時季変更権 とは
OBC360°用語集
時季変更権とは、事業の正常な運営を妨げる事象が発生した場合、企業が従業員の年次有給休暇の取得時季を変更できる権利をいいます。
労働基準法では「使用者は年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」とあります。しかし、業務繁忙の時期に「多数の従業員が同じ日程で有給休暇の取得を申請した」や「その人でないとできない業務がある」場合、事業が正常に回らなくなってしまう状況が予想されます。そうした場合に、企業は時季変更権を行使し、従業員が申請した年次有給休暇を他の時期に変更できます。
ただし、企業には「あくまで従業員が有給取得をできるように配慮すること」が義務づけられているため、代わりの人員を確保したり、業務を別の日に移したりと、事業が問題なくまわる体制を整える努力が必要です。これらの配慮もなく、繁忙期や慢性的な人手不足などの事業者都合の理由だけでは「時季変更権」は行使できません。
時季変更権は、いわば「業務に支障が出る場合に企業が従業員に他の日に変更してもらえないかと交渉できる権利」とも言えます。
時季変更権は、行使できない場合もありますので注意が必要です。
■時季変更権が行使できないケース
- 1)有給休暇が時効で消滅する場合
- 2)退職・解雇予告日までの期間を上回る有給休暇を有し、時季変更することが不可能の場合、または、事業廃止により時季変更を行使すると消化期間がなくなってしまう場合
- 3)計画的付与により時季が指定されている場合
- 4)時季変更権行使により、産後休業・育児休業の期間と重なる場合
ただし、従業員が年休の時季指定ができなかったことに関して、企業の側に責められるべき事情があった場合には、時季変更届の行使が「権利の濫用」となり、その効果はなくなります。また、時季変更届を行使するか否かの判断のため、企業が従業員に対して取得理由を聞くことはできますが、それを理由に取得そのものを認めないことは許されません。