押さえるべき時期を押さえ、臨機応変に対応せよ!上場会社の経理に聞く「請求書業務」

月末月初に行き交う請求書。取引先が多くなればなるほど、発行するものも受け取るものも増え、経理チェックが大変ですよね。

今回は、翌6営業日に月末決算を締めている会社の経理のおふたりに、請求書業務の秘訣について伺いました。

販売管理システムへの入力情報も活かし、スムーズな確認作業を遂行

――まずは御社のご状況、経理体制についてご紹介ください。

Aさん:1500人規模のサービス業界の上場会社で、さまざまな規模感の子会社が多いのが特徴です。経理は15名で、会社数は12。会社ごとに担当を振り分ける形にしていまして、1人1社担当するのが基本です。

――今回のテーマは「請求書」です。請求書には自社から発行するものと取引先から受け取るものとの2種類があるため、それぞれについて伺っていきたいと思います。まずは自社から発行する「発行請求書」についてです。こちらの締め日はいつになるのでしょうか。

Aさん:決算日の翌月初の2営業日目ですね。営業担当者は決算月の末日までに請求書を発行し、得意先に送るルールになっています。その発行請求書を翌月の2営業日以内に我々経理へ共有してもらう流れです。

――どのように発行をしていますか?

Aさん:電子で発行しています。その請求書は販売管理システムから出力し、PDFファイルで各営業担当者から得意先へメール添付で送信してもらっています。別の会社にいたころには紙の請求書を扱っていましたが、やはり電子のほうが楽だと感じます。

――発行請求書を締めていく作業で1番苦労するのはどこになりますか?

Aさん:内容チェックですかね。営業から発行請求書を経理側に2営業日目までにもらって、4営業日目までに内容チェックを行い、提出遅れや追加の修正などが発生する場合のバッファを1日設けて、最終的に5営業日以内にチェックを終えるという感じのフローなんですが、そのチェックが1番大変かなと思います。金額が違うなど、すべての項目をチェックしなければならないので。

――結構ミスがあるものなんですか?正誤チェックはどうされているのでしょうか?

Aさん:発行請求書に関してはほとんどミスがないですね。発行請求書は出さないと売上問題になることもあってか、割とスムーズに出していただけているのかなと思います。

Bさん:正誤チェックは確認すべきところが限られているのでそこをしっかりチェックします。販売管理システムに営業が金額を誤入力していたらどうしようもないですが、経理側でチェックするのは税率とか、消費税などでしょうか。

あと弊社の事業形態ならではのポイントとして、月々の支払額が契約内容に合っているかのチェックがあります。必要時にスポットで契約しているお客様と、数カ月単位、1年単位で契約をし、お支払いはサブスクのように月々でしていただくお客様と2通りのパターンがあるんですね。後者の場合、例えば年間1200万円で契約していれば、単月のお支払いは100万円となります。ここの金額が間違っている場合は経理側で気づけますので、経理のチェック項目となっている、という感じですね。

――もし届いていないものがあった場合、どう対処されているのでしょうか。

Bさん:自社で使っている販売管理システムがあるので、そこを見ます。営業が売上金額を登録しているので、届くべきものが届いていないのかを経理主導で確認できるようにしています。

四半期・年度末はきっちり。他の月は力を抜いて対応する臨機応変さが肝

――では、ここからは御社が受け取る請求書、「受領請求書」の話に移りたいと思います。こちらも提出期日は2営業日ですか?

Aさん:そうですね。発行請求書と同じく2営業日までに営業担当者から回収することになっています。営業担当者が作成して出す発行請求書とは異なり、受領請求書は取引先相手からもらわなければならないため、弊社の場合は回収を担う営業担当者たちが大変なのではないかと思います。

――「受領請求書」を処理する上でのどのような苦労がありますか?

Aさん:経理として大変なのは、発行請求書と比べると金額間違いが起きている可能性が高いことですね。販売管理システムへの誤入力もそうですし、途中で金額が変わった際、それが販売管理システム側に適宜登録されていなければ、請求書とシステムの金額を照らし合わせたところ、両者の額が違っていたということが起きてきます。そのため、発行請求書の売上チェックよりも受領請求書の金額チェックのほうが入念です。

Bさん:あとは受領請求書をもらっていないことがあとから判明するみたいな時が大変です。特に、毎月取引のある会社ではなく、単発でのお取引の場合、こちらでは予測のしようがないので、「まだですか?」と確認するのが難しいんですよね。

――回収後、2、3営業日でチェックしていくところは発行請求書と同じ流れでしょうか。その際、金額のほかに留意している点はありますか?

Aさん:流れはおっしゃる通り、発行請求書と同じです。現場がシステムに入力漏れしているかどうかのチェックはどうしても難しいのですが、こちらでできることとして、利益率のチェックを行っています。

利益率が前月は50%なのに今月が80%になっているなど、異常値がないかを案件ごとにチェックし、もし見つかれば営業担当者に確認するようにしていますね。なお、弊社は個社ごとに専属で経理担当者がついているので、エラーに気付きやすいという特徴があるんです。先ほど述べた受領請求書をもらっていないかもしれない、ということを予測立てるのにも役立ちます。

――それはテクニックといえそうですね。その他工夫されていることはありますか?

Bさん:先に処理すべき営業担当者をリスト化しておくという工夫をしています。営業担当者によって抱えている件数は異なり、どうしても件数が増えるほどミスが出る可能性が上がるんですよね。そのため、量が多い方の分を先に処理できるよう、リスト化しているんです。

――御社の回収スピードはスムーズなほうだと思いますか?

Aさん:おそらく一般的なんじゃないかなと思います。特別遅いと感じたことはないですね。

――もし、デッドラインまでに揃っていなかったり、漏れていたりした場合、どう対処しているのでしょうか。

Aさん:これは時期によって対処が異なりますね。弊社は上場会社ですから、決算を開示しなければならないタイミングがあります。そのため、四半期や年度末には、5営業日が1日ずれて6営業日になったとしても、何らかの形できちんと取り込むようにしています。逆にそれ以外の月は無理に追いかけずに翌月に回そうという判断を取ることが多いですね。

――臨機応変に対応されているんですね。

Aさん:弊社の場合はグループ会社が10社あり、1社1人と経理担当者が10人ぐらいいるんです。そのため、臨機応変さの感覚は担当者によって差異があるかもしれません。ギリギリまで抱え込んで何とかしている方もいるかもしれませんが、「ここぞ」というタイミング以外は割り切って力を抜くことで、要領よく進められるのかなと思います。

――ありがとうございました!