健康保険は社会保険の1つで、被保険者とその被扶養者の業務外の病気、けが、出産、死亡の際に保険給付を行います。昭和2年に施行され日本で最も歴史が長く、現在も日本の医療保険の中心となっています。
健康保険の適用を受ける事業所を「適用事業所」といい、本社、工場、支店など事業所単位で適用されます。しかし、人事管理や給与計算を本社などで一括している場合、1つの事業所としての適用が可能です。
ほとんどの企業が「強制適用事業」に該当し、事業主や従業員の意思に関係なく健康保険の加入が義務づけられています。(「強制適用事業所」とは、国や地方公共団体または法人の事務所、または工業、運送業、金融保険業など法定16業種に属する事業で常時5人以上を雇う企業を指します)
ただし、法定16業種でも常時従業員が4人以下の個人経営や、人数を問わず農林水産・飲食・理美容・サービス・自由業の事業は事業主の任意となります。(任意適用事業所)
加入者は、適用事業所で働く75歳未満の全ての従業員が対象になります。「日々雇われる人(日雇い)」や「2ヶ月以内の期間を定めて雇用される人」「事業所の所在地が一定しない企業に雇用される人」については適用除外となりますが、所定の期間を超えて雇う場合はその日から保険に加入しなければなりません。
また、保険料は企業と被保険者となる従業員との折半で支払い、金額は被保険者の収入や年齢、在住する都道府県の一般保険料率を元に算出されます。
その他、従業員が病気やけがにより、高額の治療費を負担した場合「高額療養費制度」を本人が申請することで自己負担限度額を超えた金額の払い戻しができます。申請方法などに関する質問がきた場合は、健康保険証に記載されている「保険者名称」の問い合わせ先を紹介するとよいでしょう。
通常、保険料は年に1回、被保険者の算定基礎(定時決定)で改定を行いますが、それ以外でも改定されるタイミングがあります。
昇給や降給、基礎賃金の変更や給与形態の変更などにより、固定的賃金が変更され標準報酬月額から2等級以上の差が生じる場合、月額変更(随時改定)が必要になります。月額変更が必要になるケースは、資格手当や役職手当、家族手当、通勤手当などの諸手当も含みます。
特に、引っ越し、結婚などで家族が増える…といった、プライベートに変更が生じる従業員の給与額には注意しましょう。
産休・育休からの復帰で、固定的賃金は変わらず短時間勤務により給与が下がる場合、「産前産後休業終了時報酬月額変更届」もしくは「育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出が必要です。
育児休業、産前産後休業から復帰後3ヶ月間の給与の平均額に基づき、標準報酬月額が改定されるため、4ヶ月目から改定後の保険料を負担します。
保険料の改定が必要かどうかは、従業員が定められた保険料を納めるために欠かせないものです。該当しそうな従業員がいる場合は、給与計算の際に確認しておくと滞りなく作業が進められます。