労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた労働者のための法律です。
すべての労働者に適用され、この基準を守らない企業は罰則(罰金・懲役)もしくは労働基準監督署から監督・指導が入る場合があります。
労働基準法で定められている主な内容は、以下の通りです。
①労働契約における労働条件の明示
労働契約の締結の際には、企業は賃金や労働時間その他労働条件を明示しなければならない。法に定める基準に満たない契約は無効となり、法が優先される。また、明示された労働条件が事実に反する場合は、従業員は労働条件を即刻解除できる。
②労働時間
企業は従業員に対して原則1日8時間、1週間に40時間を超える労働をさせてはならない。
③休日・年次有給休暇
休日は「労働義務のない日」のこと。企業は従業員に対し、少なくとも毎週1日もしくは4週を通じて4日以上与えなければならない。
年次有給休暇は、6ヶ月間継続勤務して全労働日の8割以上出勤した従業員に対して10日間有給で与えられる。
④時間外労働・休日労働
臨時、緊急時など、やむを得ず法定労働時間を超えて時間外労働や法定休日に労働させる場合には、あらかじめ時間外・休日労働に関する労使協定(三六協定)を結ぶ必要がある。
⑤賃金の支払
労働の対価として、企業は従業員に給与、手当、賞与などを支払わなければならない。(名称は不問)
⑥解雇の予告
企業の一方的な都合により従業員を解雇する場合は、少なくとも30日前に解雇予告をしなければならない。できない場合は、予告手当として30日分の賃金を支払う。
法令の詳細な内容については、以下のサイトをご参照ください。
東京労働局「労働基準法のあらまし2018」
労働基準法は1947年に制定されて以降、時代によって変化していく労働環境に適応するため何度も改正を繰り返してきました。
現在も政府が掲げる「働き方改革」の影響を受け “労働者が健康的に効率良く働ける環境”を整えるために、2018年7月に以下のような労働基準法の一部改正が可決・成立しました。
このように、労働基準法は時代背景に合わせて変化し続けます。労務部門としては、今後も動向には注意しておきましょう。
2018年7月に成立した労働基準法に関係する改正内容は、以下の通りとなっています。
●時間外労働の条件規制の導入
時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的に特別な事情が発生した場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度することが設定されました。
●中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
月60時間を越える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置が平成35年4月1日より廃止されます。
●一定日数の年次有給休暇の確実な取得
企業は10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に、毎年5日分、時季を指定して取得させることが義務づけられます。(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はありません。)
●フレックスタイム制の見直し
フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1ヶ月から3ヶ月に延長されました。
●特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
職務の範囲が明確で、かつ一定の年収(少なくとも1,000万以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に「年間104日の休日を確実に取得させる」ことを義務化し、「インターバル措置」「在社時間の上限措置」「2週間連続の休日確保」「臨時の健康診断」など健康管理を行うことが定められました。(本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定は適用除外とする)
この改正案が実際に施行される2019年4月からは、労働条件、勤怠管理、就業規則などの面で影響を受ける可能性があります。例えば、長時間労働抑制策に関する法案が成立すると、残業時間や有給休暇の取得日数など、徹底した勤怠管理が不可欠になります。タイムカードやExcelなど勤怠管理を手作業で行っていると、業務に対する負担が増すばかりです。まだ勤怠管理システムを活用していないのであれば、今のうちに業務の「仕組み化」を図っておくことも必要でしょう。
法律に則った労働環境を整え、従業員がよりよい状態で働けるように、今後も法改正の動向はチェックしておきましょう。