

システムの活用で兼任ながらスムーズな処理を1人で実現! 10人規模の会社の経理に聞く「請求書業務」

少人数の会社の場合、経理担当が専任ではなく、他業務と兼任しているというケースもあるでしょう。経理業務だけに専念できない経理担当者が、毎月やり取りされる請求書の処理をスムーズに行うには、どうしたらいいのでしょうか。
今回は、10人規模の会社で兼任という形で一人で経理を担当されるCさんに、請求書業務の進め方について伺いました。
- 請求書発行システムによって業務負担を軽減しつつ、必要に応じた手作業で柔軟かつ確実に業務を遂行
- 受領請求書はデータ・紙ともに同じフォルダで一元管理。Excelを活用したダブルチェックで、組み戻しのない振込作業を
請求書発行システムによって業務負担を軽減しつつ、必要に応じた手作業で柔軟かつ確実に業務を遂行
――まずは御社について、簡単にご紹介いただけますか?
Cさん:弊社は社員数10人規模のWeb制作会社です。20年ぐらい前から経理を担当していますが、専任というわけではなく、兼任という形で、Web制作などの他の仕事もしながら1人で経理業務を行っています。
――まずは「発行請求書」について伺いたいと思います。発行している請求書の数と作成方法について教えてください。
Cさん:発行数は150から200枚位で、ボリュームが多いのは20日と月末の送付分、なかには5日、10日に送るものもあります。
作成方法は3パターンに分かれていまして、1つ目は請求書発行システムにより自動作成しているパターンです。メンテナンス業務や弊社開発システムの月額利用費など、毎月同じ金額をお支払いいただく既存顧客の方が対象で、事前設定しておくことで作成の手間を省いています。弊社が作成する請求書のうち、約8割がこちらのパターンに含まれます。
2つ目は請求書発行システムを使って都度手動作成するパターン。こちらは1つ目の案件以外が対象で、案件を担当する営業社員が見積書を作成後、請求書へとシステムを利用して変換する形で作成しています。こちらは全体の1割程度です。
3つ目はExcelで作成するパターンです。こちらは複雑な計算式が必要になる事業の請求書でして、請求書発行システムで上手く仕組み化することが現時点では難しいことから、昔ながらのExcel作成を続けています。
――発行請求書の内容にミスが起こることはありますか?
Cさん:1パターン目の自動発行しているものに関しては、毎月同じ内容となるため、ほぼミスが起こることはないかなと思います。
2パターン目の営業社員が作成するケースも、仕組み上ミスが起こりづらいですね。見積書をそのまま請求書に変換するだけで作成できますので。Web制作案件は基本料金があり、工数によって金額が変動しますが、工数部分は私では把握不可能なため、変換された請求書をそのまま発行するのが基本となっています。
おかしいなと思ったら営業社員に確認するようにしています。
――見積書を出したのち、工数が変わったために請求金額が変わるということはあるのでしょうか。
Cさん:イレギュラーですがなくはないですね。
――その場合、金額も変わってくることになると思うのですが、その把握はどうされていますか?
Cさん:追加の見積書を営業社員が作ることになっていて、私はその数字を信用して発行する形ですね。
――3パターン目のExcel作成するものに関してはいかがですか?
Cさん:メーター等外部計測したデータを転記して数字に反映する請求書になりますので、転記ミスがないか、メーターの目視間違いがないかどうかが一番の原因になりえます。
こちらは、前年同月の数字と比べて大きく差異がないかどうかを確認することで、ミスの発生を防いでいます。
――ここまでは請求書の作成について伺ってきました。続いて“送付方法”についてお聞きしたいと思います。どのように取引先へ請求書を送っていますか?
Cさん:PDF化した請求書を、私がメールに添付して送信しています。自動作成したものや営業が作成した請求書の内容を確認した後にメール送信を行っています。
ただ、イレギュラーで早めの送付を希望された場合や、「2回に分けて請求してほしい」という依頼が来たときは、一旦担当営業に戻して対応してもらっています。
基本的にはPDF化したものをメールでお送りしていますが、年に2、3件ほど郵送受領のみの得意先には郵送しています。
――20年近く前から経理をご担当されているということで、デジタル化による経理業務の変化を味わってこられたのではないでしょうか。
Cさん:そうですね。郵送が当たり前の時代と比べると、メールでやり取りできるようになり、業務はかなり楽になりました。
ただ、PDF送付に切り替えられたのは割と最近なんです。きっかけはコロナですね。社内ではそれ以前よりPDF送付に変えていこうという動きがあったのですが、お客様の半数が難色を示されたんです。
コロナ禍で出社頻度が下がったこと、郵送とメールとでは到着にかかる日数が大幅に異なること、メール送付だと郵便事故の様なリスクもない事、経理事務の効率化のお願い等をご説明の上ご理解頂き、今は大半のお客様がPDF送付に切り替わり、大きな問題もなくやり取りできています。
――取引先が関係する業務は自社の判断だけでデジタル化することが難しいですよね。コロナがきっかけとなりデジタル化が進み、結果として業務負担が軽減された会社さんは多いのではないかと思います。また、世の中の請求書発行システムには、PDF化したデータをそのまま自動送付する機能があるものも多く、この機能を使えばさらに負担を減らせるかと思います。Cさん:はメールに添付して送付されているというお話でしたが、あえて手作業で送付されている理由はありますか?
Cさん:弊社が使っているシステムにも、自動送付機能はあります。ただ、自動送付機能で送ると請求書1枚ごとにメール送信されてしまうので、5枚お送りする会社さんにメールが5通もいってしまうんですよね。それを避けるため、PDFをダウンロードしてお送りする方法で進めています。
あとは「このファイル名で送ってほしい、見積書・納品書・請求書を一つのPDFにまとめてほしい」など、お客様によってご要望があるため、それに答えるためにもPDF化して自分で送付しています。
――なるほど、完全に自動化してしまうと柔軟な対応が難しくなってしまうんですね。御社では100件以上ある発行請求書の大半が月末に集中しているというお話でしたが、兼任スタイルで大変ということはないのでしょうか。
Cさん:単純作業なのと、システムを使えるようになったこともあり、苦だとは思っていません。大体「この取引先は請求書と合わせて納品書を送る必要がある」など覚えているところもありますしね。
――すべてアナログだった時代を知っているからこそ「苦ではない」と思えるのかなとも感じます。長年の経験が業務効率の向上にもつながっているのでしょうね。送付後の入金確認はどのように行われているのでしょうか。
Cさん:現状、口座に入金されたタイミングで請求書と照合している程度です。現状の取引先の数的に、それで何とかなっているという感じですね。
他業務の手が空くことがあれば、売掛残確認を定期的にするようにしていますが、現状は決算時期に行っている状態です。
――入金遅れが生じた際のご対応は?
Cさん:私から直接ご連絡して確認するお客様と、担当営業から確認してもらうお客様とに分かれます。毎月同じ費用をご請求させていただいている既存の取引先に関しては、月々決まっていて分かりやすいものであるため、私から確認することが多いです。
一方で新規の案件は、先方がお忘れになっているのか弊社側に事情(納品遅れ等)があるのかが私では判断できない為、担当営業に対応してもらっています。
――社内の営業さんたちとのやり取りはどのようにされていらっしゃるのでしょうか。
Cさん:社内チャットですね。電話と違い、外出中や打ち合わせ中にも確認してもらうことが可能なので。対面よりテキストコミュニケーションのほうがメインです。私からお客様にメールで連絡する際は、CCに担当営業を入れていますし、特に管理面で困っていることはありません。
――売掛金に関するやり取りなど、込み入ったものはチャットでは難しくないのでしょうか。
Cさん:逆に請求書や入金の数字が見えたほうが差異は伝わりやすいので、画像に印をつけたものをチャットに添付して送るなど、工夫しています。電話みたいに「言った言わない」にならないですし、あとから確認するときも履歴が残るのでチャットでやり取りする方がやりやすいと感じています。
どうしてもチャットで伝わらないときは、オンラインミーティングを利用しています。
――確かにおっしゃる通りですね。仕訳についてはどのような流れで行われていらっしゃいますか?
Cさん:会計システムに請求書データが連携されてくるため、そこに仕入れ等を足して入力し、伝票を作成するといった感じで進めています。紙の請求書時代は、1枚1枚手打ちで進めていたので、売掛だけでも連携されるのはずいぶんと楽になりました。
――請求書単位で入金仕訳を計上されているということですね。御社の業種から、プロジェクト原価の管理が求められ、入金もプロジェクトごとに計上しておく必要があるのかと思ったのですが、そうしていない理由はあるのでしょうか?
Cさん:弊社は月次決算をガチガチにはやっておらず、年度決算のときに厳密にやる形を採っているため、合算してしまうと決算期に後追いするのが大変になってしまうんです。そのため、請求書単位に分けて入金仕訳を計上するようにしています。ただ、おっしゃるようにプロジェクト原価の管理も必要です。弊社では営業や経営会議のデータを別のツールに登録していまして、利益の把握はそちらで行っています。導入までは担当営業の頭の中だったので、これもツールを入れることで楽になった部分だといえますね。
――ツールを分けることで経理負担を減らしつつ、把握が必要なデータ管理も両立できているということなんですね。こういう工夫もあるんだなと感じました。
受領請求書はデータ・紙ともに同じフォルダで一元管理。Excelを活用したダブルチェックで、組み戻しのない振込作業を
――次は御社が受け取る側である「受領請求書」についてです。まずは全体的な業務の流れやスケジュール感についてご紹介いただけますか?
Cさん:メールと郵送の2パターンで、大体20~30件の請求書を受け取っています。メールのものも郵送のものも、すべて同じ場所にデータ保管するようにしており、そこで承認作業などを行っていくようにしています。
お取引先には毎月15日までに請求書をお送りいただくようお願いしていますが、21、22日ぐらいまでは受け付けていて、そこから振込データを作成して銀行に登録、25日に振込という流れです。24日でも間に合わないことはないのですが、システムトラブルがあると怖いので、できれば23日までには振込セットを完了するというスケジュールで動いています。
――郵送のものも同じ場所で保管するということは、そのための作業が必要になりますね。誰がどのようにして担当されているのでしょうか。
Cさん:弊社は私を含め社員はほぼテレワークなので、原本で受領請求書を受け取る場合は、常時出社している社員がその請求書をスキャンしてフォルダに放り込むという運用になっています。
――メールで送られてきたものについてはいかがでしょうか。
Cさん:基本的に営業に請求書が添付されたメールが届きますので、営業に受領した請求書をフォルダに保存してもらっています。
弊社は期末の買掛残確認を行いやすくするために、発行請求書システムの欄外にその請求書内で発生した仕入・外注の金額を記載し、その額で一旦会計システムにて買掛計上を行っています。
そのため、担当営業には受領請求書に発行請求書の番号を追記することをお願いしています。スキャンしたデータも含め、自身の担当案件については受領請求書と発行請求書の紐づけをしてもらい、仕入計上額との差異がないか、請求書受領後、支払に回し漏れがないかを確認できる状態にしています。
――確認作業を効率化するための一工夫を請求書保管時にされているんですね。フォルダに集約した後は承認作業を行われているとのことでしたが、承認はどのようにされているのでしょうか。
Cさん:実はフォルダは「承認待ちフォルダ」「承認済みフォルダ」の2つのフォルダに分けて管理しているんです。なので、スキャンしたデータやメールで受領した請求書データは、まず「承認待ちフォルダ」に保存されます。その後、15日ぐらいに代表が承認待ちフォルダ内をチェックし、承認済みフォルダに移動。私はそこからデータをチェックして、支払い業務に流れるという感じです。代表の予定と私の作業スケジュールとを見ながら「そろそろお願いします」とつつくこともあります。
――支払漏れや誤りが発生しないよう確認が必要かと思いますが、経理としてのデータのチェックはどのように行われているのでしょうか。
Cさん:チェックにはExcelを使っていまして、書き出して合計金額を出し、先月のデータとの差異が大きくないかどうかも確認しています。その後、振込画面で手入力して手続きをするといった流れです。
――Excelを作る際、何か工夫されていることはありますか?
Cさん:Excelには五十音順で並ぶようにして、毎月同じ行に同じ取引先のデータがくるようにしています。また、常に前月分データを当月の横に表示しておくことで「この会社からきていない」と気付きやすくなります。
――なるほど。発行請求書とは異なり、受領請求書は金額のミスに気付きにくいと言われることが多いですが、そこのチェックはどうされていますか?
Cさん:請求書をもとに仕入費や外注費を計上した際の金額の大きさが何となく頭に残っているため、「これ、計上がきていたのに請求書がフォルダに入ってないな?」と思ったら確認するようにしています。
また、承認待ちフォルダを見て、毎月固定で受け取っているのにフォルダに入っていないものがある場合は、担当営業に確認するようにしています。
――承認済みフォルダ内のものをExcelに書き出してチェックするとおっしゃられましたが、Excelにまとめられるのはなぜですか?
Cさん:集計を簡単に行うのとダブルチェックのためにしている感じですね。エクセルに転記しない場合も、最終振込合計額と受領請求書の合計額を電卓を叩いて集計しての確認作業が発生するので、電卓に数字をいれるかエクセルに数字をいれるかの違いだと思っています。また、個人の外注先が多いため、Excelにまとめる際には、源泉欄を設け、それぞれの振り込み額がわかるようにしています。一旦エクセルにまとめてしまえば、支払調書を発行する際にもデータを使えて便利です。
受領請求書PDFをExcelにまとめて、Excelの数値をコピペして振込額をバンキングシステムに登録、そのあとで再度請求書とバンキング登録データを確認し、間違いがなければ振込データを送信。組み戻しをしたくないので、入念にチェックしているんです。
時間があるのであれば買掛残高も細かく確認していければいいのでしょうが、現実はなかなか難しいですね。きちんとしなければならない年次決算などタイミングで細かく確認し、あとは気負いすぎずに進めています。
――月次はゆるく、年次決算でしっかりということですが、年次決算は大変ではないですか?
Cさん:かなり大変です(笑)。合わないほうが多いですからね。ただ、20年ほど続けているので、差異原因をある程度読めるようになったため、つぶすのは楽になりました。
売掛だと、単純な先方の払い漏れ、総計欄ではなく小計欄の金額で支払う消費税分の払い漏れ、請求書複数枚のうちの1枚のみ払い抜け等、が多いです。
買掛の場合、弊社担当が受領請求書を承認に回すのを忘れていて弊社の支払漏れパターン、先方が請求書発行の漏れ、弊社もそれに気づいていないパターン、買掛計上後に数字が変更になったのを担当が連携漏れ、が一番多い印象です。
こうした際の確認も、郵送ではなくメールでやり取りするようになったことから、担当者名の確認、画像を使っての該当箇所の提示がしやすくなったなと思います。
――参考になりました。このたびはありがとうございました!