新型コロナウイルスの影響を受け、出社勤務から在宅勤務/テレワークへのシフトなど、世界中の企業が何らかの形で働き方の変更を余儀なくされています。
もちろん、全ての職種で在宅勤務/テレワークが導入できるものではありませんが、「したくてもできない」ことを理由に改善が遅れている業務もあります。「経理業務」もその1つです。
経理業務が在宅勤務/テレワークを行うには、従来の業務プロセスからの脱却がカギとなります。
長引くコロナ禍中でも、企業として生き抜くためには経理業務の改革が必要です。
今回は、新型コロナウイルスで露見した経理業務の課題から、「経理の在宅勤務/テレワーク推進」に向けた“業務改革”について考えていきましょう。
目次
紙やハンコの「アナログ業務」がコロナ禍最大の課題!
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、多くの企業で在宅勤務やテレワーク勤務が標準化されつつある一方で、経理部門においてはその対応が出遅れているようです。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言中の2020年春、OBCが奉行シリーズをご利用中の経理・総務担当者に対して行ったアンケート調査によると、60%以上がテレワークを実施できていない実態が明らかになりました。
また、在宅勤務/テレワークで業務を行う上での課題を尋ねたところ、「紙でやり取りする業務がある」(76.9%)、「ハンコを使う業務がある」(59.9%)「個人情報を取り扱う業務がある」(57.0%)に集中しており、「紙」と「ハンコ」が経理業務の在宅勤務/テレワークを妨げている要因であることが分かりました。
また、ある調査では、多くの企業が新型コロナウイルスの感染を懸念しながらも決算を延期せず、予定通りに株主総会も実施したという結果も出ています。つまり、「コロナ禍の自粛期間中においても、多くの企業で経理担当者が出社を余儀なくされていた」という実態が明らかになったのです。
これまでの経理業務では、取引先と注文書や請求書、納品書など、紙でのやりとりが通常です。承認などの社内手続きでもハンコが必要とされており、経理業務に「紙」と「ハンコ」はつきものでした。IT技術の進歩によって、経理部門でも単純な入力作業や一部の定型作業などが自動化できるようになりましたが、それでも昔ながらの商習慣も未だに根強く残っています。
経理部門は、企業経営の中核を担う部署でもあります。「紙」や「ハンコ」といった“アナログ業務”の存在は、在宅勤務/テレワークができないばかりか、経理部門の“進化”をも止めてしまいます。
長引くコロナ禍において、いかに“アナログ経理”から脱却するかが、これからの経理業務の最大の課題となるでしょう。
「経理業務のデジタル化」で「脱・アナログ経理」を実現しよう!
2020年は、新型コロナウイルスの影響で景気は後退し、極めて不透明な環境下にあります。経営不振に歯止めがきかない状況で、経営トップにすれば「何とか生産性は維持したい」と考えるのは当然でしょう。
一方で、企業には「社員の健康と安全を保つ義務」もあります。社員の健康を考えながら業務効率化を図るためにも、在宅勤務/テレワークでも生産性を落とさない仕組みは必要不可欠です。
アナログ経理から脱却するためには、最大の要因である「紙」「ハンコ」の商習慣を見直し、経理業務のデジタル化を早急に進める必要があります。 では、どのような経理業務がデジタル化できるのでしょうか。ここでは、「請求書関連業務」「経費精算業務」の2つを例にご紹介します。
《請求書関連業務のデジタル化策》
請求書関連業務には、請求書の発行と受領に関する2つの業務があります。
従来の請求書発行業務では、専用のフォームで作成された請求書を出力し、社印を押印した上で取引先に郵送しますが、請求書をPDFなどの電子データで取引先とやりとりする仕組みに切り替えるだけで、簡単に発行業務のデジタル化が実現します。
電子データで請求書を発行するには、取引先に対して事前に了承をいただいく必要はありますが、電子データであればメール等でやり取りできるため、紙の請求書を出力したり押印して郵送したりする手間を省くことができます。請求書の押印についても、法的効力があるわけではなく、信頼を担保するための形式上の仕組みであるだけですので押印がなくても成立します。ただし、取引先から求められることもあるので、その場合は、市場で提供されている電子印鑑ソリューションサービスなどを活用すれば問題ありません。
受領業務においても、取引先と合意さえできればメール等で受領することができるので、自宅でも支払いのための事務処理を進められます。
受領した請求書をPDFで受領した場合は、出社した際にまとめて出力しファイリングすれば問題ありません。電子データで保存したい場合は、電子帳簿保存法の適用を受ければそのままデータで保管することができ、保存場所の問題も解決します。令和2年10月1日以降には、電子データで受け取った請求書をデータのまま保存する場合の要件が緩和され、次の4つの方法のいずれかに沿っていれば認められることになっています。
- データの受領後遅滞なくタイムスタンプを付与
- 改ざん防止等のための事務処理規程を作成し運用
- ユーザー(受領者)が自由にデータを改変できないシステム(サービス)等を利用
- 発行者側でタイムスタンプを付与
参照:財務省「令和2年度税制改正」パンフレットより
ただし、このような電子データで請求書の発行・受領業務を行うには、自社で使用している販売管理システムを従業員の自宅など社外でも使えるように整備する必要があります。それに、使用するパソコンも社内から持ち出すとなれば、セキュリティ面の対策を講じなければなりません。
これらも、クラウド型の販売管理システムにするだけで、自宅からでも業務を行える環境が整い、セキュリティ面も強化することができるので、スムーズに在宅勤務/テレワークを実現することができます。
《経費精算業務のデジタル化策》
これまでの経費精算業務では、紙の領収書を受け取り、利用用途を確認しつつ手作業で仕訳入力をする・・・という業務が発生していました。この業務プロセスをデジタル化するには、経費で発生した領収書を電子データとして保存・手続きすることで実現します。
電子帳簿保存法の適用を受ければ、経費として発生した領収書も電子データの保存対象になるため、紙の領収書を処理する必要はありません。
電子帳簿保存法では「電子署名とタイムスタンプを付与」することで電子データ保存が認められているため、原紙の保管ファイリング作業もありません。また、2019年に要件が緩和され「受領者が概ね3営業日以内にタイムスタンプを付与」すれば、「2カ月と概ね7営業日」つまり約67日以内に入力すればよくなっています。これにより、コロナ禍で一時的に出社できない状況が続いたとしても、出社後に対応してもよいということになります。
会計システムも、 勘定奉行クラウドのような電子帳簿保存法に対応するクラウドサービスを用意すれば、在宅勤務/テレワークでも経理業務を滞りなく遂行することができます。インターネットにアクセスするだけでシステムにログインできるので、パソコン内にデータを保管する必要もなく、セキュリティ面でも安心です。
ただし、この場合、受領した従業員の電子署名とタイムスタンプの付与が必要になり、付与期限を守れなかった場合は、紙とデータの両方で保管しなければなりません。
そこで、営業職など経費精算の多い従業員に対しては、法人カードやプリペイドカードによる精算方法を採用するのもよいでしょう。
最近は、キャッシュレス決済した明細を、自動で会計システムに取り込むクラウドサービスも増えています。キャッシュレス決済とクラウド会計システムが自動連携できれば、紙の領収書の管理や入力の手間を削減できるため、在宅勤務/テレワークでも仕訳入力作業が行えます。
また、「令和2年度税制改正」による電子帳簿保存法の改正で、2020年10月1日から、ユーザーによるデータ改変ができないようクラウド会計システムなどを利用すれば、クレジットカード会社等が発行するデジタル明細が領収書として代用できることになりました。つまり、電子帳簿保存法の適用を受け、かつデータ改変ができないクラウド会計システムを利用していれば、法人カードやPayPayなどのQRコード決済をした場合でも「紙」の領収書なしで経費精算業務を進めることができるので、在宅勤務/テレワークが可能となります。
在宅勤務/テレワーク時代に適した「デジタル経理」環境を整えよう!
2020年、新型コロナウイルスをきっかけに、世界は大きく一変しました。緊急事態宣言以降、いわゆる「コロナ倒産」をする企業も次々と現れています。そんな中で企業として生き抜くには、単に不測の事態への対応というだけでなく、決算の早期化や業務の単純化による人材の有効活用など、強い経理財務部門を構築することが求められます。
また、行政手続きのオンライン化や2021年にはデジタル庁が創設されるなど、政府においてもデジタル活用が本格的に進められています。早ければ2021年度には年末調整や確定申告などで押印を廃止する動きもあります。
一方、バックオフィス業務を支える業務アプリケーションも、テクノロジーの進化によって、これまで不可能だったことができるようになってきています。こうした最新技術を取り入れることで、今後ますます業務上の「ハンコレス」が加速していくことも予想されます。
ただし、ツールを変えただけでは業務環境の最適化は実現しません。進化する環境に合わせて業務ルールも適したものに変えていく必要があります。クラウドサービスなど在宅勤務/テレワークでも活用できるシステムと、それに合わせて「紙」と「ハンコ」を必要とする業務を廃止し、「経理担当者が出社しなければ業務が進まない」という事態を減らしていくことが重要なのです。
これからのビジネスにとって、在宅勤務/テレワークは大きな潮流となるはずです。経理領域のデジタル化に向け、最適なツール選びと非効率なルールの見直しを、まずは手近な「紙」と「ハンコ」の習慣から改めてみませんか?
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