経理15名+αで12社もの月末決算に対応
――御社のご状況、経理体制についてご紹介ください。
Aさん:1500人規模のサービス業界の上場会社で、さまざまな規模感の子会社が多いのが特徴です。経理は15名で、会社数は12。会社ごとに担当を振り分ける形にしていまして、1人の担当者が1社の決算を担当するのが基本的な形ですね。
Bさん:さばかないといけない量が多い会社に関しては、月末決算時期に臨時で人を増やして対応することもあります。
――御社では翌月6営業日で月末決算を行われているそうですね。サービス業界の上場会社で、6営業日というのは早いのでしょうか。
Aさん:特段早いわけではないですよね。
Bさん:そうですね。割と普通ではないでしょうか。5営業日になってくると早いなと感じるかな、という感覚です。
6営業日で締めるまでの流れ
――ではここから、6営業日で締める流れについてご紹介いただこうと思います。いつからどんな作業に着手するのでしょうか。
Aさん:月末の預金残高の照合からですね。弊社の場合は月末最終日に合わせて取引をどんどん入力し、預金残高との照合を行っていくようにしています。
――これはよくある流れなのでしょうか。
Aさん:会社によりますが、あまりないかもしれません。基本的に銀行口座の入出金は15時まででして、その結果を見て翌月に作業をしていくのが普通の流れなのですが、弊社の場合はそれを前倒してやっていっているという感じですね。ふつう預金は月末には締めないものだと思います。
Bさん:銀行によっては16、17時の入出金を受け付ける場合もありますが、、、その場合、翌日にならないとわからないので、翌日の午前中に再度、預金残高を確認して預金残高を確定していきましょうというのが弊社のやり方ですね。
――やれるものを先にやっていることが、スピード感の秘訣でしょうか。
Bさん:そうなのかもしれません。
――2営業日以降にやらなければならない処理のうち、1営業日には何割ぐらい処理できているのでしょうか。
Aさん:2割ぐらいですね。数を見ると少なく思われるかもしれませんが、1、2割でも処理できているかどうかは大きな違いになります。
――次は何をしていくのでしょうか。
Aさん:2営業日目を従業員の立替経費の締切日としています。みんなが領収証を出してくれたものの処理を3、4営業日目までに進めていく感じです。
Bさん:3営業日目は従業員からの受取請求書の提出日となっています。いずれも従業員から出してもらわないといけないものですね。経費は従業員に催促するだけで済みますが、請求書に関しては先方からの送付自体が遅れていることも起こりえます。
そうした場合、見積もりや契約書に記載の金額を調べ、それを事前に登録してしまっているのが弊社の工夫の1つといえるでしょう。その後、請求書が送られてきたら金額に間違いがないかを確認しています。待たずにできるものはやってしまうことが、6営業日で締める秘訣です。
Aさん:締めたあと、取引を一旦入力してしまい、6営業日目には決算整理仕訳の処理を行っています。
――どういった処理を指すのでしょうか。
Aさん:会社によって違いがあるものになりますが、たとえば業績に連動した賞与とかですね。5営業日までに処理により算出された利益に応じて計算しなければならない取引などの処理を指しています。
また、10万円以上の物を購入した場合には固定資産となりますが、その固定資産の減価償却なども決算整理仕訳となります。
――こうした処理を早く進めるための計算シートがあるものなのでしょうか。
Aさん:あるところが多いと思います。弊社の場合は、例えば、5営業日までに入れた取引金額などを入力すると自動的に決算整理仕訳ができあがるような計算シートを多く作成しています。
Bさん:冒頭でもお話したように、それを基本1人の担当者が1社の決算を行っている形ですね。
――このあと残っているのが、法人税などの計算、残高チェック、報告資料の作成ですね。
Aさん:税金の計算も、基本的に税金計算前の利益まで出さないと計算できないものになります。最後の最後に何か漏れていたとなると、頭を抱えたくなりますね。
――「これが抜けてた!」ということもあるんですか?
Aさん:ありますね。弊社は上場企業のため、四半期に1度開示する義務があり、少なくともそのタイミングで本当に正確にできているかを再確認することになるんです。ミスなく進めているつもりでも、そのタイミングでとんでもないことが出てくることはゼロではなく、巻き戻って取引を入れることもあります。
――残高チェック、報告資料についてはいかがでしょうか。
Aさん:残高チェックも会社によって異なりますが、行われている会社が多いのではないかと思います。ただ、項目や方法は会社によって異なってくるものだと思いますね。チェックして問題がなければ、報告資料を作成します。この内容も会社によって異なります。弊社の場合は、粗くてもいいから早めに教えてほしいと言われるので、一旦粗々で速報として報告をし、8営業日に正式なものを送るようにしています。
「待たずに進められることを先に進める」がスピードを上げる秘訣
――一通り流れをご紹介いただきました。あらためて、御社のスピード感を実現している理由について、どうみられているのでしょうか。
Bさん:やり方としては比較的一般的だとは思いますが、受取請求書の処理を原本受け取りを待たずに進めるといった工夫は、スピード感に一役買っていると思います。前職では3営業日になっても全然来ていなくて進められないといったことがありましたので。
――粗々の報告資料を出すところについて、何か工夫はありますか?
Aさん:これはないかな……。
Bさん:会社によって出し方も粒度も異なりますし、そもそも担当部署が違うケースもあるんですよね。会社によっては、上の方が粗々のものをがんばってざっくり計算して出しているケースもあり、私の前職がまさにそのパターンでした。「売上とKPIがこれぐらい、経費のうち固定のものがこれぐらい、変動するものがこれぐらい」みたいな感じですね。
Aさん:前職から入ってきて、何か感じることはありますか?
Bさん:業種が全然違うのですが、前職は売上の締めにどうしても時間がかかり、どれだけ早くても4営業日を要していたんですよ。このスピードでは締まっていなかったなと思います。あとは経費精算に関して、きっちり出してくれる従業員が比較的多い会社だとも感じています。売上と経費をどこまで前倒しでできるかがスピード感の肝かなと思いますね。
――今は販売管理システムや経費精算システムも多くありますが、御社でも導入されているのでしょうか。
Aさん:入れていますね。以前は個別取引を一つずつ会計システムに入れていたんですが、大量の取引をCSVで一括で取り込めるようになったため、作業時間が減りました。
Bさん:小規模の会社だとシステムを入れていないところもあるかもしれませんが、入れたほうが断然業務効率をアップできると思います。データの横連携もできるので便利ですね。
Aさん:DX化は業務負担の軽減にも役立ちます。今後も積極的に取り入れ、経理の業務効率化を進めていきたいです。