタル化基盤導入類型を活用すれば、次のように自己負担額が実質約1/3で済むことになります。
◎販売管理業務の課題に活用する場合
販売管理業務でも、「受発注業務をデジタル化したい」などはデジタル化基盤導入類型が活用できます。
ただし、これまでの販売管理業務では、システムを導入していてもExcelで別管理している情報があるなど、情報がデータ化しているとは言い切れません。受発注業務をデジタル化したいなら、それ以降の業務も含めて丸ごとデジタル化することも検討しておくことが賢明です。
請求書の電子発行なども含め、販売管理業務を丸ごとデジタル化できる奉行クラウド 販売管理 DX Suiteで試算してみると、2年契約で合計2,602,200円(税抜)の導入経費となります。この場合、デジタル化基盤導入類型の機能要件は「受発注」 が該当することになるため、1機能分の最大50万円の補助金が活用でき、自己負担は2,102,200円(税抜)となります。
また、会計システムと連携させれば、販売管理システムの債権データをもとに会計処理までデジタル化することができます。この場合、補助要件となる「受発注」と「会計」の2機能を満たすことになり、実質負担額は約1/3まで抑えられます。例えば、奉行クラウド 販売管理 DX Suiteと勘定奉行クラウドをセットで導入した場合なら、自己負担額は約1/3の1,048,600円(税抜)となります。
このように、デジタル化基盤導入類型は機能要件次第で補助額が変わります。企業間取引に関する業務のデジタル化に取り組むなら、2機能以上で検討してIT導入補助金を活用するのがおすすめです。
◎人事労務業務の課題に活用する場合
人事労務業務の場合、「業務のペーパーレス化」や「勤怠管理の適正化・効率化」など様々な業務課題が考えられますが、IT導入補助金を活用する場合は通常枠で申請することになります。
例えば、従業員200人の企業が勤怠管理から給与計算、労務管理までワンストップでDX化を実現するため、奉行クラウドHR DX Suiteと奉行Edge勤怠管理クラウドを導入した場合はどうでしょうか。
通常枠では、クラウド利用料は最大1年分が対象経費となり、補助率は1/2以内です。奉行クラウドHR DX Suiteと奉行Edge勤怠管理クラウドは、セットで導入すると1年契約で合計3,150,000円(税抜)になります。つまり、IT導入補助金を活用すれば1,650,001円(税抜)の自己負担でよくなります。
バックオフィスの“丸ごとDX化”を進めるなら今!
IT導入補助金で賢く業務改革を進めよう!
今後は、どの企業にもインボイス制度や電子帳簿保存法への対応が必須となります。業務の変革を否応なく求められている中で、コスト面を理由に対応を拒むことは企業経営の成長の妨げにもなりかねません。
奉行クラウド 経理 DX Suiteを導入すれば、年平均924時間を費やしていた経理業務にかかる時間を88%削減でき、制度対応はもちろん、経理業務のフルデジタル化=経理DXを迅速に進めることが可能です。
●奉行クラウド 経理 DX Suiteによる効果
なんと言っても2022年度は、「バックオフィス業務を一気にDX化できる」という大きなメリットがあります。これだけ手厚い補助が次年度も続くかどうかは分かりません。ぜひこの機会に、バックオフィス業務のフルDX化を検討してみてはいかがでしょうか。
挑戦するなら、「今」!
バックオフィスからDX化プロジェクト
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